家事事件手続法と民事訴訟法の準用について

家事事件手続法と民事訴訟法の準用について

家事事件手続法は民事訴訟法の規定を多くの場面で準用し、家事事件の手続を適正に進めています。具体的にどの条文がどのような場面で準用されるのでしょうか?

家事事件手続法と民事訴訟法の準用

家事事件手続法における民事訴訟法準用の概要
📋
準用の基本理念

家事事件手続法は民事訴訟法の規定を準用し、適正で効率的な手続を確保

⚖️
審判手続における準用

証拠調べや手続費用など、審判手続の重要な場面で民事訴訟法を準用

🤝
調停手続への適用

調停手続でも必要に応じて民事訴訟法の規定を準用し手続保障を強化

家事事件手続法における民事訴訟法準用の基本原則

家事事件手続法は、家庭裁判所が扱う家事事件において民事訴訟法の規定を準用することで、適正な手続を確保しています 。特に重要なのは、家事事件手続法第93条の規定で、「審判に対する即時抗告及びその抗告審に関する手続については、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法の規定を準用する」とされている点です 。
参考)https://www.moj.go.jp/content/000061508.pdf

 

準用とは、ある法律の規定をその性質に反しない限り他の場面に適用することを意味します 。家事事件の特性上、通常の民事訴訟とは異なる部分があるものの、手続の公正性や迅速性を確保するため、民事訴訟法の確立された規定を活用しています 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/shingisoku/

 

家事事件手続法では「裁判所は、家事事件の手続が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に家事事件の手続を追行しなければならない」と定められており、これは民事訴訟法第2条の信義誠実の原則と同様の理念に基づいています 。

家事審判における民事訴訟法の具体的準用規定

家事審判手続では、証拠調べに関して民事訴訟法の規定が広範囲に準用されています 。具体的には、民事訴訟法第180条、第181条、第183条及び第184条並びに第二編第四章第二節から第六節までの規定が準用され、文書提出命令や証人尋問などの証拠調べ手続が適用されます。
参考)https://www.moj.go.jp/content/000048133.pdf

 

特に注目すべきは、家事事件手続法第31条における手続費用に関する民事訴訟法の準用です 。民事訴訟法第69条から第74条までの規定が準用され、手続費用の負担や訴訟上の救助に関する規定が家事事件にも適用されます 。これにより、経済的困窮者に対する手続保障も確保されています。
参考)https://www.sn-hoki.co.jp/data/pickup_hourei/onct/KAJIJIKEN-HOU20220525-7.html

 

さらに、家事事件手続法第34条第4項では、民事訴訟法第94条から第97条までの規定が家事事件の手続の期日及び期間について準用されており、期日の指定や変更、期間の計算方法などが統一的に運用されています 。
参考)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/17720110525052.htm

 

家事調停手続における民事訴訟法適用の特色

家事調停手続においても、民事訴訟法の規定が準用される場面があります 。調停は当事者の合意を基礎とする自主的な紛争解決手続ですが、手続の適正性を確保するため、必要に応じて民事訴訟法の規定が活用されています 。
参考)https://www.moj.go.jp/content/000049361.pdf

 

特に、家事調停から審判手続に移行する場合(付調停や職権による移行)において、民事訴訟法の準用規定が重要な役割を果たします 。調停不成立の場合には自動的に審判手続に移行することがあり、この際の手続の連続性を確保するため、民事訴訟法の規定が準用されます 。
参考)https://www.choutei.jp/familyconciliation/flow/index.html

 

また、調停委員会の構成や運営についても、民事訴訟法の当事者主義的要素を取り入れつつ、家事事件特有の後見的配慮も併せて行われています 。これにより、当事者の手続保障を図りながらも、家庭内の複雑な関係性に配慮した解決が可能となっています。
参考)https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202504_04.pdf

 

家事事件手続法における手続保障と民事訴訟法準用の関係

家事事件手続法の制定により、従来の家事審判法では不十分だった当事者の手続保障が大幅に強化されました 。この手続保障の強化において、民事訴訟法の準用が重要な役割を果たしています。
参考)https://www.shinginza.com/db/01495.html

 

審判手続における当事者の地位が明確化され、記録の閲覧・謄写権、証拠調べ申立て権、事実の調査の通知などが規定されました 。これらの権利行使に関する具体的手続については、民事訴訟法の関連規定が準用されることで、実効性のある保障が実現されています。
特に、民事訴訟法第223条第1項(同法第231条において準用する場合を含む)の規定による文書提出命令については、家事事件においても準用されており、当事者の証拠収集権が保障されています 。これにより、家事事件においても適正な事実認定が可能となっています。
参考)https://rikon-isyaryou.net/words/kazisinpan/

 

家事事件手続法における独自の民事訴訟法準用制限

家事事件手続法では、民事訴訟法を準用する際に、家事事件の特殊性を考慮した制限も設けられています 。例えば、家事事件は原則として非公開で行われるため(家事事件手続法第33条)、民事訴訟法の公開主義に関する規定は適用されません。
また、家事事件では裁判所の後見的役割が重視されるため、当事者の処分権主義を制限する場面があります 。調停手続から審判手続への移行や、職権による事実の調査など、民事訴訟では見られない裁判所の積極的関与が認められています 。
参考)https://nagaselaw.com/%E5%AE%B6%E4%BA%8B%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%81%AE%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%AE%E6%B5%81%E3%82%8C%E3%81%A8%E5%88%86%E9%A1%9E/

 

電話会議やテレビ会議システムの利用についても、家事事件手続法では特別な配慮がなされており、当事者のプライバシー保護と利便性の向上を図る独自の規定が設けられています 。これらの規定により、民事訴訟法の準用を基本としながらも、家事事件の特性に応じた柔軟な運用が可能となっています。