
専有部分とは、区分所有者が単独で所有している部分のことで、マンションでは○○号室として区切られた躯体の壁や床、天井の内側の空間を指します。この定義は区分所有法に基づいており、宅建業務において正確な理解が不可欠です。
専有部分と共用部分の境界を決める基準には、以下の2つの方法があります。
マンションごとに管理規約で定められているため、物件によって異なる部分もあります。宅建業者として重要事項説明を行う際は、当該マンションの管理規約を必ず確認し、専有部分の範囲を正確に把握する必要があります。
コンクリートの躯体の内側が専有部分という原則を覚えておくと、実務で迷うことが少なくなります。共用部分は専有部分以外の全ての部分で、区分所有者全員の共有となるため、自由にリフォームすることはできません。
宅地建物取引業法第35条では、区分所有建物の売買・賃貸において、専有部分の用途その他の利用制限に関する規約の定めがある場合、その内容を重要事項として説明することが義務付けられています。
売買の場合の説明事項には以下の9項目があります。
賃貸の場合は、専有部分の用途・利用制限に関する規約と管理委託者の情報のみの説明で足ります。これは借主にとって直接的に影響する事項のみに限定されているためです。
用途制限の具体例として「居住用途のみ」や「事務所使用不可」などがあり、利用制限には「ペットの飼育禁止」や「楽器使用禁止」などが含まれます。
専有部分の利用制限は多岐にわたり、マンションの快適な住環境を維持するために設けられています。主な制限事項と実務で重要となるポイントを詳しく解説します。
ペット飼育に関する制限
多くのマンションでペット飼育が禁止されており、重要事項説明書には明確に記載する必要があります。一部のマンションでは小型犬のみ可、猫のみ禁止など、詳細な規定がある場合もあります。
フローリング変更に関するL値基準
床材の変更、特にカーペットからフローリングへの変更には、L値(床衝撃音の遮断等級)による制限があります。L値は音の伝わりにくさを表し、数値が小さいほど遮音性能が優れています。
L値の基準と生活への影響。
L値 | 音の聞こえ方 | 生活状態 |
---|---|---|
LL-40 | ほとんど聞こえない | 気がねなく生活できる |
LL-45 | 小さく聞こえる | 少し気をつける |
LL-50 | 聞こえる | やや注意して生活する |
LL-60 | かなり気になる | 互いに我慢できる程度 |
LL-70 | かなりうるさい | 自分のところに子供がいても気になる |
楽器演奏に関する制限
ピアノなどの楽器演奏については、時間帯の制限(例:9時〜18時のみ)や楽器の種類による制限が設けられている場合があります。防音対策の基準も併せて確認が必要です。
事業用使用の制限
「住居専用」の規約がある場合、事務所や店舗としての使用は禁止されています。在宅ワークの普及により、この点についての問い合わせが増加しているため、注意深く説明する必要があります。
専有部分に関する重要事項説明は、売買と賃貸で説明すべき内容が大きく異なります。この違いを正確に理解することが、適切な重要事項説明につながります。
賃貸取引での限定的な説明義務
区分所有建物の賃貸では、借主に直接影響する事項のみの説明で足りるとされています。具体的には以下の2項目のみです。
この限定的な説明範囲は、借主が物件を使用する上で必要最小限の情報に絞られているためです。修繕積立金や管理費用などの所有者特有の負担については、賃貸では説明義務がありません。
売買取引での包括的な説明義務
売買の場合は、将来の所有者として知っておくべき9項目すべてを説明する必要があります。これには財務的な情報(修繕積立金の額、管理費用など)や建物の維持管理に関する情報も含まれます。
実務上の注意点
賃貸から売買への切り替えが発生した場合、説明すべき内容が大幅に増加することを理解しておく必要があります。また、管理規約の案がある段階でも説明義務があるため、最新の情報を管理組合や管理会社から入手することが重要です。
管理委託者の情報については、法人の場合は商号または名称と主たる事務所の所在地を説明すれば足り、具体的な業務内容の説明は不要です。
専有部分に関するトラブルを未然に防ぐためには、重要事項説明の際の細かな配慮と継続的な情報収集が欠かせません。実務経験に基づく具体的なポイントを解説します。
管理規約の最新情報確認の重要性
管理規約や使用細則は管理組合の総会で変更される可能性があります。重要事項説明書の作成時点での最新情報を確認するため、以下の関係者への確認が必要です。
特に、ペット飼育やリフォーム制限については、近年変更されるケースが増加しているため、書面での確認を推奨します。
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専用使用権の説明における注意事項
駐車場の専用使用権については、使用料等の説明が必要ですが、使用者の氏名・住所の説明は不要です。この区別を明確にしておくことで、過度な個人情報の開示を避けることができます。
L値基準の事前確認
フローリング変更を検討している顧客に対しては、事前にL値基準を確認し、対応可能な床材の選択肢を提示することで、契約後のトラブルを防げます。施工業者との連携も重要なポイントです。
デジタル化への対応
重要事項説明のIT化が進む中、専有部分の図面や管理規約をデジタル形式で保存・共有する体制を整えることで、説明の効率化と正確性の向上を図ることができます。
継続的な法改正への対応と、顧客とのコミュニケーションを密にすることが、専有部分に関するトラブル回避の基本となります。