
下水道法における特定施設の第一の柱は、水質汚濁防止法施行令第1条関係・別表第1に定められた特定施設です。この分類には、人の健康もしくは生活環境に係る被害を生ずるおそれのある物質を含む汚水又は廃液を排出する施設が含まれています。
参考)https://www.water-kawaguchi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/597/tokutei_itiran_72021714.pdf
水質汚濁防止法に基づく特定施設は、鉱業関連施設、畜産農業施設、畜産食料品製造業施設など多岐にわたります。例えば、鉱業では選鉱施設、選炭施設、坑水中和沈でん施設、掘さく用の泥水分離施設が対象となっています。また、畜産農業では豚房施設(50平方メートル以上)、牛房施設(200平方メートル以上)、馬房施設(500平方メートル以上)が規制対象です。
これらの施設を設置する事業場では、下水道への排出水質基準の遵守が義務付けられており、基準値を超過する可能性がある場合には除害施設の設置が必要になります。
参考)https://www.city.atami.lg.jp/kurashi/suido/1000884/1005617.html
第二の柱となるのが、ダイオキシン類対策特別措置法施行令第1条関係・別表第2に規定される特定施設です。この分類には、ダイオキシン類を含む汚水又は廃液を排出するおそれのある施設が含まれています。
参考)https://www.pref.nagano.lg.jp/suwakoryuiki/shinse/jigyoujouhaisui/documents/tokuteisisetu.pdf
具体的には、硫酸塩パルプまたは亜硫酸パルプ製造の用に供する塩素又は塩素化合物による漂白施設、カーバイド法アセチレン製造のアセチレン洗浄施設、硫酸カリウム製造の廃ガス洗浄施設、アルミナ繊維製造の廃ガス洗浄施設、担体付き触媒製造の焼成炉廃ガス処理施設などが対象となります。
これらの施設では、ダイオキシン類の排出を防止するため、特に厳格な水質管理が求められ、定期的な水質測定と記録保存が義務付けられています。
参考)https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/soshiki/gesuidosomuka/9/6/35846.html
製造業においては、食品製造業、繊維工業、パルプ・紙製造業、化学工業、石油精製業、プラスチック製品製造業、ゴム製品製造業、なめし革・同製品製造業、窯業・土石製品製造業、鉄鋼業、非鉄金属製造業、金属製品製造業、機械器具製造業、電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業など幅広い業種が対象となっています。
参考)https://www.city.kashihara.nara.jp/soshiki/1056/gyomu/1/1/4/253.html
特に注目すべきは、これらの製造業施設には厨房施設、洗濯施設、自動式車両洗浄施設なども含まれることです。例えば、厨房施設は1日当たりの最大処理能力が750食以上または使用する面積が30平方メートル以上の場合、洗濯施設は1日当たりの処理能力が4トン以上の場合に特定施設として扱われます。
参考)https://www.city.takasaki.gunma.jp/site/jougesuidou/5685.html
サービス業においても、旅館業(ベッド数100以上)、洗濯業、自動車整備業、機械修理業などが対象となり、これらの事業場では日々の営業活動において発生する排水の適切な処理が求められています。
参考)https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/jyogesuidou/1062766/1003616.html
特定施設を設置する者は、公共下水道を使用する場合、下水道法第12条の3に基づいて特定施設設置届出書の提出が義務付けられています。この届出は、原則として工事着手の60日前までに行わなければならず、実施制限期間として60日間の待機期間が設けられています。
届出内容には、氏名または名称及び住所、工場または事業場の名称及び所在地、特定施設の種類、特定施設の構造、特定施設の使用方法、汚水の処理方法、下水の量及び水質、用水及び排水の系統、参考事項などが含まれます。また、届出内容に変更が生じる場合には、特定施設変更届出書の提出も必要です。
公共下水道管理者が届出内容を審査し、相当であると認めた場合には実施制限期間の短縮が可能ですが、基本的には60日間の審査期間を経なければ工事に着手することはできません。
特定事業場の設置者には、排出する下水の水質測定義務が課せられています。下水道法第12条の12に基づき、特定施設を設置する事業場から公共下水道に排除される下水の水質を定期的に測定し、その結果を記録・保存しなければなりません。測定結果の記録は5年間の保存が義務付けられています。
水質測定の頻度は、下水道法施行規則第15条第2号により定められており、特定事業場の排除下水に係る水質測定頻度一覧表に示される回数以上の実施が必要です。測定対象は特定事業場からの排除下水(生活系排水又は排除基準が適用されない項目を除く)となります。
除害施設については、事業場からの下水の水質を下水道への排除基準に適合させるために設置される汚水処理施設で、工場の排水処理施設などが該当します。除害施設を設置する場合には、事前に除害施設設置計画届の提出が必要であり、適切な維持管理により下水排除基準への適合を継続的に確保することが求められます。
参考)https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000190976.html