

2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、確定拠出年金制度に大きな変革がもたらされました 。この法改正により、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢が70歳未満まで延長され、企業型DCの拠出限度額も大幅に引き上げられることになります 。改正内容は段階的に施行され、特に注目すべきは企業型DCとiDeCoの制度統合により、個人の老後資産形成における選択肢が大幅に拡大される点です 。
参考)https://dc.rakuten-sec.co.jp/about/revised/202505/
確定拠出年金法改正により最も注目される変更点の一つが、iDeCoの加入可能年齢の拡大です 。これまでのiDeCoは原則65歳未満までしか掛金を拠出できませんでしたが、改正後は70歳未満まで加入できるようになります 。施行日は公布から3年以内、つまり2028年頃までには適用開始となる見込みです 。
参考)https://moneiro.jp/media/article/ideco-2025
この変更により、定年延長や継続雇用制度を活用する高年齢労働者も、より長期間にわたって老後資金の積立を継続できるようになります 。人生100年時代を見据え、働き方やライフスタイルが多様化する中で、フリーランスや定年延長後に働く人々もiDeCoを活用しやすくなるよう制度設計が見直されています 。
参考)https://article.ejinzai.jp/column/pension-reform-2025/
確定拠出年金の拠出限度額については、企業型DCとiDeCo双方において大幅な引き上げが実施されます 。企業型DCの拠出限度額は現行の月額5.5万円から6.2万円に引き上げられ、同時にマッチング拠出の制限も撤廃されます 。
参考)https://kumitateru.jp/media/topic/dc/R250107001
iDeCoについても、第1号被保険者(フリーランスなど)は月額6.8万円から7.5万円に、第2号被保険者(会社員)は最大月額6.2万円まで拠出できるようになります 。特に企業年金に加入している会社員の場合、現在の月額2万円から大幅に拡充され、企業型DCとiDeCoの合計で月額6.2万円まで拠出可能となります 。
参考)https://www.aeonbank.co.jp/column/ideco/seido/kaisei/
確定拠出年金法改正では、企業年金の運用状況の「見える化」についても重要な変更が盛り込まれています 。この改正は公布から5年以内(2030年頃まで)に施行される予定で、DBの事業報告書・決算報告書及び企業型DCの事業主報告書・運営管理機関業務報告書に必要な項目を追加し、厚生労働省が情報を集約して一般に公開することになります 。
現在は加入者本人への情報通知や企業から厚生労働省への報告義務はあるものの、その情報は一般には公開されていません 。今後は情報を公開することで、運営する企業や加入者が公正な比較を行い、加入者の最善の利益を追求した制度運営を行えるようになることが期待されます 。また、運営管理機関ごとの運用商品一覧(ユニバース)の公表について、信託報酬や実績等の主な項目についてホームページ上で比較できるようにするなど改善が図られます 。
確定拠出年金法改正による企業型DCの制度変更で特に注目すべきは、マッチング拠出の制限撤廃です 。現在の企業型DCにおけるマッチング拠出(加入者掛金)は、「企業年金における掛金拠出の主体は企業であるべき」という考え方のもと、事業主掛金を超えてはならないという制限が設けられています 。
参考)https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2025/08/pension-law-amendment-2025.html
改正により、この制限が撤廃され、合算して拠出限度額の範囲内であれば事業主掛金を超えて加入者掛金を拠出できるようになります 。事業主掛金が少ない加入者ほど多くの掛金を自ら上乗せできるということで、個人のニーズに応じた柔軟な積立が可能になります 。この改正により、いわゆる選択制DCの制度設計にも大きな影響を及ぼし、実質的な本人拠出による老後資金準備の手段を提供しながら老齢厚生年金の減少を招くという矛盾を抱えた選択制DCの意義が改めて問われることになります 。
確定拠出年金法改正2025年の内容は、不動産業界で働く従業員の老後資産形成にも大きな影響を与えます 。特に宅建業者においては、営業職や事務職を問わず、従来よりも充実した退職給付制度の検討が可能になります 。
企業型DCの拠出限度額引き上げにより、退職金水準の高い不動産会社では他制度から企業型DCへの移行を進めやすくなります 。これまでは退職金制度の全部あるいは多くの部分を企業型DCに移行したくても掛金を拠出限度額の枠に収めることができなかったのが、この枠が拡大するためです 。また、不動産業界特有の転職の多さを考慮すると、転職に関わらず同一の口座で加入・運用を継続できるiDeCoの重要性がさらに高まると予想されます 。