契約不適合責任と35条と37条の違いと特約制限

契約不適合責任と35条と37条の違いと特約制限

宅建業法における契約不適合責任の35条書面と37条書面の違いを詳しく解説します。記載事項の相違点や特約制限について理解を深め、実務に役立つ知識を提供します。あなたは契約不適合責任の記載事項について正しく理解できていますか?

契約不適合責任と35条と37条の違い

契約不適合責任の基本
📝
契約不適合とは

売買で引き渡された目的物が種類・品質・数量・権利に関して契約内容に適合しないこと

⚖️
契約不適合責任とは

契約不適合があったときに売主が買主に対して負う責任

🔍
買主の権利

追完請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求が可能

契約不適合責任の35条書面における記載事項

35条書面(重要事項説明書)における契約不適合責任に関する記載事項は、多くの宅建業者が誤解しやすいポイントです。35条書面では、「契約不適合責任を負うかどうか」を説明するのではなく、「契約不適合責任の履行に関する措置」について説明する必要があります。

 

具体的には、以下の2点を記載・説明しなければなりません:

  1. 契約不適合責任の履行に関し、保証保険契約の締結その他の措置の有無
  2. 契約不適合責任の履行に関し、保証保険契約の締結その他の措置を講ずるときはその概要

つまり、35条書面では「契約不適合責任を負わない」という特約の有無を説明するのではなく、「契約不適合責任を履行するための保険等の措置を講じるかどうか、講じる場合はその概要」を説明するのです。

 

これは民法改正前の「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変更された際に表現が変わった部分でもあるため、学習経験者は特に注意が必要です。

 

契約不適合責任の37条書面における記載事項

37条書面(契約書)における契約不適合責任に関する記載事項は、35条書面とは異なります。37条書面では、以下の2点が任意的記載事項(定めがある場合に記載が必要な事項)となっています:

  1. 契約不適合責任について定めがあるときはその内容
  2. 契約不適合責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置について定めがあるときは、その内容

37条書面では、「契約不適合責任に関する特約」そのものを記載する必要があります。例えば「契約不適合があっても売主は責任を負わない」といった特約がある場合、その内容を記載しなければなりません。

 

また、保証保険契約などの措置についても、35条書面では「概要」を説明すれば良いのに対し、37条書面では「内容」を記載する必要があります。より詳細な情報(保険金額や保険期間など)を記載することが求められます。

 

契約不適合責任の貸借契約における35条と37条の違い

契約不適合責任に関する記載事項は、売買契約と貸借契約で扱いが異なります。特に37条書面(契約書)において重要な違いがあります。

 

貸借契約の場合、37条書面では契約不適合責任に関する記載は不要です。これは37条書面において、貸借では記載不要な項目の一つとして明確に規定されています。

 

具体的に、貸借契約では以下の項目が記載不要とされています:

  • 既存建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項
  • 移転登記の申請時期
  • 契約不適合責任またはその履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定め
  • 宅地・建物の租税公課の負担に関する定め
  • 代金・交換差金についての金銭の貸借のあっせんに関する定め

一方、危険負担の特約については、貸借契約でも記載が必要である点に注意が必要です。

 

契約不適合責任の特約制限と8種規制

契約不適合責任に関する特約には、「8種規制」と呼ばれる制限が適用される場合があります。8種規制とは、売主が宅建業者、買主が宅建業者以外の場合に適用される買主保護を目的とする制限です。

 

契約不適合責任の特約制限のポイントは以下の通りです。

  1. 民法では、契約不適合についての通知期間は、原則、買主がその不適合を知った時から1年以内
  2. 宅建業法では、上記通知期間について、「引渡しから2年」より長い期間で定めることは有効
  3. 上記2を除いて、民法より買主にとって不利な特約をすると無効となる

例えば、「契約不適合責任を一切負わない」という特約や、「不適合を知った時から2年以内に通知」という特約(民法では5年)は無効となります。特約が無効となった場合は、民法の規定が適用され、「不適合を知った時から5年以内」かつ「引渡しから10年以内」という期間が適用されます。

 

この特約制限は、一般消費者である買主が不利にならないよう保護するための重要な規制です。

 

契約不適合責任における保証保険契約の種類と実務上の留意点

契約不適合責任の履行に関する保証保険契約には、主に以下の種類があります:

  1. 保証保険契約:契約不適合があった場合に直接買主側に保険金が支払われるもの
  2. 責任保険契約:契約不適合責任を果たした売主側に保険金が支払われるもの
  3. 住宅瑕疵担保保証金の供託:宅建業者が行うもの

特に新築住宅については、平成21年10月1日から住宅瑕疵担保履行法による資力確保措置が義務付けられています。これは耐震偽装問題により、欠陥住宅を販売したマンション開発業者が補修費用を払えずに倒産し、購入者が多大な費用を負担することとなった事態を受けての措置です。

 

実務上の留意点としては、35条書面では保険契約等の「措置の有無」と「措置の概要」を説明し、37条書面では「措置の内容」をより詳細に記載する必要があります。保険金額や保険期間、保険の対象範囲などを明確に記載することが重要です。

 

また、宅建業者が売主となる場合は、契約不適合責任の特約制限に十分注意し、買主に不利な特約を設けないよう注意する必要があります。

 

国土交通省:住宅瑕疵担保履行法の概要
契約不適合責任に関する35条書面と37条書面の違いを正確に理解することは、宅建業者として非常に重要です。特に35条書面では「契約不適合責任を負うかどうか」ではなく「契約不適合責任の履行に関する措置」について説明することを混同しないようにしましょう。

 

また、契約不適合責任の特約制限については、8種規制の一つとして、売主が宅建業者、買主が一般消費者の場合に適用されることを忘れないようにしましょう。民法より買主に不利な特約は無効となり、例外的に通知期間を「引渡しから2年以上」とする特約のみ有効です。

 

さらに、貸借契約の場合は37条書面において契約不適合責任に関する記載が不要である点も重要なポイントです。これらの違いを正確に理解し、実務に活かしていくことが宅建業者として求められます。

 

契約不適合責任に関する記載事項の違いは、宅建試験でも頻出テーマとなっています。35条書面と37条書面の違いを明確に理解し、特に「契約不適合責任を負うかどうか」と「契約不適合責任の履行に関する措置」の違いを混同しないようにしましょう。

 

契約不適合責任は民法改正により「瑕疵担保責任」から変更された概念であるため、古い参考書や過去問を参考にする際は特に注意が必要です。最新の法改正に対応した知識を身につけ、実務においても正確な対応ができるようにしましょう。

 

以上、契約不適合責任における35条書面と37条書面の違いについて解説しました。これらの知識を活かし、適切な重要事項説明と契約書作成を行ってください。