
登記済権利証は、1899年(明治32年)の不動産登記法施行時から2005年頃まで発行されていた伝統的な権利証です。この権利証は、登記申請書の副本または原因証書(売買契約書など)に法務局の「登記済」印が押印されたもので、冊子状の形態をとっています。
登記済権利証の特徴。
登記済権利証には実際に2つの種類が存在します。元々申請書副本だった書類に登記済の押印がされたものと、元々原因証書(売買契約書など)だった書類に登記済の押印がされたものです。実際には申請書副本が用いられることが多く、この場合は売買代金などの詳細情報は記載されていません。
登記識別情報は、不動産登記法の改正により導入された新しい権利証システムです。平成17年から平成20年にかけて順次導入され、現在ではすべての法務局で採用されています。
登記識別情報の特徴。
登記識別情報通知は、登記完了後にオンラインで通知を受けることも可能ですが、実際には紙媒体で発行してもらうことがほとんどです。また、登記申請の際に発行を希望しない旨を申し出ることで、登記識別情報通知の発行を停止することも可能です。
重要な注意点として、登記識別情報の12桁の英数字は絶対に他人に見せてはいけません。この情報が漏れると、権利証を渡したことと同じ効果を持ってしまいます。
権利証は発行時期によって3つの形態に分類できます。これらの違いを理解することは、不動産従事者にとって極めて重要です。
第1期:登記済印押印型(~2005年頃)
第2期:シール貼付型(2005年頃~2015年頃)
第3期:折り込み式(2015年頃~現在)
これらの見分け方を知っておくことで、クライアントが持参した書類が正しい権利証かどうかを即座に判断できます。特に相続案件では、古い登記済権利証が出てくることが多いため、その真正性を確認する能力が求められます。
登記済権利証と登記識別情報は法的効力に違いはありませんが、実務上の取り扱いには若干の差異があります。
本人確認手続きの違い:
登記済権利証の場合。
登記識別情報の場合。
紛失時の対応の違い:
両方とも再発行は不可能ですが、対処法には違いがあります。登記済権利証の場合は物理的な紛失が明確ですが、登記識別情報の場合は情報が漏洩した可能性も考慮する必要があります。
事前通知制度や本人確認情報制度の利用において、登記識別情報の方がより迅速な処理が可能な場合があります。これは電子化されたシステムの利点を活用できるためです。
権利証の種類によって適切な保管方法が異なります。不動産従事者として、クライアントに正しい保管方法を指導することは重要な責務です。
登記済権利証の保管方法:
登記識別情報の保管方法:
特に登記識別情報については、一度情報が漏洩すると取り返しがつかないため、より厳重な管理が求められます。クライアントには「見せない、コピーしない、写真を撮らない」の3原則を徹底指導する必要があります。
また、相続が発生した場合の権利証の取り扱いについても、種類によって注意点が異なります。登記済権利証は物理的な引き継ぎが必要ですが、登記識別情報は情報の共有に特に注意が必要です。
不動産従事者として、これらの違いを理解し、適切な管理方法をクライアントに指導することで、トラブルの未然防止と円滑な取引の実現が可能になります。権利証の種類に応じた適切な対応は、プロフェッショナルとしての信頼性を高める重要な要素といえるでしょう。