建ぺい率オーバー物件の売却と既存不適格建築物の対処法

建ぺい率オーバー物件の売却と既存不適格建築物の対処法

建ぺい率オーバー物件は売却可能なのか?既存不適格と違法建築の違い、融資の可能性、リフォーム時の注意点まで不動産業従事者が知るべき実務知識を解説。あなたの物件は本当に問題があるのでしょうか?

建ぺい率オーバー物件の基礎知識と対処法

建ぺい率オーバー物件の全体像
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既存不適格と違法建築の違い

法改正により基準を満たさなくなった物件と、建築時から違反している物件の区別が重要

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売却と融資の可能性

適切な対処により売却可能、一部金融機関では融資対応も実現

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リフォーム時の制限事項

確認申請が必要な工事では現行法規への適合が求められる

建ぺい率オーバーの定義と計算方法

建ぺい率オーバーとは、敷地面積に対する建築面積の割合が、その地域で定められた建ぺい率の上限を超えている状態を指します。

 

建ぺい率の計算式

  • 建ぺい率(%)= 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100
  • 例:敷地面積200㎡、建築面積120㎡の場合 → 120÷200×100 = 60%

建ぺい率は用途地域によって30%から80%程度の範囲で設定されており、住環境の調整と火災時の延焼防止を目的としています。

 

建築面積に含まれる部分の注意点

  • 登記簿の1階部分面積だけでなく、ベランダや共用廊下も含める必要がある
  • キャンティレバー構造でないベランダは建築面積に算入される
  • 2階部分が1階より大きいオーバーハング建築では2階面積が基準となる

建ぺい率オーバーの既存不適格と違法建築の違い

建ぺい率オーバー物件は「既存不適格」と「違法建築(違反建築)」の2つに大別されます。この区別は売却や融資において極めて重要です。

 

既存不適格建築物の特徴

  • 建築当時の法令には適合していたが、法改正により現行法に適合しなくなった物件
  • 決して違法建築ではなく、継続使用が認められている
  • やむを得ない事情による場合が多い

違法建築(違反建築)の特徴

  • 新築時は適法だったが、後から無許可で増築・改築した結果オーバーした物件
  • 建築確認申請時と異なる設計図面で施工されたケース
  • 特定行政庁から是正措置を命じられる可能性がある

実務上の判断ポイント

  • 建築時期と法改正時期の確認が必要
  • 確認済証や検査済証の有無と内容の照合
  • 設計図面と現況の比較検討

建ぺい率オーバー物件の売却可能性と融資対応

建ぺい率オーバー物件でも適切な対処により売却は可能です。ただし、容積率オーバー物件と比較して融資面での制約が大きいのが実情です。

 

売却における対応策

  • 自治体の都市計画課への確認による正確な現状把握
  • 既存不適格の証明書類の整備
  • 買主への適切な説明と重要事項説明書への記載

融資の現状と対策

  • 建ぺい率オーバーに融資する金融機関は数件に限られる
  • 容積率オーバーより融資が困難な傾向
  • 一部の関西系金融機関では対応実績あり

価格への影響

  • 一般的に市場価格より10-30%程度の減額が想定される
  • 立地条件や建物状況により影響度は変動
  • 適法化が可能な場合は減額幅を抑制できる

建ぺい率オーバー物件の売却実績に関する詳細情報
https://albalink.co.jp/realestate/sell-over-coverage-ratio/

建ぺい率オーバー物件のリフォーム制限と確認申請

既存不適格建築物であっても、リフォーム内容によっては制限があります。確認申請が必要な工事では現行法規への適合(遡及適用)が求められるため注意が必要です。

 

確認申請不要なリフォーム

  • ビニールクロスの張り替え
  • トイレやユニットバスの設備機器交換
  • 構造部が変わらない内装工事

4号建築物の特例

  • 木造2階建て以下かつ延床面積500㎡以下
  • 木造以外の平屋かつ延床面積200㎡以下
  • 上記に該当する場合は確認申請自体が不要

確認申請が必要なリフォーム

  • 主要構造部の過半(1/2超)を修繕・模様替えする「大規模修繕・大規模模様替え」
  • 外壁面積の1/2を超える張り替え(4号建築物以外)
  • 屋根面積の1/2を超える葺き替え(4号建築物以外)
  • 10㎡を超える増築(防火地域・準防火地域以外)

遡及適用の緩和措置
建築基準法第86条の7により、政令で定める範囲の増築等では遡及適用が免除される場合があります。

 

建ぺい率オーバー物件を適法化する実務テクニック

建ぺい率オーバー物件を適法化する方法は、容積率オーバー物件と比較して限定的ですが、以下の手法により解決できる場合があります。

 

土地実測による適法化

  • 登記簿上の面積と実測面積の差異を活用
  • 古い登記では測量技術の違いにより面積が増加する場合がある
  • 数パーセントのオーバーであれば解決可能性が高い
  • 検討段階では現況測量(費用3万円~)で十分

建ぺい率不算入部分の発見

  • 出窓:床から30cm以上の高さで壁から50cm以下の出窓は不算入
  • 庇:1メートル以下の庇は建ぺい率に算入されない
  • 登記面積に含まれているが本来不算入の部分を特定

実務上の注意点

  • 土地家屋調査士による正確な測量が必要
  • 隣地との筆界確認は契約後に実施
  • 建築基準法と不動産登記法の違いを理解

成功事例の特徴

  • 建ぺい率オーバーが5%以内の物件
  • 築年数が古く登記面積に誤差がある物件
  • 庇や出窓が多い住宅

建ぺい率の緩和措置に関する詳細解説
https://iqrafudosan.com/channel/building-coverage
まとめ
建ぺい率オーバー物件は適切な知識と対処により、売却や有効活用が可能です。既存不適格と違法建築の区別、融資の可能性、リフォーム時の制限事項を正確に把握し、必要に応じて適法化の検討を行うことが重要です。特に実測や不算入部分の発見により適法化できる可能性があるため、専門家との連携により最適な解決策を見つけることができます。