
特別措置法は「効力のある期間を限った法律であり、時限立法という言い方もなされます」。この時限性こそが特別措置法の最大の特徴です。法制的には、暫定的な措置という見地を強調する場合に「暫定措置法」、臨時の措置については「臨時措置法」、特例的あるいは特別な事態に対処するための措置については「特別措置法」という表現が用いられています。
期限の設定方法には2つのパターンがあります。
実際には「長いものでは十年を超えるものもある」とされており、必ずしも短期間に限定されるものではありません。しかし、期間が過ぎると効力が失われるため、継続が必要な場合は延長や再制定が必要となります。
「恒久法」とは「効力の続く期間を限定しない法律」です。期限を定めずに広く適用される法律として、一度制定されれば途中で改正や廃止がない限り効力がずっと続きます。
恒久法の典型例として民法があります。現在の民法は1896年(明治29年)に制定されて以来、一部を除いては改正されませんでした。しかし、社会情勢の変化により「現在の社会生活は120年前とは大きく変わっています。当然ながら同じ民法のままでは社会生活に支障が出る場面が増えてきました」という状況も生じます。
恒久法は以下の特徴を持ちます。
不動産業界では、都市再生特別措置法が代表的な特別措置法として機能しています。2014年に都市再生特別措置法が改正され、立地適正化計画制度が創設されました。この制度では、将来的な人口密度を一定程度維持するための居住誘導区域と、医療福祉施設や商業施設などを誘導する都市機能誘導区域を設定します。
また、2020年9月に改正された都市再生特別措置法施行令により、災害レッドゾーンは居住誘導区域から原則除外することが明記されています。これは不動産開発や取引において重要な影響を与える規定です。
実務における影響として。
特別措置法が恒久法に転換される典型例として、瀬戸内海環境保全臨時措置法があります。同法は「附則第四条の失効規定が削除されて恒久法化されるとともに、新たに瀬戸内海の環境保全に関する各種の特別の措置が盛り込まれ、その題名も瀬戸内海環境保全特別措置法と改められた」という経緯をたどりました。
転換の判断基準について、国会では「『暫定措置』の期限について、延長に次ぐ延長をした場合、その措置は恒久措置へ移行するのが適当であり、仮に不要と考えられる状況となった場合には廃止すべきものと考える」との見解が示されています。
転換プロセスの特徴。
義援金差押禁止に関する法制度でも、東日本大震災から5回の臨時法を経て、2021年に「自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律」として恒久法化されました。
不動産業務において、特別措置法と恒久法の違いを理解することは実務上重要です。特に、都市計画や開発規制、税制面での取り扱いが異なるためです。
特別措置法を活用すべき場面。
恒久法に基づく基本的業務。
実務者が注意すべきポイントとして、特別措置法は「限定された政治課題に対応する法律」という性格上、適用期限や対象範囲が限定されています。そのため、契約期間が長期にわたる不動産取引では、特別措置法の期限切れリスクを考慮した条項設定が必要です。
また、租税特別措置法のように「政策的な観点からの税に関する時限立法として位置づけられ」る法律については、適用期限の把握が節税戦略上重要となります。法人税法や所得税法が基本的には恒久的な定めを置くのに対し、租税特別措置法は時限性があるため、投資計画や事業計画における税務効果の検討では期限管理が不可欠です。