
水道法は昭和32年法律第177号として制定され、第5条第4項において水道施設の技術的基準を厚生労働省令で定めることを規定しています 。この法的根拠に基づき、「水道施設の技術的基準を定める省令」(平成12年厚生省令第15号)が制定され、給水管の水圧基準が明確に定められています 。
参考)https://tokyobousui.com/blog/blog-8217/
宅地建物取引業において、この法的基準は重要事項説明における上水道の整備状況や、物件の給水能力を判断する際の基礎的な知識として必要不可欠です。特に中高層建物や戸建住宅の給水方式を検討する際には、この水圧基準を理解していることが求められます 。
参考)https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/content/001856600.pdf
なお、この省令は建築基準法や宅地建物取引業法と密接に関連しており、宅建士として業務を行う上で関連法令の知識として把握しておく必要があります。
水道施設の技術的基準を定める省令により、配水管の水圧は下限1.5Kgf/c㎡(0.15MPa)、上限7.5Kgf/c㎡(0.74MPa)と規定されています 。理想的な水圧範囲は2.0~4.0Kgf/c㎡(0.2MPa~0.39MPa)とされており、この範囲内での給水が推奨されています 。
これらの数値は道路に埋設されている配水管での水圧であり、実際の家庭の蛇口では約1.0Kgf/c㎡程度減少するのが一般的です 。地形的要因も大きく影響し、標高が高い山間地では水圧が低くなり、標高が低い地域では水圧が高くなる傾向があります 。
宅建業務では、特に3階建て以上の建物や山間部の物件において、この水圧基準が給水方式の選択に直接影響するため、物件調査時に十分な注意が必要です。
平成9年3月19日に公布された「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」(厚生省令第14号)により、給水装置の技術的基準が明確化・性能基準化されました 。この省令は水道法施行令第4条の構造・材質基準を具体化したもので、給水装置工事の適正な施工を確保するための重要な基準です 。
基準の主要な要件として、耐圧性能の確保、水圧に対する充分な耐力、漏水時の修理容易性、汚染防止措置などが規定されています 。特に家屋の主配管については、配管の経路について構造物の下の通過を避けることにより、漏水時の修理を容易に行うことができるような配慮が求められています 。
これらの基準は、宅建士が物件の設備状況を説明する際や、建物の維持管理に関する助言を行う際の重要な判断材料となります。
給水装置の設計において、計画使用水量の適切な算定は水道法基準に適合するために不可欠です 。計画使用水量は給水管の口径決定や受水槽容量の決定の基礎となり、建物の用途、使用人数、給水栓の数等を総合的に考慮して決定されます 。
直結式給水では同時使用水量から計画使用水量を求め、受水槽式では一日当たりの使用水量から算定します 。同時使用水量の算定には、各種算定方法の特徴を踏まえ、使用実態に応じた方法を選択することが重要です 。
宅建業務において、これらの算定方法の理解は、マンションや商業ビルなどの大規模建物の給水能力を評価する際に必要な知識となります。特に既存建物の売買や賃貸において、給水設備の適正性を判断する基準として活用できます。
水道法の水圧基準は、不動産の価値や利用可能性に意外な影響を与える場合があります。特に近年普及が進むウォシュレットや食器洗浄機などの住宅設備機器は、最低0.5Kgf(0.05MPa)の水圧が必要とされており 、基準を下回る場合は追加の設備投資が必要となります。
3階建て以上の直結給水方式の建物では、上層階での水圧不足が発生しやすく、増圧ポンプの設置など追加コストが発生する可能性があります 。これは物件の維持管理費用や居住快適性に直接影響するため、宅建士として物件評価や顧客への説明において重要な要素となります。
また、古い建物では配管の老朽化により、法定基準は満たしていても実用的な水圧が確保できない場合があり、リフォームや改修計画において配管更新の必要性を検討する際の判断材料となります。