
レントロールとは、「賃貸条件一覧表」を指す不動産業界の専門用語です。英語の「rent roll」をカタカナ表記したもので、レント(rent)は賃借料、ロール(roll)は目録という意味があり、直訳すれば「賃料台帳」となります。
📋 レントロールの基本特徴
レントロールは主にマルチテナントビルや一棟賃貸マンション、アパートのような複数の借主に貸している賃貸物件で作成されます。1人しか借主のいない戸建て賃貸や区分マンションでは作成されないことが一般的です。
不動産の賃貸借条件を一覧表にしたもので、部屋・賃貸スペース別に家賃・敷金等、契約日・契約期間等の契約条件が記されている他、賃借人の属性が記載されていることも多いのが特徴です。
レントロールの作成は、物件管理を委託されている管理会社が月に一回程度の頻度で作成し、物件オーナーに提出することが一般的です。物件オーナーにとって物件状況の確認・収益性向上のためにレントロールは重要な報告資料となります。
📝 レントロールの必須項目一覧
項目 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
間取・住戸プラン | 1K、2DK等の間取情報 | 物件構成の把握 |
賃料 | 各住戸の月額賃料 | 収入状況の確認 |
面積(㎡・坪) | 住戸の専有面積 | 単価計算の基準 |
㎡単価・坪単価 | 賃料÷面積で算出 | 相場との比較 |
契約開始日 | 入居開始時期 | 入居期間の把握 |
解約日 | 退去予定・実績日 | 空室期間の算出 |
敷金・礼金 | 初期費用の詳細 | 契約条件の確認 |
契約者名・属性 | 個人・法人の区別 | リスク分析 |
レントロールの作成において、賃料合計・平均㎡単価(坪単価)・平均取得礼金(賃料何ヶ月分)・戸数稼働率といった集計項目も重要です。これらの数値により、物件全体の稼働状況を数値で把握できます。
効率的な作成方法のポイント
収益物件の売買において、レントロールは投資判断の重要な材料となります。複数の入居者が入っている収益物件の購入検討をする際に参考資料として使うのが一般的で、物件の収益性を全ての部屋・区画の賃料などから検討する必要があるため、レントロールを見ることがほとんど必須の行為と言えます。
💡 売買時の重要チェックポイント
レントロールを見て、「この物件の収益性は大丈夫か」「何か変なところはないか」と、物件収益の安定性を確認していきます。レントロールをきちんと見ることができれば、問題のある物件を避けられる確率は高まります。
投資判断における活用方法
解約が出た場合の募集賃料設定では、レントロールを参考にして最適な賃料を決めることができます。例えば解約が出た住戸が10万円で貸していた場合、類似間取の直近の契約賃料が12万円で、かつ空室期間も平均的であれば、新規募集賃料を12万円に値上げすることが妥当と判断できます。
レントロールによる物件分析は、単なる現状把握にとどまらず、将来的な収益推移予測にも活用できる重要な手法です。各項目の記載内容を基に、物件の現況と傾向を把握し、投資戦略の立案に役立てることができます。
🔍 高度な分析テクニック
間取り・住戸プランごとの強弱分析
ある間取り・プランのみ空室期間が長かったり、平均賃料が低かったりするケースがあります。レントロールによりそれを明確にすることで、オーナーに納得いただいた上で、適切な賃料での募集を行うことができます。
入居者属性の詳細分析
レントロールにより入居者を一覧化することで、物件に適切な入居者属性を把握することができます。20代女性が占めているとしたら、今後の募集についてもそちらをターゲットに案内するよう仲介会社に協力を求めることができます。
リスク要因の早期発見
ある法人が複数の住戸を一括で借りていたり、物件近くの学校の生徒が複数契約しているケースもあります。その場合、現状としては安定的な収益が見込める代わりに同時に複数解約が出る恐れがあります。
賃料推移の傾向分析
レントロールには賃貸借契約の締結時期も記載されており、この情報があることで収益物件の条件推移がわかります。収益物件は価値や利回りが固定されておらず、外部要因によって賃料相場などが大きく変化するため、過去の条件を参考に推移傾向を把握することが重要です。
管理会社の移管時におけるレントロール活用は、業界ではあまり注目されていない重要な視点です。今まで他社が管理していた物件について、様々な事情によりオーナーから移管を希望されて管理することになるケースでの戦略的活用方法を解説します。
🏢 移管時の特殊な活用シーン
現状分析と改善提案
管理会社移管の場合、「現状にオーナーは不満を持っている」ことになります。それがサービス面であれば、ヒアリングした上で改善すれば良いのですが、賃料である場合、現状が当該物件において適切なのか、安いのか判断が必要です。
競合物件との比較分析
レントロールを使用し同一エリア・類似グレードの物件と比較することで、安いのであれば値上げして募集し、適切なのであれば、レントロールの比較を根拠にオーナーに説明する必要があります。
新規取得物件の戦略立案
オーナーが既築の物件を購入し、賃貸に出そうと思っている場合、居抜き(入居者が入居したまま)の場合または全て空室のケースがあります。どちらにしろ空室については新たに賃料を設定する必要があり、その際は当該物件の過去もしくは現況のレントロールが基準になります。
デジタル化による効率化戦略
従来の手作業によるレントロール作成・送付は時間がかかり、ミスも発生しやすいという課題があります。エクセルテンプレートの活用により、事前にフォーマットを作成し、項目を統一すれば入力の手間を削減できます。また、関数を活用すれば、賃料の合計や入居率の計算を自動化でき、手作業によるミスを防げます。
長期的な資産価値向上戦略
レントロールは単に現状を把握するだけでなく、将来的な資産価値向上のための戦略立案にも活用できます。入居者の契約更新パターンや賃料改定の実績を分析することで、最適な賃料設定タイミングや設備投資の優先順位を決定できます。
不動産管理会社向けのレントロール雛形について詳しい情報
https://f-mikata.jp/kanri-rentroll-sakusei/
収益物件売買におけるレントロール活用の実践的なノウハウ
https://www.musashi-corporation.com/wealthhack/rent-roll
レントロールは不動産投資における重要な判断材料であり、適切な作成と分析により物件の真の価値を見極めることができます。特に管理会社移管時の戦略的活用や、デジタル化による効率化は今後ますます重要になってくるでしょう。