
高齢化社会・高齢社会・超高齢社会の区分は、国際的な基準に基づいて設定されており、それぞれ明確な違いがあります。
高齢化社会とは、65歳以上の人口が全人口に占める割合(高齢化率)が7%以上14%未満の状態を指します。この基準は1956年の国連の報告書において、当時の欧米先進国の水準を基に7%以上を「高齢化した(aged)」人口と呼んでいたことに由来します。
日本では1970年に高齢化率7.1%を記録し、正式に高齢化社会へと突入しました。当時の人口1億467万人に対し、65歳以上の高齢者は740万人程度で、15~64歳の現役世代9.8人で高齢者1人を支える計算でした。
高齢社会は、高齢化率が14%以上21%未満の状態を指し、高齢化社会の基準である7%をちょうど2倍にした数字が基準となっています。この段階では、社会保障制度や労働力不足などの課題がより深刻化します。
日本では1994年(一部資料では1995年)に高齢化率14.1%(14.6%)を超え、高齢社会に移行しました。1995年時点での人口は1億2,557万人で、65歳以上が1,826万人、15~64歳の現役世代4.8人で高齢者1人を支える構造に変化していました。
興味深い点は、日本が高齢化社会から高齢社会へと移行するのにかかった期間がわずか24~25年だったことです。これは世界的に見ても極めて急速なペースで、欧米諸国が数十年から100年以上かけて達成した変化を、日本は4分の1の期間で経験したことになります。
超高齢社会は高齢化率が21%を超えた状態で、高齢化社会の基準である7%を3倍にした数字となります。日本は2007年に高齢化率21.5%に到達し、世界でも数少ない超高齢社会の仲間入りを果たしました。
現在の日本の状況はさらに深刻で、2020年時点で高齢化率は28.8%に達しています。人口1億2,571万人に対し、65歳以上の高齢者は3,619万人で、現役世代2.1人で高齢者1人を支える計算です。
この急速な高齢化の背景には複数の要因があります。
日本の高齢化の特徴は、その圧倒的なスピードにあります。WHO(世界保健機関)の基準によると、高齢化率7%から14%への倍増に要する期間を「倍化年数」と呼び、これが国際比較の重要な指標となっています。
主要国の倍化年数を比較すると。
この数値は、日本の高齢化が歴史上類を見ない急激な変化であることを示しています。さらに、高齢社会から超高齢社会への移行も13年という短期間で達成し、2050年には高齢化率が約35%に達すると予測されています。
高齢化の進行段階は、不動産市場に段階的かつ構造的な変化をもたらします。各段階での市場への影響を詳しく分析してみましょう。
高齢化社会段階(7-14%)での変化。
高齢社会段階(14-21%)での変化。
超高齢社会段階(21%以上)での変化。
現在の超高齢社会では、現役世代2.1人で高齢者1人を支えるという人口構造が、住宅ローン市場や投資用不動産市場にも大きな影響を与えています。若年層の減少により新規住宅取得層が縮小する一方、相続による不動産の大量供給が予想されるため、不動産業界は根本的な事業戦略の見直しが求められています。
特に注目すべきは、2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が控えており、これにより医療・介護需要の急増と同時に、不動産の相続・売却案件が急増すると予測されています。