
選挙権年齢の18歳への引き下げは、2016年6月19日に施行されました 。初の適用となったのは、同年7月10日に実施された第24回参議院議員通常選挙からです 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/18%E6%AD%B3%E9%81%B8%E6%8C%99%E6%A8%A9
この改正により、日本で選挙権年齢が拡大されるのは、1945年(昭和20年)に25歳以上から20歳以上に引き下げられて以来、実に71年ぶりの大きな変革となりました 。選挙権の対象者は約240万人増加し、全国の18歳・19歳の若者が新たに有権者として政治参加の権利を獲得しました 。
参考)https://www.jimin.jp/18voice/vol1/qa/03.html
施行に向けては、法改正成立から1年間の準備期間が設けられ、各都道府県の選挙管理委員会や教育機関において、新有権者に対する啓発活動や主権者教育の充実が図られました 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaes/32/2/32_56/_pdf/-char/ja
日本の選挙権年齢引き下げは、世界的な潮流に合わせる形で実現しました 。国立国会図書館の2014年調査によると、世界191の国・地域のうち約9割が下院選挙権年齢を18歳以上と定めています 。
参考)https://www.city.kochi.kochi.jp/soshiki/99/18saisenkyoken.html
アメリカでは、第二次世界大戦後のベビーブーム世代の登場と学生運動の高まり、さらにベトナム戦争で徴兵されながら選挙権を持たない若者の存在が引き下げのきっかけとなりました 。ドイツでも学生運動や兵役義務と選挙権の不整合が問題視され、フランスでは若年層への政治参加機会の付与が重視されました 。
参考)https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9578222_po_077907.pdf?contentNo=
日本においても、2007年の憲法改正国民投票法制定時に、国民投票権年齢を18歳以上と規定したことが大きな転機となりました 。野党第一党であった民主党の強い意向により、附則で公職選挙法の選挙権年齢引き下げ検討が盛り込まれ、約8年後の実現につながりました。
18歳選挙権導入初回の2016年参議院選挙では、18歳の投票率が51.28%、19歳が42.30%となりました 。20代の投票率が30%台であったことを考慮すると、新有権者の政治参加は一定の成果を上げたとされています。
参考)https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/1287.html
しかし、翌年2017年の衆議院選挙では、18歳が47.87%、19歳が33.25%と大幅に低下しました 。特に注目されるのは、参議院選挙時に18歳だった層の多くが含まれる19歳の投票率が、わずか1年余りで51%から33%へと激減した点です。
この現象について教育関係者は、「参議院選挙時の教育効果やブームが継続しなかった」と分析しています 。選挙への関心は高まったものの、継続的な政治参加意識の定着には課題が残る結果となりました 。
参考)https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/ju/2021_0924ju_kyoin_txt/
2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことで、選挙権年齢と成人年齢の整合性が図られました 。これにより、法的責任能力と政治参加権が同一の年齢で付与される制度が確立されました。
参考)https://www.moj.go.jp/KANBOU/KOHOSHI/no62/1.html
民法の成年年齢引き下げの背景には、憲法改正国民投票の投票権年齢や公職選挙法の選挙権年齢が18歳以上とされたことがあります 。諸外国でも選挙権と成人年齢を18歳に統一する国が多く、日本も国際標準に合わせた制度設計となりました。
ただし、選挙違反に関する少年法の適用については特別な規定が設けられ、重大な選挙違反については成人同様の刑事処分が可能となる逆送規定が整備されています 。これにより、権利の拡大と同時に責任の明確化も図られました。
18歳選挙権の導入に伴い、学校現場では主権者教育の充実が急務となりました 。文部科学省は「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」の通知を発出し、具体的かつ実践的な指導の重要性を示しました 。
参考)https://www.mext.go.jp/content/20210212-mxt_kyoiku02-000012745_2.pdf
オーストリアでは16歳選挙権導入時に、全学校で14歳までに政治教育を必修化することを条件としました 。各党から政治家を招いた対話集会や政策議論を積極的に実施し、政治的中立性を保ちながら若者の政治参加意識を高める教育が行われています。
参考)https://www.dlri.co.jp/report/ld/512946.html
企業においても選挙権行使を支援する動きが見られます 。新経済連盟では期日前投票や不在者投票がしやすい環境整備を会員企業に呼びかけ、労働基準法第7条の選挙権行使保障の趣旨に基づく取り組みを推進しています。産業界と教育界の連携により、社会全体で若者の政治参加を支える体制作りが進められています。
参考)https://jane.or.jp/proposal/pressrelease/3879.html/