公職選挙法でやってはいけないことを簡単に解説

公職選挙法でやってはいけないことを簡単に解説

公職選挙法違反になりうる行為について、買収や戸別訪問、事前運動などの禁止事項をわかりやすく紹介します。違反した場合の罰則や連座制についても解説しているので参考にしてください。あなたは適切な選挙活動を行えますか?

公職選挙法でやってはいけないこと

公職選挙法の主な禁止事項
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買収・利益誘導の禁止

金銭や物品提供による票の獲得は最も重い違反行為

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戸別訪問の禁止

投票依頼目的で住居や会社を訪問することは全面禁止

事前運動の禁止

告示・公示前の選挙運動は一切禁止されている

公職選挙法の買収行為と処罰内容

公職選挙法第221条で定められている買収罪は、選挙違反の中で最も悪質な犯罪とされています 。買収罪は、当選を得る目的で金銭や物品を渡したり、食事や酒などをごちそうすることで成立しますが、これらの申し込みや約束をしただけでも成立します 。買収罪は、買収をした人だけでなく、買収された人も処罰の対象となる点が特徴的です 。
参考)https://www.vill.chihayaakasaka.osaka.jp/kakuka/senkyo/9015.html

 

処罰内容は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」と定められており、これは選挙運動期間中かどうかを問わず適用されます 。実際の事例では、衆議院議員総選挙において立候補予定者が選挙運動員に現金40万円を供与し、さらに他の運動員3名にも現金15万円から30万円を供与した事案で、合計100万円の買収により懲役2年(執行猶予5年)の判決が下されています 。
参考)https://yamada-keiji.com/jian/jiken02/

 

買収に該当する行為には、金銭の直接供与以外にも「利害関係誘導」があります 。これは特定の候補者の当選を得る目的で、選挙人に対してその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導することを指します 。この場合も同様に3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金が科せられます 。
参考)https://www.city.ichikawa.lg.jp/ele01/0000414443.html

 

公職選挙法の戸別訪問禁止規定

戸別訪問は公職選挙法第138条により全面的に禁止されている行為です 。この規定により、何人も選挙に関して、投票を得る目的、投票を得させる目的又は得させない目的で、計画的に連続して戸別に選挙人の居宅を訪問することができません 。対象となるのは家だけでなく、会社や工場、事務所なども含まれ、選挙での投票依頼をすることはすべて戸別訪問となります 。
参考)https://vonnector.jp/bible/290/

 

一般的に信じられている「敷居をまたがなければ違反にならない」「家を一つ飛ばして訪問すれば違反にならない」といった都市伝説は完全に間違いです 。上記の目的で訪問すれば、すべて違反になるため注意が必要です 。また、選挙運動のために演説会や演説があることを戸別に告知することや、特定の候補者や政党の名前を言い歩くことなども「戸別訪問の類似行為」として禁止されています 。
戸別訪問は、買収に次いで検挙数の多い選挙犯罪とされています 。この違反行為は選挙運動期間中及び期間外も禁止されており 、違反した場合は懲役、禁錮、罰金などの刑罰が適用されます 。誰であっても、投票してもらうことを目的に、会社、住居及び商店などを戸別に訪問することはできず、候補者や選挙事務所関係者だけでなく有権者にも適用される規定です 。
参考)https://www.town.tone.ibaraki.jp/election-committee/chuuijikou/page004548.html

 

公職選挙法の事前運動禁止と処罰

公職選挙法では、立候補届出前の一切の選挙運動(事前運動)を禁止しています 。事前運動として禁止されているのは「立候補届出前の一切の選挙運動」で、立候補届出後の選挙運動期間中であっても禁止される買収や戸別訪問のような違反行為はもちろん、電話による選挙運動など選挙運動期間中にはできる行為であっても、立候補届出前の選挙運動は禁止されています 。
参考)https://www.town.meiwa.mie.jp/main/soshiki/soumu/soumuk/election/1535510437268.html

 

具体的な事前運動の事例として、公示前に政治活動用自動車で「参院選には、●●党の公認候補となる■■■■です。参院選では、投票用紙に『■■■■』と書いて投票していただくと、私が当選することになっています。私を国政に復帰させてください」と拡声機を使って投票を依頼した行為が挙げられます 。また、告示前に立候補予定者が懇親会の席上で「4月には、大事な選挙があります。私も出るつもりです。ぜひ私に入れていただきたい」などと発言し、投票を依頼することも事前運動に該当します 。
参考)https://www.kowalaw.jp/letter/%E9%81%B8%E6%8C%99%E3%81%AE%E3%80%8C%E4%BA%8B%E5%89%8D%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AE%E7%A6%81%E6%AD%A2%E3%80%8D%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%81%E3%81%8D%E3%81%A1%E3%82%93%E3%81%A8%E7%90%86.html

 

最近の事例では、ある衆議院議員が選挙告示前に、投票を呼びかける選挙はがきを自身の出身大学の卒業生らに送ったことで、公職選挙法違反の罪に問われ、一審では罰金30万円の有罪判決が下されています 。事前運動は政治活動との境界線が曖昧な場合があるため、個々のケースで慎重な判断が求められます 。
参考)https://senyou.the-issues.jp/blog/senkyo-kokuji-izen-katsudo-ihou-jizen-kodo-guide

 

公職選挙法のその他の重要な禁止事項

公職選挙法では、買収、戸別訪問、事前運動以外にも多数の禁止行為が定められています 。まず、飲食物の提供については、選挙運動に関して湯茶及び通常用いられる程度の菓子、選挙運動に従事する者に対する一定の制限内での弁当以外の飲食物を提供することが禁止されています 。この違反には2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金が科せられます 。
参考)https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e075/qa/kusejoho/senkyo/senkyo022.html

 

署名運動も重要な禁止事項の一つです 。選挙に関して、特定の人に投票するように、又は投票しないようにすることを目的として、有権者に対して署名運動をすることは禁止されています 。気勢を張る行為として、選挙運動のため自動車・自転車をつらねたり、隊列を組んで往来するなど気勢を張ることも禁止されており、ラッパやサイレン、太鼓などを鳴らしたり、花火などを用いたりすることも含まれます 。
人気投票の公表についても注意が必要です 。公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表することは禁止されており 、これらの行為は候補者や選挙事務所関係者だけでなく、すべての有権者に適用される規定です 。

公職選挙法違反の処罰と連座制の仕組み

公職選挙法違反を犯すと、罰金・禁錮・懲役などの刑罰が科せられるだけでなく、選挙権の停止などの措置もとられます 。選挙犯罪で刑罰を科せられた者は、一定の期間、選挙権・被選挙権が停止され、停止期間中は投票することも立候補することもできなくなります 。
参考)https://www.city.tomigusuku.lg.jp/soshiki/11/gyomuannai/2/4/754.html

 

連座制は公職選挙法の中でも特に厳しい制度です 。これは、候補者本人が選挙違反に関わっていなくても、運動の責任者や秘書、親族らが買収などの罪を犯して一定以上の刑が確定した場合に、候補者本人の当選を無効とし、その選挙については同一の選挙区から5年間立候補ができなくなる制度です 。
参考)https://www.nhk.or.jp/politics/kotoba/52431.html

 

連座制の対象となるのは、総括主宰者、地域主宰者、候補者の親族に加えて、「秘書」及び「組織的選挙運動管理者等」です 。平成6年の公職選挙法改正により、連座制の適用範囲・要件が拡張・緩和され、より厳格に運用されるようになりました 。当選無効及び立候補制限という連座制適用の効果は、一定の場合を除き、検察官が候補者等を被告として提起する行政訴訟を経て発生します 。
参考)https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/51/nfm/n_51_2_1_3_4_2.html