
リースバックは「セール&リースバック」の正式名称が示すとおり、売却(セール)と賃貸借(リース)を同時に行う取引です。具体的には、現在利用中の不動産を第三者に売却し、同時に売却した不動産を利用し続けるために買主との間で賃貸借契約を締結します。
この取引の特徴は、売買契約と賃貸借契約を同時に行うことにあります。まず売買契約により家をリースバックサービスに対応した不動産会社に売却し、売却代金として不動産会社からまとまった現金を得ることができます。
次に売却と同時に賃貸借契約も締結します。賃貸借の貸主は買主である不動産会社で、借主は売主である元所有者となります。元所有者は、貸主の不動産会社に対して家賃を払うことで、今の家にそのまま住み続けることができる仕組みです。
取引の流れは以下のステップで進行します。
リースバックにおける売却価格は、通常の不動産売却とは異なる独特な算定方法が用いられます。売却価格は利回り重視で設定されており、リースバック業者から見ると、不動産買取価格と買取後の家賃収入などをふまえて、どれだけ利益を見込めるかが査定の基準となります。
この利回りを重視する仕組みにより、一般的に売却価格は市場価格より低くなる傾向があります。また、売却価格が高かったとしても、その分家賃が高くなり、結果的に負担が増えてしまう可能性もあるため注意が必要です。
リースバック会社の収益構造を理解することが重要です。リースバック会社は賃借人が退去した後に、所有する物件を市場で売却をして利益を確保することになります。つまり、以下の要素から総合的な収益を計算して売却価格を決定しています。
リースバックで用いられる賃貸借契約は、通常の賃貸物件とは大きく異なる特徴があります。最も重要な違いは、通常の賃貸物件で使用される「普通賃貸借契約」ではなく、期間の更新を前提としない「定期賃貸借契約」がほとんどであることです。
定期賃貸借契約には契約を更新するという概念がありません。賃貸借契約期間終了後、貸主と借主との間で賃貸借条件の合意をした場合には、契約更新ではなく再契約の手続きが必要になります。
この契約形態の違いにより、賃借人がこのまま不動産を利用し続けたいと考えていても、再契約をするかどうかは貸主側の意向次第となることが普通賃貸借契約との大きな違いです。
契約期間についても特徴があります。
リースバック事業者の収益構造を理解することは、不動産従事者にとって顧客への適切なアドバイスを行う上で重要です。事業者の収益は主に以下の3つの要素から構成されています。
まず、賃貸期間中の家賃収入です。リースバック事業者は物件を購入した後、元所有者から継続的に家賃を受け取ります。この家賃は周辺相場よりも高めに設定されることが多く、事業者にとって安定した収益源となります。
次に、最終的な物件売却による利益です。賃借人が退去した後、事業者は物件を市場で売却します。この際の売却価格と当初の購入価格(リースバック価格)の差額が利益となります。
さらに、物件の価値向上による利益も見込まれます。賃貸期間中に周辺地域の不動産価格が上昇した場合、事業者はその恩恵を受けることができます。
事業者はこれらの収益要素を総合的に計算し、以下の点を考慮してリースバック価格を決定します。
リースバックを利用するためには、いくつかの重要な条件をクリアする必要があります。これらの条件は、通常の不動産売却とは異なる特殊な要件が含まれています。
最も重要な条件は安定した収入があることです。リースバックは自宅を一旦売却し、家賃を支払って住み続ける方法であるため、通常の賃貸住宅を借りる際と同様、賃貸契約を結び毎月の家賃を支払う必要があります。
ただし、正社員である必要はありません。一定の収入が見込めるようであれば、パートや派遣社員の方、年金生活の方にもご利用いただけます。具体的な審査基準は以下のとおりです。
名義人すべての同意も必須条件です。リースバックは自宅の売却であるため、自宅の名義人全員の同意が必要になります。例えば、家を兄弟3人で相続し、3分の1ずつの共有名義だった場合、兄がその家に住んでおりリースバックを希望した場合には、共有名義人である弟2人の同意・承諾が必ず必要になります。
国土交通省のガイドブックでは、リースバック利用時の注意点として以下が挙げられています。
住宅のリースバックに関するガイドブック(国土交通省発行)には、利用者保護の観点から重要な情報が記載されています。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001489269.pdf