
換気扇の性能を正しく理解するため、まず「開放風量」と「有効換気量」の違いを明確にしましょう。
開放風量は、換気扇本体が無抵抗状態(何も接続されていない状態)で発揮する最大風量です。これに対し有効換気量は、実際の建築物に設置された状態で、ダクトやパイプ、屋外フードなどの抵抗(圧力損失)を加味した実際の換気風量を指します。
建築基準法などの法令計算では、この「有効換気量」が計算のベースとなることが重要なポイントです。
🔍 実際の設置状況による差の例
建築設計や施工において、単純に開放風量だけを参考にすると、実際の換気性能が不足する可能性があるため、必ず有効換気量での検証が必要です。
建築基準法に基づく有効換気量の計算には、燃焼器具を設置する場合の厨房換気に関する計算式が定められています。
基本計算式
必要換気量(V)= 定数(N)× 理論廃ガス量(K)× 発熱量(Q)
📋 定数(N)の設定値
条件 | Nの値 |
---|---|
フードなし または 器具とフードの距離1m以上 | 40 |
器具とフードの距離1m以下 | 30 |
🔥 燃料別理論廃ガス量(K)
燃料 | Kの値 |
---|---|
都市ガス13A | 0.93 m³/kWh |
LPG(プロパン) | 12.9 m³/kg |
計算事例
ガスコンロ2台(各17.4kW)、フードと器具の距離1m以下の場合。
この計算結果と、フード面積による計算結果の両方を算出し、大きい方の数値を採用するのが実務での原則です。
実際の建築現場で有効換気量を計算する際は、複数の計算方法を組み合わせて最適な値を導出します。
フード面積による計算
V(排気量)= フード面積 × 面風速 × 3600
📐 フード設置環境別面風速
設置環境 | 推奨面風速 | 実用値 |
---|---|---|
四周開放(アイランド) | 0.9~1.2 m/s | 0.8 m/s |
三辺開放 | 0.8~1.1 m/s | 0.5 m/s |
二辺開放 | 0.7~1.0 m/s | 0.4 m/s |
一辺開放 | 0.5~0.8 m/s | 0.3 m/s |
床面積による換気量計算
居室の一般換気には、床面積と用途別の必要換気量を用いた計算も重要です。
🏢 用途別必要換気量
用途 | 床面積あたり必要換気量 |
---|---|
事務所(個室) | 6.0 m³/(m²・h) |
事務所(一般) | 7.2 m³/(m²・h) |
レストラン・喫茶 | 30.0 m³/(m²・h) |
宴会場 | 37.5 m³/(m²・h) |
計算式:必要換気量(㎥/h)= 床面積(㎡)× 床面積あたり必要換気量
例:100㎡の一般事務所の場合
100㎡ × 7.2 m³/(m²・h) = 720 m³/h
有効換気量の計算では、配管システム全体の圧力損失を正確に把握することが極めて重要です。これは多くの建築従事者が見落としがちな重要なポイントです。
圧力損失の主な要因
🎯 配管設計での実用的な考慮事項
風量-静圧特性の活用
換気扇メーカーが提供する風量-静圧曲線を用いることで、システム全体の圧力損失に対する実際の風量を正確に算出できます。
システム全体の圧力損失を計算し、その値を風量-静圧特性曲線上で確認することで、実際の有効換気量を求める方法が、現場での最も実用的なアプローチとなります。
設計段階でこの検証を怠ると、竣工後に換気不足が発覚し、設備の追加や変更が必要となるケースが多く見られます。特に高層建築や複雑なダクトルートを持つ建築物では、この計算の精度が建物の性能を大きく左右します。
近年の建築業界では、環境性能とコスト効率の両立が求められており、有効換気量の計算においても省エネルギー性を考慮した設計が重要になっています。
エネルギー効率を考慮した計算手法
従来の法令最小値だけでなく、実際の使用パターンや室内環境品質を考慮した計算により、過大設備による無駄なエネルギー消費を避けることができます。
🌱 省エネ設計のポイント
コスト最適化の計算アプローチ
初期投資と運用コストを総合的に評価する手法として、以下の要素を含めた計算が有効です。
💰 総合コスト評価項目
実用的な最適化事例
100㎡のオフィスで必要換気量720m³/h の場合、以下の選択肢を比較検討します。
各方式の15年間トータルコストを算出し、建物の使用条件に最適な方式を選択することで、性能とコストの最適なバランスを実現できます。
このような総合的な検討により、建築基準法の要求を満たしつつ、実際の建物運用における最適な換気システムの提案が可能になります。