
税金滞納による差し押さえは、国税徴収法に基づく行政処分として実行されます。民間の債権回収とは異なり、裁判所の判決を必要とせず、税務署や自治体が直接処分を行える強力な権限です。
滞納処分の流れは以下の通りです。
実際の処分までは最短1ヶ月程度ですが、財産調査などを含めると通常2~3ヶ月の期間を要します。ただし、悪質な滞納者に対してはより迅速な処分が行われる場合もあります。
給与の差し押さえ額は、一般的な借金とは全く異なる計算方法を用います。民間債権の場合は手取りの4分の1が限度ですが、税金滞納では以下の計算式で算出されます:
基本計算式:
差し押さえ額 = (手取額 - 基本控除10万円 - 扶養控除)× 20%
控除額の詳細:
実際の計算例①(単身者・手取り30万円)
実際の計算例②(配偶者・子供2人・手取り50万円)
この計算により、家族が多いほど差し押さえ額は少なくなる仕組みになっています。
預金口座の差し押さえでは、口座残高の全額が対象となります。給与のような控除制度はなく、生活費として必要な金額であっても容赦なく回収されます。
預金差し押さえの特徴:
不動産差し押さえの流れ:
不動産の場合、評価額から諸費用を差し引いた金額が実際の回収額となります。住宅ローンが残っている場合は、抵当権者への支払いが優先されるため、必ずしも全額回収できるとは限りません。
その他の差し押さえ対象財産:
ただし、生活に必要最小限の家具や衣類、仕事道具などは差し押さえ禁止財産として保護されます。
差し押さえを回避するための最も効果的な方法は、早期の相談と分納申請です。税務署や自治体は、納税意思があることを示せば柔軟な対応を取ることが多いのです。
分納申請の条件:
効果的な交渉ポイント:
分納が認められた場合でも、**延滞税(年率8.7~14.6%)**は継続して発生するため、できるだけ短期間での完済を目指すべきです。
また、税理士などの専門家に依頼することで、より有利な条件での交渉が可能になる場合もあります。特に法人の場合は、事業継続の観点から配慮される可能性が高くなります。
税金滞納による差し押さえには、一般的にはあまり知られていない驚くべき事実が存在します。
海外資産も対象になる
日本居住者の海外銀行口座や不動産も、税務署は把握して差し押さえ対象とすることができます。CRS(共通報告基準)により、海外金融機関から日本の税務当局へ情報提供が行われているためです。
会社の売掛金も差し押さえ可能
個人事業主の場合、取引先からの売掛金も差し押さえ対象となります。これにより、取引先に滞納事実が知られ、信用失墜のリスクが生じます。
相続財産への影響
滞納税額は相続時に相続人全員に承継されます。相続放棄をしない限り、子や配偶者が支払い義務を負うことになります。
時効の中断
通常、税金の時効は5年(国税)または5年(地方税)ですが、差し押さえ処分により時効が中断されます。一度差し押さえされると、完納まで時効期間はリセットされ続けます。
税務調査の併発リスク
滞納処分と並行して税務調査が実施される場合があります。これまでの申告内容に問題があれば、過少申告加算税や重加算税などの追徴課税により、さらに負担が増加する可能性があります。
参考:国税庁の滞納整理に関する詳細な手続きについて
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan/pdf/tainouseiri.pdf
参考:地方税の滞納処分に関する総務省通知
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/czaisei_seido16.html