
建設業界では「カンリ」と読む業務が2つあります。工事監理と施工管理(工事管理)は混同されがちですが、実は全く異なる業務内容と役割を持っています。
工事監理は建築主の代理人として、工事が設計図書通りに実施されているかを確認する業務です。一方、施工管理は現場の責任者として、工程や品質、安全管理など工事全体を統括する業務を指します。
この違いを理解せずに業務を進めると、責任範囲の不明確化や品質管理の不備を招く可能性があります。特に不動産業界で建築に関わる際は、両者の役割を正確に把握することが重要です。
工事監理を行う担当者は建築士の資格が必要です。建築基準法では「建築主は建築士である工事監理者を定めなければならない」と規定されており、一級建築士、二級建築士、木造建築士のいずれかの資格を持つ者が工事監理者になります。
工事監理者の選任が義務付けられているのは、設計図書と施工の適合性を確認するには相当の実績や学識が求められるからです。建築士法第二条第八項では「工事監理とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」と定義されています。
工事監理者は現場に常駐する必要はなく、必要なタイミングで検査を行い、問題がないかをチェックします。規模の大きな現場では複数人で確認したり、チェック回数を増やしたりして対応することもあります。
工事監理の主な業務は設計と施工の適合性確認と発注者と施工現場の仲介です。具体的には以下のような事項をチェックします:
工事監理者は建築主側の立場から、施工者の工事を点検・確認・是正する業務を担います。欠陥の発生を未然に防ぐ重要な役割を果たし、図面だけでは伝わりきらない内容を現場の人に伝える役割もあります。
現場確認後は建築主への報告を行い、問題が起こりそうな箇所について現場監督に事前通知したり、抜き打ち検査を実施したりすることも業務の一部です。
工事監理における品質管理は、建築物の安全性と耐久性を確保する上で極めて重要です。品質が確保され、耐久性の高いコンクリート構造物を建設するためには、コンクリートのフレッシュ性状と適切な施工が極めて重要であり、また良い状態を長期に渡って保つためには環境作用ごとの材料劣化対策を講じる必要があります。
特に土木構造物は公共性が高く、国民の安心と安全、円滑な流通を第一に考える必要があるため、構造設計後の施工から維持管理、解体までの生涯シナリオを経済性も含めて適切に想定する必要があります。
工事監理者は単に設計図書との照合を行うだけでなく、将来的な維持管理まで見据えた品質確保を意識する必要があります。施工段階での品質管理の不備は、後の維持管理費用増大や建物の安全性に直結するためです。
施工管理(工事管理)は、建設現場が安全かつ効率的に工事を進められるように工事全体の管理をする業務です。管理の柱となるのは以下の5つです:
施工管理者(現場監督)は現場に常駐し、これらの管理業務を通じて設計図や仕様書通りに建物を完成させることを目指します。工期短縮による工事費用の削減や労働災害の防止により、クライアントや地域社会との良好な関係構築に役立ちます。
施工管理には特定の資格は必ずしも要求されませんが、施工管理技士の資格を有している場合があります。ただし、戸建て住宅の場合はほとんどで資格がなくても施工管理が可能です。