
区分所有建物における共用部分は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)により「法定共用部分」と「規約共用部分」の2つに大別されます。
法定共用部分は、建物の構造上区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分で、以下のような箇所が該当します。
これらは性質上当然に共用部分とされるため、登記することはできません。
一方、規約共用部分は本来専有部分となりうる建物の部分を、管理規約により共用部分と定めたものです。
規約共用部分は第三者に対抗するため、建物登記簿の表題部にその旨の登記をすることができます。この登記により、購入者や金融機関などの第三者に対して共用部分であることを主張できるようになります。
宅建実務では、これらの区別を正確に把握し、重要事項説明書に適切に記載することが求められます。特に規約共用部分については、専用使用権が設定されている場合が多く、使用・管理方法について規約の内容を詳細に確認する必要があります。
共用部分の持分は、原則として専有部分の床面積の割合により決定されます。この持分割合は、共用部分の管理費用負担や議決権の基準となる重要な要素です。
専有部分の床面積の測定方法は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積で算出されます。つまり、壁の厚さは含まれず、実際に居住可能な空間のみが対象となります。
持分計算の具体例を見てみましょう。
住戸 | 専有部分面積 | 持分割合 |
---|---|---|
301号室 | 70㎡ | 70/300 |
302号室 | 80㎡ | 80/300 |
303号室 | 90㎡ | 90/300 |
401号室 | 60㎡ | 60/300 |
合計 | 300㎡ | 300/300 |
ただし、管理規約により別段の定めをすることも可能です。例えば、戸数割合による持分設定や、全体の共用部分と棟別の共用部分で異なる持分を設定することもあります。
費用負担の原則として、共用部分の管理に要する費用は、規約に別段の定めがない限り、各区分所有者がその持分に応じて負担することになります。これには以下が含まれます。
宅建実務では、重要事項説明において建物の所有者が負担する通常の管理費用の額を説明する義務があります。また、修繕積立金については、その内容と既に積み立てられている額の説明も必要です。
宅建業法第35条に基づき、区分所有建物の取引において共用部分に関する重要事項説明が義務付けられています。説明すべき項目は売買と賃貸で異なるため、取引形態に応じた適切な説明が必要です。
売買取引における説明事項。
賸貸取引における説明事項は、上記のうち①と②のみで足ります。
実務上の注意点として、規約が案の段階であってもその案を説明する必要があります。また、バルコニーや専用庭などは規約共用部分として定められることが多く、専用使用権の内容について詳細な確認が必要です。
重要事項説明における参考資料として、管理規約や重要事項調査報告書の確認が欠かせません。
区分所有法の基本的な考え方と構造について詳しく解説
共用部分の管理は、行為の性質により必要な決議要件が異なります。宅建士として、これらの決議要件を正確に理解し、管理組合運営のアドバイスができることが重要です。
保存行為🔧
管理行為📊
軽微な変更⚡
重大な変更🏗️
議決権の算定方法は、原則として各区分所有者の専有部分の床面積の割合によります。ただし、管理規約により戸数割合による議決権設定も可能です。
集会の招集について、管理者が不在または招集を怠る場合は、区分所有者および議決権の5分の1以上を有する者が集会を招集できます。この定数は規約により減らすことはできますが、増やすことはできません。
招集通知は原則として開催日の1週間前までに行う必要があり、議題は招集通知で予め示されたもののみ決議できます。
区分所有建物の共用部分に関するトラブルは多岐にわたり、宅建士として適切な対応策を理解しておくことが重要です。実務で頻繁に遭遇するトラブル事例と対応策を整理します。
専用使用権に関するトラブル🚗
バルコニーや駐車場の専用使用権について、使用料の未払いや無断使用が問題となるケースが増加しています。対応策として。
管理費・修繕積立金の滞納問題💰
長期にわたる滞納は管理組合の運営に深刻な影響を与えます。
共用部分の変更に関する合意形成🤝
エレベーター設置やバリアフリー化などの大規模変更では合意形成が困難な場合があります。
管理会社との契約トラブル📋
管理業務の質や費用に関する不満が生じるケースが見られます。
予防策として推奨される取り組み。
宅建士として、これらのトラブル予防策を提案し、健全な区分所有建物の管理運営をサポートすることが求められます。特に売買取引の際は、購入後のトラブルを避けるため、事前の十分な調査と説明が不可欠です。
実務での継続的な学習として、区分所有法の改正動向や判例の蓄積を定期的にフォローし、最新の知識を維持することが重要です。
共用部分に関する規約等の定めについての詳細な解説