
2025年の建設機械展示会では、業界の変革を示す革新的な技術が数多く披露されています。特に電動化、ICT技術の活用、遠隔操作システムが主要なトレンドとして注目を集めており、従来の建設業界の概念を根底から変える可能性を秘めています。
国内では「CSPI-EXPO 2025 国際建設・測量展」が千葉・幕張メッセで開催され、約300社超が出展し、展示面積は約47,000㎡に達する大規模なイベントとなりました。一方、海外では世界最大級の「bauma 2025」がドイツ・ミュンヘンで開催され、200以上の国と地域から約60万人もの来場者が集まる盛況ぶりを見せています。
これらの展示会では、単なる製品紹介にとどまらず、現場技術の革新に直結するテーマが重視されており、住友建機、日立建機、コマツ、タダノなどの主要メーカーが最新技術を体験デモ付きで実演しています。
2025年の展示会で最も注目されているのが、建設機械の電動化技術です。bauma 2025では「気候中立性(Klimaneutralität)」が主要テーマの一つに掲げられ、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする技術が数多く展示されました。
特に「代替駆動コンセプト(Alternative Antriebskonzepte)」として、電動化、水素燃料、バイオ燃料など、従来の内燃機関に代わる新しい駆動技術が注目を集めています。これらの技術は、単なる環境対策にとどまらず、運用コストの削減や作業効率の向上にも寄与する革新的なソリューションとして評価されています。
日本国内でも、H2 & FC EXPO(水素・燃料電池展)において、コベルコ建機などが水素燃料電池を活用した建設機械の展示を行い、業界関係者の高い関心を集めています。これらの技術は、2030年代の実用化を目指しており、建設現場のカーボンニュートラル実現に向けた重要な一歩となります。
また、従来の電動化技術では困難とされていた大型建機についても、バッテリー技術の進歩により実用的なレベルに達しつつあります。特に都市部の建設現場では、騒音規制や排ガス規制の観点から、電動建機の需要が急速に拡大しています。
建設機械業界における**デジタルトランスフォーメーション(DX)**は、2025年の展示会で最も革新的な分野の一つです。建設・建築DX EXPOでは、図面管理・工程管理・CAD・BIM・CIM・測量システム・ICT建設機器・現場管理システムに焦点が当てられています。
特に注目されるのがデジタルツイン技術の活用です。この技術により、建設現場の状況をリアルタイムでデジタル空間に再現し、施工計画の最適化や作業効率の向上を実現できます。また、3D計測技術と組み合わせることで、従来では困難だった精密な測量作業を自動化できるようになります。
AI・ロボット・センサー技術の統合も進んでおり、戸田建設、前田建設工業、鉄建建設、インフロニアグループなどの主要ゼネコンが、自動打設ロボット、安全モニタリングシステム、冷却デバイスといった実践重視の技術を出展しています。
さらに、施工管理ソフトウェアの進歩により、複数の現場を一元管理することが可能になり、コスト削減と品質向上の両立を実現しています。これらのICT技術は、人手不足が深刻化する建設業界において、生産性向上の切り札として期待されています。
建設現場の安全性向上と効率化を目的とした遠隔操作技術は、2025年の展示会で特に注目を集めている分野です。住友建機、日立建機、コマツ、タダノなどの主要メーカーが最新ショベルの遠隔操作技術を体験デモ付きで実演し、来場者の高い関心を集めています。
遠隔操作システムの最大の利点は、危険エリアでの作業安全性の確保です。災害復旧現場や高所作業、有毒ガスが発生する可能性のある現場において、オペレーターの安全を確保しながら効率的な作業を実現できます。また、熟練オペレーターの技術を遠隔地から活用することで、人材不足の解決にも貢献しています。
自動化技術については、GPS測位システムと連携した自動運転機能が実用レベルに達しています。特に整地作業や掘削作業において、事前にプログラムされたパターンに従って自動で作業を行うことが可能になっており、作業の精度向上と時間短縮を同時に実現しています。
さらに、チルトローテータ技術を活用したシステムも注目されています。engconが開発したチルトローテータは、従来の建機では困難だった角度での作業を可能にし、作業効率を大幅に向上させています。これらの技術は、限られたスペースでの作業が求められる都市部の建設現場で特に威力を発揮します。
2025年の建設機械展示会では、従来の静的な展示から脱却し、体験型技術を重視した展示が増加しています。特にコベルコ建機では、6月21日の一般公開日に親子向けブースツアーや塗り絵、建機乗車体験、ヘルメット写真コーナーなど、幅広い層に建設機械の魅力を伝える取り組みを実施しました。
バーチャル展示会の技術も大きく進歩しており、コベルコ建機では実際の展示会に来場できなかった方向けに「バーチャル展示会」を公開し、製品の詳細をオンラインで体験できるサービスを提供しています。この技術により、地理的制約を超えて多くの関係者が最新技術に触れる機会を創出しています。
さらに、AR(拡張現実)技術を活用した製品説明や、VR(仮想現実)技術による建機操作シミュレーション体験も導入され、来場者がより深く製品の性能や特徴を理解できるようになっています。これらの技術は、特に若手技術者の教育や、海外顧客への製品紹介において効果的に活用されています。
また、展示会場内ではドローン技術を活用した測量デモンストレーションや、映像機器を使用した建設現場のリアルタイム監視システムの実演も行われており、建設業界における技術革新の幅広さを実感できる内容となっています。
2025年の建設機械展示会を通じて見えてくる業界の将来は、持続可能性とデジタル化を軸とした大きな変革期にあることが明らかになります。bauma 2025では「Hands on the future(未来を実現する)」をスローガンに掲げ、気候中立性、代替駆動コンセプト、ネットワーク化された建設、持続可能な建設、鉱業の課題といった5つの主要テーマが議論されました。
特に注目すべきは、ネットワーク化された建設の概念です。これは、建設現場のあらゆる機械や設備をネットワークで接続し、リアルタイムでデータを共有・分析することで、施工効率の最大化を目指すものです。この技術により、従来は経験と勘に頼っていた作業判断が、データに基づいた科学的なアプローチに変わりつつあります。
グローバル市場においても、アジア太平洋地域の建設需要拡大を背景に、日本の建機メーカーの技術力が高く評価されています。特に、精密制御技術や省エネルギー技術において日本企業が優位性を保持しており、海外展開の加速が期待されています。
また、カーボンニュートラル実現への取り組みは、単なる環境対策を超えて、新たなビジネス機会の創出にもつながっています。CO₂削減技術や代替燃料技術の開発競争は激化しており、技術革新がそのまま市場競争力に直結する状況となっています。
人材育成の観点では、従来の機械操作技能に加えて、ICT技術やデジタル技術に関する知識が必須となりつつあり、業界全体での教育体制の見直しが急務となっています。