
2025年4月から施行される育児・介護休業法の改正では、子の看護等休暇の対象が小学校3年生修了まで拡大されます。これまで小学校就学前までだった制限が撤廃され、感染症による学級閉鎖や入園式・卒園式への参加も取得事由に追加されます。
企業にとって最も重要な変更点は、テレワークの導入義務化です。3歳未満の子を養育する労働者に対してテレワーク選択措置を講じることが努力義務となり、短時間勤務制度の代替措置としてもテレワークが認められます。
所定外労働の制限対象も拡大され、これまでの3歳未満から小学校就学前まで対象範囲が広がります。これにより、企業は残業命令を出す際により慎重な判断が求められるようになります。
介護分野では、介護離職防止のための雇用環境整備が義務化されます。企業は以下の措置のうち、いずれか一つを実施する必要があります:
不動産業界では特に、現場作業が多い管理業務や営業職での対応が課題となります。テレワーク環境の整備費用や人員配置の見直しが必要になる可能性があります。
2025年4月1日から、障害者雇用促進法における除外率制度の大幅な見直しが実施されます。現在の除外率から一律10ポイント引き下げられ、現行の除外率が10%以下の業種については除外率制度の対象外となります。
除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難と認められる業種について、雇用労働者数を計算する際に除外率相当の労働者数の控除を認める制度です。この改正により、これまで障害者雇用義務が軽減されていた企業の負担が大幅に増加します。
不動産業界では、建設業関連の企業が特に影響を受ける可能性があります。建設業の除外率が引き下げられることで、これまで以上に障害者雇用への取り組みが求められます。
企業が取るべき対応策。
法定雇用率未達成の場合は、障害者雇用納付金の支払い義務が生じます。中小企業でも段階的に適用範囲が拡大される予定のため、早期の準備が重要です。
2025年5月に成立した労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた従業員50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。施行は法律の公布から3年以内とされており、遅くとも2028年5月までに全企業が対応を求められます。
ストレスチェックの実施要件は以下の通りです:
精神障害による労災認定件数の増加を背景とした改正で、メンタルヘルス対策の強化が目的です。小規模事業場でも専門的な実施体制の構築が必要となり、外部委託や産業医との連携が重要になります。
不動産業界では、営業ノルマや顧客対応によるストレスが多い職場環境のため、適切な実施体制の整備が急務です。実施結果に基づく職場環境改善も企業の責務となるため、単なる形式的な実施では不十分です。
2025年の労働基準法改正では、36協定の透明化と過半数代表の選出方法が厳格化される予定です。現在検討されている主な変更点は以下の通りです:
36協定の見直し内容。
勤務間インターバル制度の義務化も検討されており、従業員の健康確保と過重労働防止が目的です。現在は努力義務とされている制度が、段階的に義務化される可能性があります。
不動産業界では、繁忙期における長時間労働が常態化している企業が多く、これらの改正は大きな影響を与えます。特に以下の対応が必要です。
13日連続勤務の禁止についても議論されており、シフト制勤務や24時間対応が求められる管理業務での対応策検討が必要です。
労働基準法改正において、副業・兼業に関する労働時間の通算管理が注目されています。複数の勤務先での労働時間を合算して、割増賃金の支払い義務を判断する仕組みの導入が検討されています。
副業における労働時間管理の課題。
不動産業界では、営業職や管理職の副業が増加傾向にあり、適切な労働時間管理が重要な課題となっています。企業は以下の対応を検討する必要があります。
労働条件明示事項の追加も予定されており、雇用契約書や労働条件通知書の記載事項が拡大されます。特に以下の項目が追加される見込みです。
これらの改正により、企業の労務管理負担は増加しますが、適切な対応により労働者の権利保護と企業の法令遵守を両立できます。早期の準備と専門家との連携が成功の鍵となります。