
2025年4月から実施された障害者雇用促進法の改正で、最も大きな変化の一つが除外率制度の見直しです 。除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難とされる特定業種において、法定雇用率の軽減措置を認める制度で、2002年に廃止が決定されたものの、経過措置として段階的に引き下げが行われています 。
参考)https://www.prostaffcloud.jp/knowledge/241211hr-management_article.html
今回の改正では、対象となる全業種において除外率が一律10ポイント引き下げられました。具体的には以下のような変更となります。
この変更により、従来除外されていた労働者数が減少し、実質的に障害者雇用義務人数が増加することになります 。例えば従業員300人の建設業企業の場合、改正前は6人の雇用義務だったものが、改正後は約7人の雇用義務となり、1名分の雇用義務が増加します。
参考)https://www.ieyasu.co/media/in-april-2025-employment-exclusion-rate-for-disabled-people-to-be-reduced-by-10-percentage-points-across-the-board/
企業にとって重要なのは、この変更が2010年7月以来15年ぶりの大幅な引き下げであることです 。今後も段階的な引き下げが予想されるため、長期的な雇用戦略の見直しが必要となります。
2025年4月の障害者雇用促進法改正では、短時間労働者の算定方法にも重要な変更が加えられました 。従来は週20時間以上の勤務者のみが雇用率算定の対象でしたが、新たに週10時間以上20時間未満で働く特定の障害者も算定対象に含まれるようになりました。
参考)https://media.thankslab.biz/column/count-how/
対象となるのは以下の障害者です。
この変更は、短時間勤務を希望する障害者の雇用機会拡大を目的としています 。特に精神障害者の場合、週20~30時間の短時間勤務で最も高い職場定着率を示すというデータもあり、段階的な就労支援の観点からも意義深い改正といえます 。
参考)https://biz.kaien-lab.com/know-how/law_amendments/
また、精神障害者の短時間労働者に関しては特例措置も拡充されています。2025年4月からは、雇用開始日や手帳取得日に関係なく、週20時間以上30時間未満勤務の精神障害者を常時1.0人としてカウントできるようになりました 。
企業は多様な働き方に対応できる職務設計と環境整備が求められ、より柔軟な雇用戦略の構築が重要となります。
障害者雇用促進法の改正により、法定雇用率の段階的引き上げが継続されています 。現在の法定雇用率は2024年4月から2.5%に引き上げられており、2026年7月にはさらに2.7%まで引き上げられる予定です。
参考)https://www.corner-inc.co.jp/media/c0355/
具体的なスケジュールは以下の通りです。
国・地方公共団体においては、2026年から3.0%、教育委員会は2.9%へと、より高い目標値が設定されています 。
参考)https://persol-diverse.co.jp/lab/news/news035/
この段階的引き上げにより、対象企業の範囲も拡大されます。2026年7月以降は、従業員37.5人以上の企業が障害者雇用義務の対象となり、より多くの中小企業も法的義務を負うことになります 。
参考)https://www.otasukeman.jp/column/disabled-persons-employment
企業は2年後の変更を見据えた計画的な対応が必要で、現在から2.7%達成を目標とした採用・育成戦略の策定が推奨されます。法定雇用率の達成が困難な場合は障害者雇用納付金の負担も発生するため、早期の対策が重要です 。
参考)https://www.jsh-japan.jp/cordiale-farm/column/4304/
障害者雇用促進法では、企業に対して障害者の雇用促進とともに、差別禁止と合理的配慮の提供を義務付けています 。これらの義務は障害者手帳の有無に関係なく、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)を持つ全ての人に適用されます。
参考)https://mscompass.ms-ins.com/business-news/disability-consideration/
差別禁止の具体的内容として、以下の行為が禁止されています。
募集・採用段階での対応
雇用管理における対応
合理的配慮については、障害者が職務を遂行するために必要な措置を、過度の負担にならない範囲で提供することが求められます 。具体例として、車いす利用者のための段差解消、視覚障害者のための読み上げソフト導入、聴覚障害者のための筆談対応などが挙げられます。
2024年4月からは改正障害者差別解消法により、全事業者に合理的配慮の提供が義務化されており、障害者雇用における企業責任はさらに重要性を増しています 。
参考)https://greenlinklab.jp/column/291
障害者雇用促進法に定められた義務に違反した場合、企業には段階的なペナルティが課せられます 。最も一般的なのが障害者雇用納付金制度で、法定雇用率を達成できない企業は、不足人数1人につき月額5万円の納付金を支払わなければなりません。
参考)https://persol-diverse.co.jp/lab/fundamental/money/money003/
障害者雇用納付金の対象となるのは、常用労働者数100人を超える事業主です 。納付金を滞納した場合は以下の処分が科せられます:
申告義務違反の場合
納付義務違反の場合
さらに重大な違反については、30万円以下の罰金が科される場合もあります 。具体的には以下の行為が対象となります:
法的制裁だけでなく、企業名の公表によるレピュテーションリスクも深刻な影響をもたらします。ハローワークから改善指導を受けても対応しない場合、企業名が公表され、社会的信用の失墜につながる可能性があります 。
企業は法令遵守の観点から、定期的な雇用状況の監査と適切な報告体制の構築が不可欠です。また、障害者雇用に関する相談窓口の設置や、社内研修の実施により、差別防止と合理的配慮の徹底を図ることが重要です 。