工業地域一覧と建築制限の基本ガイド

工業地域一覧と建築制限の基本ガイド

日本の工業地域には様々な種類があり、それぞれ建築制限や特色が異なります。宅建業界で知っておくべき工業地域の分類や用途制限について詳しく解説しますが、どのような違いがあるのでしょうか?

工業地域一覧と特色

日本の工業地域と建築制限の概要
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工業系用途地域の分類

準工業地域・工業地域・工業専用地域の3つに分類され、それぞれ建築制限が異なる

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工業地帯と地域の違い

戦前からの地域を工業地帯、戦後に発達した地域を工業地域と呼び分ける

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住宅建築の可否

工業専用地域以外の工業系地域では住宅の建築が可能

工業地域の地理的分布一覧

日本の工業地域は大きく工業地帯と工業地域に分類されており、それぞれが明確な地理的特徴を持っています。戦前から高度経済成長期までに形成された「工業地帯」として、京浜工業地帯(東京都・神奈川県)、中京工業地帯(愛知県・三重県)、阪神工業地帯(大阪府・兵庫県)、北九州工業地帯(福岡県)の4つが存在します。
参考)https://www.eikoh.co.jp/koukoujuken/column/c2090/

 

高度経済成長期以降に形成された「工業地域」には、京葉工業地域(千葉県)、北関東工業地域(埼玉県・群馬県・栃木県)、東海工業地域(静岡県)、瀬戸内工業地域(岡山県・広島県・山口県・香川県・愛媛県)などがあります。これらの工業地域は太平洋ベルト上に集中しており、原料・燃料の輸入や製品の輸出に便利な立地となっています。
参考)https://chu-ju.benkyohou.info/chihou/kogyochitairanking.html

 

現在の製造品出荷額ランキングでは、中京工業地帯が64.6兆円(全国の20.0%)で圧倒的な1位を占め、阪神工業地帯(33.2兆円、10.3%)、関東内陸工業地域(31.7兆円、9.8%)、瀬戸内工業地域(31.0兆円、9.6%)が続きます。

工業地域の用途制限と建築基準

建築基準法における用途地域では、工業系地域は準工業地域、工業地域、工業専用地域の3つに分類されており、それぞれ異なる用途制限が設けられています。準工業地域は「主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域」として都市計画法で規定されており、危険性の高い工場や環境悪化の恐れのある工場は建設できませんが、店舗や公共施設、学校、医療機関など幅広い用途の建築物が可能です。
参考)https://o-uccino.com/front/articles/59431

 

工業地域では危険性の高い工場や環境悪化の恐れのある工場の建設も可能とされており、住宅や事務所、店舗の建築は認められていますが、宿泊施設や学校、幼稚園などは規制されています。工業専用地域は用途地域の中で唯一、住宅を建てて住むことができない地域であり、工場や倉庫、事務所、一部の公共施設以外の建築は厳しく制限されています。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/exclusive-industrial

 

これらの地域では建ぺい率、容積率、道路斜線制限、隣地斜線制限などの建築制限も異なり、工業専用地域では日影規制の適用がないため、大規模な建築物の建設が可能となっています。

工業地域における住宅建築の実情

工業地域における住宅建築については、法的には準工業地域と工業地域で可能ですが、実際の居住環境には様々な課題があります。準工業地域は意外と身近な場所に存在し、利便性が高く、大型店舗の立地や都市開発も珍しくないため、住宅用地としての価値が認められています。
工業地域でもタワーマンションが建設されることが多く、特に大規模工場の閉鎖跡地の開発では、日影規制の適用がないことを活かして高層建築物が建設される傾向があります。しかし、工業地域である限り、将来的にどのような建物が建設されるかが予測困難であり、騒音や大気汚染、交通渋滞などの問題が発生する可能性があります。
不動産売買においては、工業地域の戸建住宅は売却が困難で相場より安価になる傾向があり、準工業地域の方がファミリー層に受け入れられやすいという特徴があります。

工業地域と都市計画の関係性

工業地域の指定は都市計画法に基づいて行われており、住居系、商業系と並ぶ3つの地域区分の一つとして位置づけられています。用途地域制度は、住居、商業施設、工業地帯が混在することで生じる居住性や利便性の低下を防ぐために制定されたものです。
工業専用地域では、複数の工場従業員が利用するコンビニや食堂については特別な許可を受けることで建築が可能となっており、工業団地内での最低限の利便施設の確保が図られています。これらの例外規定により、純粋な工業専用としながらも実用性を保った土地利用が実現されています。
また、都市計画の変更により用途地域の見直しが行われることもあり、地域の発展や産業構造の変化に応じて工業地域の範囲や制限内容が調整される場合があります。
参考)https://kentikusi.jp/dr/%E7%94%A8%E9%80%94%E5%9C%B0%E5%9F%9F

 

工業地域における投資・売買の注意点

工業系地域での不動産売買には特別な注意が必要であり、用途地域の種類によって投資価値や売却の難易度が大きく異なります。工業専用地域や工業地域で土地を売却する場合、最も効率的な方法は近隣工場への直接的な働きかけですが、需要が限定的な場合は早期の売却判断が重要となります。
準工業地域の土地は比較的売却しやすい一方で、工場の存在による日照・通風への影響、交通混雑、騒音・臭気などの問題がある場合は敬遠される可能性があります。購入者住宅地、事務所・店舗用地、工場用地のいずれを想定するかによって売却戦略を明確にする必要があります。
工業系地域で土地を購入する際は、価格の安さだけでなく、平日・休日の異なる時間帯での現地確認、通勤・通学路の確認、混雑時の迂回路の確認など、十分な下見が不可欠です。特に住宅用地として購入する場合は、長期的な居住環境の変化も考慮した慎重な判断が求められます。