買取請求・解約請求の違いと投資信託換金手法の基本知識

買取請求・解約請求の違いと投資信託換金手法の基本知識

投資信託を売却する際の「買取請求」と「解約請求」の違いについて、不動産業従事者が知るべき税制上の違いや手続きの流れを詳しく解説します。どちらの方法を選ぶべきでしょうか?

買取請求と解約請求の基本的違い

買取請求・解約請求の違いと基本手続き
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解約請求による換金方法

販売会社を通じて信託財産の一部解約を請求し換金する直接的手法

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買取請求による換金方法

販売会社に受益証券の買取を請求し証券会社との売買で換金

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税制上の取扱い

2009年以降は個人投資家において両方法に税制上の違いなし

投資信託を売却する際には、「買取請求」と「解約請求」という2つの方法があります。多くの不動産業従事者の方が投資を行う中で、これらの違いを正確に理解することは重要な知識です。
解約請求とは、投資家が販売会社を通して信託契約の一部を解約し、信託財産の返還を請求することによって売付する方法です。この場合、投資家は販売会社を経由して投資信託委託会社に直接解約を請求し、ファンドの資産を直接取り崩して代金を受け取ります。
一方、買取請求とは、投資家が販売会社に投資信託の受益権の買取を請求することによって売付する方法です。これは投資家と販売会社の売買取引であり、投資家による証券会社への売却と言えます。買取った証券会社は通常、委託会社へ解約請求を行います。
現在、多くの証券会社では個人投資家の投資信託売却において「解約請求」のみを受け付けており、「買取請求」での売却を希望する場合は電話での手続きが必要な場合があります。

買取請求の具体的手続きと特徴

買取請求による換金は、投資家が保有している投資信託を販売会社(証券会社)へ譲渡する形式で行われます。この方法では、投資家と証券会社の間で直接的な売買取引が成立し、証券会社が投資信託を買い取ります。
買取請求の流れとしては、まず投資家が販売会社に対して受益証券の買取を請求します。その後、販売会社が投資信託を買い取り、通常は委託会社へ解約請求を行って資金を調達します。この仕組みにより、投資家は迅速に換金を行うことができます。
不動産業界で働く方々にとって重要なのは、買取請求が証券会社との直接取引であるという点です。これにより、市場の状況によっては解約請求よりも有利な条件で売却できる可能性があります。

 

ただし、現在多くのオンライン証券では買取請求を受け付けていないため、この方法を選択したい場合は事前に証券会社に確認する必要があります。SBI証券では2013年10月25日以降、個人顧客の株式投資信託売却については原則として解約請求のみを受け付けています。

解約請求の仕組みと実務上の注意点

解約請求は、証券会社等の販売会社を通じて、委託会社に信託財産の一部の解約を請求する方法です。この方式では、投資家は販売会社を経由して運用会社に対して信託財産の返還を直接請求することになります。
実際の手続きでは、投資家が販売会社に解約の意思を伝え、販売会社が投資信託委託会社に解約を請求します。その後、ファンドの資産が実際に取り崩されて投資家に代金が支払われます。このプロセスにより、投資家は保有する投資信託の持分に応じた金額を受け取ることができます。
解約請求の特徴として、信託財産を直接取り崩すため、ファンドの純資産総額が減少することが挙げられます。これは買取請求とは異なる点で、ファンド全体の運用に影響を与える可能性があります。

 

不動産投資と併せて投資信託を活用している方にとって、解約請求は最も一般的な換金方法となっています。りそな銀行や三井住友信託銀行など多くの金融機関では、解約請求の方法で投資信託の売却を行っています。
現在では、インターネットトレードにおいて原則「解約請求」での換金となっており、店頭、アプリ、オンラインバンキングなど様々なチャネルで手続きが可能です。

買取請求における税制上の取扱いと法人対応

2009年(平成21年)の税制改正により、個人投資家においては「解約請求」「買取請求」のどちらの換金方法を選択しても税制上の違いはなくなりました。現在は両方法とも上場株式等の譲渡所得に区分され、申告分離課税(税率20.315%:所得税15.315%、住民税5%)が適用されます。
個人投資家の場合、どちらの方法でも投資信託の換金で得た利益は譲渡所得として取り扱われ、株式等の譲渡損益や配当金との損益通算が可能です。特定口座の源泉徴収ありを選択している場合は、原則として確定申告が不要となります。
しかし、法人のお客様については税制上の取扱いが異なります。解約請求の場合、個別元本超過額について所得税(15.315%)が源泉徴収されます。一方、買取請求は上場株式等の譲渡所得(申告分離課税)と同様の取扱いとなります。
不動産業界で法人として投資を行っている場合、この税制上の違いは重要な検討要素となります。法人の場合は買取請求と解約請求で税務上の取扱いが異なるため、税理士や会計士と相談の上で最適な方法を選択することが重要です。

 

また、2013年1月1日から2037年12月31日まで、復興特別所得税として所得税額に2.1%が上乗せされることも考慮に入れる必要があります。

解約請求と買取請求の実践的選択基準

実際の投資信託売却において、どちらの方法を選択するかは複数の要因を考慮する必要があります。まず、利用する金融機関の対応状況が重要です。多くのオンライン証券では解約請求のみを受け付けており、買取請求を希望する場合はコールセンターでの手続きが必要になります。
換金のスピードという観点では、両方法に大きな差はありませんが、買取請求の場合は証券会社が直接買い取るため、市場の流動性が低い投資信託でも比較的スムーズに換金できる可能性があります。
手数料の観点では、両方法とも信託財産留保額などの費用は同様にかかりますが、証券会社によっては買取請求の方が若干手数料が高い場合もあります。事前に各金融機関の手数料体系を確認することが重要です。
不動産業従事者の方が投資信託を活用する際には、本業の資金繰りとの兼ね合いを考慮することも大切です。例えば、不動産取引の決済資金が急に必要になった場合、迅速に換金できる方法を選択しておくことが重要です。

 

ポートフォリオ管理の観点では、解約請求はファンドの純資産総額を減少させるため、大口の解約を行う場合はファンド全体のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。一方、買取請求では証券会社が買い取るため、ファンドの運用への直接的な影響は限定的です。
また、資産管理会社や信託銀行との関係も考慮すべき要素です。不動産信託などで既に関係のある金融機関がある場合、投資信託の換金方法についても相談しやすい環境が整っています。

 

買取請求制度の歴史的変遷と不動産業界への影響

投資信託の換金制度は、日本の金融市場の発展と共に進化してきました。特に2009年の税制改正は、個人投資家にとって大きな転換点となりました。この改正以前は、解約請求と買取請求で税制上の取扱いが異なっていたため、投資家は税務面を考慮して換金方法を選択する必要がありました。
投資信託協会の統計によると、税制改正後は個人投資家の大部分が解約請求を選択するようになりました。これは税制上の優遇がなくなったことと、オンライン取引の普及により解約請求がより手軽になったことが背景にあります。
不動産業界においても、この変化は投資戦略に影響を与えています。以前は税務上の理由から買取請求を選択していた不動産投資家も、現在では利便性を重視して解約請求を選ぶケースが増加しています。

 

REITと投資信託の組み合わせを行う不動産業従事者にとって、この制度変更は資産管理の簡素化につながっています。解約請求の一本化により、複雑な税務計算から解放され、より本業に集中できる環境が整いました。
また、金融機関の対応変化も注目すべき点です。多くの証券会社がオンライン取引において解約請求のみを受け付けるようになったことで、買取請求は特殊なケースでのみ利用される制度となっています。
この変化は、不動産業界のデジタル化とも呼応しています。物件情報のオンライン化や契約手続きの電子化が進む中で、投資信託の換金手続きも簡素化され、不動産業従事者の資産管理業務の効率化に貢献しています。

 

さらに、ESG投資やSDGs関連投資信託の普及により、不動産業界でも社会的責任投資への関心が高まっています。これらの新しい投資信託においても、従来と同様に解約請求と買取請求の選択肢が用意されており、投資家のニーズに応じた柔軟な対応が可能となっています。