公営住宅法20条と共益費の関係を完全理解

公営住宅法20条と共益費の関係を完全理解

公営住宅で生活する際に避けて通れない共益費の支払いについて、公営住宅法20条がどのような影響を与えているのか、権利金との違いや自治体の対応方法まで詳しく解説します。あなたの共益費に関する疑問は解決できるでしょうか?

公営住宅法20条と共益費

公営住宅法20条と共益費の基本構造
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法律の基本原則

公営住宅法20条は金品徴収の禁止を定めているが、共益費は例外的に認められている

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共益費の特殊性

権利金や礼金と異なり、共同利益のための費用として法的に位置づけられている

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管理の実態

多くの自治体で自治会による徴収から行政による直接徴収への移行が進んでいる

公営住宅法20条の金品徴収禁止規定

公営住宅法第20条は、事業主体が公営住宅の使用に関して「家賃及び敷金を除くほか、権利金その他の金品を徴収し、又はその入居者に不当な義務を課することができない」と明確に規定しています 。この条文は、公営住宅の入居者が不当な金銭的負担を負わされることを防ぐための根幹的な規定となっています 。
参考)https://www.rilg.or.jp/htdocs/main/houmu_qa/2024/78_autumn01.html

 

しかし、公営住宅法第20条が徴収を禁止しているのは、あくまで権利金や礼金などの「不当な金品」であり、共益費については全く異なる取り扱いがなされています 。これは、共益費が入居者の共同の利便のために使用される性質を持つためで、禁止対象となる金品とは本質的に異なるものとして理解されています 。
参考)http://www.zenseiren.net/osirase/news/2014/2210/2210.html

 

国土交通省の見解においても、「共益費は、共同の利益のために使用するもので徴収の禁止には当たらない」との解釈が示されており、法的に適正な費用として位置づけられています 。

公営住宅における共益費の法的根拠と目的

公営住宅における共益費は、廊下やエレベーター、集会所などの共用部分維持管理に必要な費用を賄うことを目的としています 。これらの共同施設は、入居者全員が「借りている」施設であるため、公営住宅法第27条第1項により、入居者全員が「自分の物と同じように」管理する義務を負うことが定められています 。
参考)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080800/d00205331_d/fil/publiccommentan.pdf

 

具体的な共益費の対象となる費用には、以下のような項目が含まれています。

この共益費の負担は、入居者の義務の一部として位置づけられ、入居者全員が公平に負担することが求められています 。

公営住宅法20条適用における権利金との明確な区別

公営住宅法第20条で禁止されている権利金と共益費の最も重要な違いは、その使用目的と性質にあります 。権利金は、入居する権利を得るために事業主体が一方的に利益を得る性質の金品ですが、共益費は入居者の共同の利便のために使用される費用という根本的な相違があります 。
権利金その他の金品として禁止されるものには、以下のような特徴があります。

一方、共益費は入居者全員の共同の利益のために使用され、透明性のある会計処理が行われることが前提となっています 。また、共益費の徴収には合理的な根拠が必要で、使用用途が法律により明示されている点も重要な区別要素となっています 。
参考)https://yagisawa.org/kaihi/

 

この区別により、共益費は公営住宅法第20条の金品徴収禁止規定の例外として扱われ、適正な手続きと透明性を確保した上で徴収することが可能となっています 。

自治体による共益費直接徴収の新しい動向と背景

近年、公営住宅の入居者の高齢化や空き住戸の増加に伴い、従来の自治会による共益費徴収システムに深刻な問題が生じています 。役員の担い手不足や徴収困難な状況により、多くの自治体で共益費を直接徴収する制度への移行が進んでいます 。
参考)https://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000653206.html

 

大阪府では、団地単位で入居者の7割以上の同意により共益費として府徴収に切替えできる制度を設けており、これは全国的にも注目される取り組みとなっています 。また、五條市では入居者の自治組織等による共益費の徴収及び管理ができないと認める場合にのみ、市が直接徴収を行う規則を制定しています 。
参考)https://www.city.gojo.lg.jp/section/reiki_int/reiki_honbun/k408RG00001060.html

 

自治体による直接徴収を可能にする方法として、以下のような仕組みが採用されています。

  • 自治会と市との間で委託契約を締結し、市が代行して支払いを行う方式
  • 徴収した金員を歳入として扱い、条例に基づいて適正に処理する方法
  • 家賃と一括して徴収することで、事務効率を向上させる仕組み

この新しい動向は、公営住宅管理の現代的な課題に対応した実践的な解決策として評価されています 。
参考)https://www.sankei.com/article/20210216-P2MX35TDBVMLVE2V26TLPOHXK4/

 

公営住宅法20条下での共益費減免制度と社会的配慮

公営住宅の共益費について、生活保護世帯などの経済的困窮世帯に対する減免制度の導入が各自治体で検討されています 。東京都と一部の自治体では、生活保護世帯に対して共益費の減免を実施していますが、多くの自治体ではまだ実施されていないのが現状です 。
共益費の金額は地域や住宅の規模により大きく異なり、月額120円から4000円まで幅広い設定となっています 。特に借り上げ住宅では8000円という高額な共益費が設定されているケースもあり、入居者の経済的負担が問題となっています 。
減免制度の必要性については、以下のような観点から議論されています。

  • 入居後の経済的変化など特別な事情のある世帯への配慮
  • 共益費の透明性確保と適正な経理処理
  • 負担額の下位から数えて90%相当に該当する者が負担する額を限度額とする措置

    参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/32156/siryou02.pdf

     

全生連(全国生活と健康を守る会連合会)では、共益費を家賃などとともに減免の対象とすることを国土交通省に要望していますが、「地域主権の流れの中で、国が介入するのは難しい」との回答を得ている状況です 。