
航空法第49条および第56条の3により、空港周辺には「制限表面」と呼ばれる空間制限が設定されています 。この制限表面は、航空機が安全に離着陸するために必要な空域を確保する目的で設けられており、建物・避雷針・アンテナ・看板・電柱等の恒常物件のほか、工事用クレーンやドローン・ラジコン等の仮設物件も対象となります 。
参考)https://tokyo.zennichi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/b109ff6d83f0b507cf2e3e88cd398b0e.pdf
制限表面は主に3つの種類に分類されます。進入表面は着陸帯の短辺に接続し、水平面に対し上方へ50分の1の勾配を有する平面です 。転移表面は滑走路や着陸帯の側辺から外方へ水平距離45メートル、上方へ7分の1の勾配で設定され、水平表面は空港を中心とした一定の高度で設定される平面状の制限です 。
参考)https://tokyo.zennichi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/10/takasaseigen.pdf
クレーン等の仮設物件であっても、これらの制限表面を超える高さでの設置は航空法により禁止されており、制限表面に近接する場合でも航空機の運航への影響検証が必要となる場合があります 。
参考)https://www.city.matsue.lg.jp/soshikikarasagasu/toshiseibibu_kenchikusinsaka/kenchiku/kijunhou/3/16562.html
航空法第51条に基づき、一定の高さを超えるクレーンには航空障害灯の設置が義務付けられています 。低光度航空障害灯は高さ60m以上150m未満の物件に設置され、光の強さは10cd、32cd、100cdなどの明るさがあり、通常は明滅しません 。建設用のクレーンやタワークレーンに多く設置されているのがこのタイプです。
参考)https://www.cab.mlit.go.jp/tcab/pdf/oblobm20221122.pdf
中光度航空障害灯は高さ150m以上の物件に設置され、光の強さは1600cdで明滅します 。210m以上の高さの建物には、最上部と最上部より105m下に設置する必要があります。航空障害灯の設置基準には、60m以上の物件、進入表面・転移表面または水平表面に6m以内となる物件、航空機の航行の安全を著しく害するおそれがあるものが含まれます 。
参考)https://ace-g.com/kokushogaito/
クライミングクレーンなどの仮設物件については、設置場所周囲の状況により例外規定があるため、必ず事前に航空局への相談が必要です 。昼間障害標識として、ジブを先端から黄赤と白の順に交互に帯状に7等分に塗色する規定もあります 。
参考)https://www.sangyo-leasing.co.jp/rental/reference/pdf/009.pdf
クレーンの設置工事や工事用クレーンの使用を行う場合、事前にインターネット上の高さ制限回答システムにより制限表面を突出していないか確認する必要があります 。各空港周辺では専用の確認システムが設置されており、羽田空港では「羽田空港高さ制限回答システム」、八尾空港では「八尾空港高さ制限回答システム」などが利用可能です 。
参考)https://www.city.kashiwara.lg.jp/docs/2014063000127/
確認作業には条件によって10日間程度要する場合があるため、工事計画時には時間的余裕を持って問い合わせることが重要です 。TVアンテナ・看板・電線・電信柱、上空に浮揚するアドバルーンや無人航空機(ドローン・ラジコン機等)も制限対象に含まれます 。
参考)https://www.takamatsu-airport.com/environment/regulation/index.php
制限表面の種類が進入表面、転移表面または水平表面となっている区域、もしくはそれらの制限表面に近接している区域において物件等の設置を予定する場合は、高さに関する詳細説明を受けるため、各空港事務所への連絡が必要です 。
制限表面を超える高さの物件を設置・植栽・留置した場合、所有者は除去を求められ、航空法第150条により50万円以下の罰金に処せられることがあります 。この罰則は恒常物件だけでなく、工事用クレーンなどの仮設物件にも適用されるため、一時的な設置であっても十分な注意が必要です。
航空法違反が確認された場合、最大50万円の罰金または逮捕される可能性があると法律専門家は警告しています 。近年では東京タワー上空での無許可ドローン飛行事件のように、外国人による航空法違反事例も発生しており、国際的なルールの認知と理解の必要性が浮き彫りになっています 。
参考)https://note.com/skyfight/n/nab5a636796a3
違反行為に対する処罰は、単なる罰金だけでなく自費での除去命令も含まれるため、経済的負担も大きくなります 。建設業者やクレーン運用者は、法的リスクを回避するため、事前の十分な確認と適切な手続きを行うことが不可欠です。
参考)https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kouku/0000005875.html
タワークレーンは建設現場において高層ビルの建設で最も高いところで活躍する重要な機械ですが、航空法上特別な注意が必要です 。ブーム先端高さが60m以上となる場合は、航空法の規定に基づき必要な届出を行う必要があります 。特にクライミングクレーンは建物の進行に合わせて段階的に上昇するため、その都度高さ制限の確認が必要となります 。
参考)https://cranenet.or.jp/susume/susume04_11.html
タワークレーンのアンカーボルトの締結は、クレーン全体の安定性・安全性を左右する重要な工程の一つです 。高さが数十メートルから100メートルに及ぶタワークレーンは、吊荷や風による大きなモーメント(回転力)を受けるため、基礎部分の確実な固定が転倒防止の観点からも重要です。
参考)https://liongun.jp/tower-crane-assembly-process/
クライミング方式では、建物の構造に合わせてクレーンを段階的に上昇させるため、各段階での航空法適合性の確認が求められます 。建設業界では、これらの法的要件を満たしながら効率的な工事を進めるため、専門的な知識と綿密な計画立案が不可欠となっています。