
マンションの理事会とは、マンション管理組合の構成員(区分所有者)から選出された代表者(理事会役員)で結成される組織で、マンションの維持管理、住民からの相談事項にかかわる業務を取り仕切る意思決定機関です。
管理組合は区分所有者全員が加入する組織であり、数百人規模になることも珍しくありません。このような大規模な組織で効率的な意思決定を行うため、代表者を選出して理事会を構成するのが一般的です。
理事会は総会で選出された複数の理事で構成された合議制の業務執行機関として機能し、管理組合の総会決議事項および管理規約に定められたことを実行します。
標準管理規約第51条では「理事会は、理事をもって構成する」と明記されており、理事会の議長は理事長が務めることが定められています。
理事会役員の選出は、年1回開催される通常総会で行われるのが一般的です。選出方法は各マンションの管理規約によって定められており、多くの場合は持ち回り制が採用されています。
国土交通省が策定しているマンション標準管理規約の関係コメントでは、理事の人数について10~15戸に付き1人選出、合計3~20人程度と定められています。
役員の任期は通常1~2年で設定されており、継続性を保つために一部の役員は任期をずらして選出される場合もあります。また、管理組合に入ることは法的に定められていますが、理事会役員には法的強制力はないという点も重要です。
興味深いことに、理事会役員の選出において、最近では外部の専門家を活用する「第三者管理方式」を導入するマンションも増えています。これは従来の区分所有者による輪番制とは異なる新しい管理手法として注目されています。
理事会の主要な業務は多岐にわたります。収支の予算や事業計画の案の作成、長期修繕計画案の策定などが代表的な業務です。
日常的な業務としては以下のような内容があります。
理事会の権限範囲については、管理規約で明確に定められています。一般的に、一定金額以下の支出については理事会の決議で実行可能ですが、大規模修繕や管理規約の変更などは総会での承認が必要です。
管理会社が入っている場合、日常業務の多くは管理会社に委託されますが、最終的な意思決定は理事会が行います。管理会社は業務の報告とアドバイスを行いますが、勝手に修繕計画を立てたり業者に発注したりすることはできません。
多くのマンションでは月に1回~数か月に1回のペースで理事会を開催し、情報共有、問題点の確認などを行います。開催頻度は管理組合によって異なり、マンションの規模や管理状況によって調整されます。
標準管理規約第53条では、理事会の開催要件として「理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する」と定められています。
例えば、理事が10名いる場合、5名の出席があれば理事会の開催が成立し、そのうち3名が賛成すれば議事は可決されます。これは意外に少ない人数で重要な決定が行われることを意味します。
理事の代理出席については、規約に明文の規定がない場合は適当でないとされていますが、「理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一親等の親族に限り、代理出席を認める」旨を定める規約は有効とされています。
最近では、IT技術の発達により、オンライン会議システムを活用した理事会開催も増えています。これにより、物理的な制約を受けずに効率的な運営が可能になっています。
現代のマンション理事会運営では、従来にはなかった新しい課題が浮上しています。高齢化社会の進展により、理事会役員の高齢化が進み、IT技術への対応が困難になるケースが増えています。
また、共働き世帯の増加により、平日夜間や休日の理事会開催が必要になり、参加者の確保が困難になっています。このような状況下で、理事会の形骸化や管理会社への過度な依存が問題となっています。
解決策として注目されているのが以下の取り組みです。
特に興味深いのは、一部のマンションで導入されている「理事会サポートシステム」です。これは専門知識を持つ外部アドバイザーが理事会に参加し、技術的な判断や法的な解釈について助言を行うシステムです。
さらに、最近では「デジタル理事会」という概念も登場しており、議事録の自動作成や決議の電子化など、従来の紙ベースの運営から脱却する動きも見られます。
これらの新しい取り組みにより、理事会運営の効率化と透明性の向上が期待されており、マンション管理の質的向上につながると考えられています。
管理組合運営の効率化に関する詳細な情報
国土交通省マンション管理適正化推進室