
水利権は、特定の目的のために河川の流水を排他的・継続的に使用する権利のことです 。河川法が規定する公法上の権利(行政機関の許可に基づく権利)であり、「免許」「特許」とも呼ばれています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/river/riyou/main/suiriken/index.html
この権利は、河川の流水・湖沼の水などの水資源を排他的に取水し利用することができる法的な権利として位置づけられており 、他人の取水を排除して独占的に水を利用することが可能になります。水利権を取得することで、安定的かつ継続的な水の確保が法的に保障されるため、農業や工業、発電事業などにおいて不可欠な権利といえます 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E5%88%A9%E6%A8%A9
水利権は大きく分けて「慣行水利権」と「許可水利権」の2つの種類に分類されます 。
参考)https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shigenkentou/dai04/pdf/s02.pdf
慣行水利権の特徴 📜
許可水利権の特徴 📋
また、権利の安定性による分類として、安定水利権、暫定水利権、豊水水利権、暫定豊水水利権があり、取水の確実性によって区別されています 。
参考)https://sites.google.com/site/shimataniyukihiro/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%B0%8F%E6%B0%B4%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB/%E6%B0%B4%E5%88%A9%E6%A8%A9%E8%A1%8C%E6%94%BF%E3%81%A8%E7%99%BA%E9%9B%BB
水利権を取得するためには、河川管理者(国または都道府県)への申請が必要となります 。申請には以下の要素が重要です。
参考)https://japan-energy-times.com/small-hydropower-water-rights-acquisition-application/
申請時の主要書類 📝
参考)https://www.jica.go.jp/activities/issues/water/n_files/t01_02.pdf
審査の判断基準 ⚖️
水利権の許可を与える判断基準は、①公共の福祉増進、②実行の確実性、③河川流量と取水量との関係、④公益上の支障の有無となっています 。特に、申請者の事業計画が妥当であるとともに、関係法令の許可や申請者の事業遂行能力、信用など、水利使用の実行の確実性が確保されていることが重要視されます 。
参考)https://www.mlit.go.jp/river/riyou/main/suiriken/kyoka/index.html
審査には数ヶ月かかることがあるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です 。
水利権を取得した後も、適切な維持管理が求められます。違法な水利使用を行った場合、水利権の取消処分という重大な処分を受ける可能性があります。
JR東日本信濃川発電所の取消事例 ⚠️
平成20年に発覚したJR東日本信濃川発電所の不適切事案は、水利権取消の代表例です 。この事案では、発電取水量・維持放流量等の改ざんをはじめ、河川法等に違反する不適切事案が発覚しました 。
参考)https://www.city.tokamachi.lg.jp/soshiki/kensetsubu/kensetsuka/3/gyomu/1450418840060.html
具体的な違法行為として、許可取水量以上に取水した場合に自動的に許可水量以内として処理するリミッター設定や、維持流量が下回った場合でも正常値として記録するプログラムの設定などが明らかになりました 。
処分内容と再取得条件
国土交通省は平成21年3月10日に水利権取消処分を下し、新たに流水の占用を行う場合は、処分の日から一年以内に違法な工作物等を是正し、再発防止策を構築することを条件としました 。
近年、従来の利用目的に加えて環境用水としての水利権も注目されています。環境用水とは、河川環境の保全や改善を目的とした水利用のことです 。
参考)https://www.maff.go.jp/tohoku/nouson/kankyo_yousui/attach/pdf/tebiki-7.pdf
環境用水の特徴と制約 🌱
環境用水の水利権は、許可期間が原則3年間を上限とし、更新条項も付されないことが特徴です 。このため、環境用水の通水にあたっては、施設を借用する他目的使用(土地改良法施行令第59条)が一般的とされています 。
環境用水の水利権取得には、事前調査、必要水量の検討、水源状況の確認、実施・管理体制の検討、施設の使用に係る手続きや水利使用許可の申請等が必要となり、運営組織の立上げが効果的とされています 。
河川に還元されることが確実な水量を考慮して河川環境や他の水利使用に影響がないと認められる場合には、取水が許可されるという特別な配慮がなされています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/press/200601_06/060320/060320_tutatu.html