
土地改良法第118条第6項は、土地改良事業実施主体に対して強力な情報収集権限を付与している 。この規定により、国、都道府県、市町村の職員、土地改良区の役職員、農業委員会関係者は、事業に関し必要な簿書の閲覧や謄本、登記事項証明書の交付を無償で求めることができる 。
参考)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001328665.pdf
この権限は単なる便宜的措置ではなく、土地改良事業の公共性と重要性を反映した法的保障である 。従来、権利者調査に要する費用負担が事業実施の障害となっていたが、本条により事業主体の負担が大幅に軽減され、事業の円滑な推進が可能となった 。
参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/nn_youkou/attach/pdf/youkou-533.pdf
特に注目すべきは、この権限が土地改良区のような公法人だけでなく、農業委員会や認可申請予定者にも拡張されている点である 。これにより、事業の準備段階から必要な情報収集が可能となり、事業計画の精度向上と期間短縮が実現されている 。
土地改良事業での公用請求は、住民基本台帳法第12条の2第1項を根拠法令として実施される 。請求時には「土地改良事業の施行のため、住民基本台帳法第12条の2第1項に基づく規定により住民票の写しを請求する」といった具体的な理由と根拠法令の明示が義務付けられている 。
参考)https://www.city.tachikawa.lg.jp/kurashi/koseki/1024904/1024900.html
この連携体制の重要性は、所有者不明土地の増加という社会的課題への対応にある 。国土交通省の調査によると、所有者の探索において公用請求は不可欠な手段となっており、特に相続未登記案件では戸籍調査が決定的な役割を果たしている 。
住民基本台帳法との連携により、転出履歴の追跡、死亡確認、本籍地の特定といった段階的な調査が可能となる 。さらに、戸籍法第10条の2との組み合わせにより、相続人調査まで含めた包括的な権利者特定システムが構築されている 。
土地改良事業の申請手続きでは、事業参加資格者の3分の2以上の同意取得が法的要件となっている 。この同意取得過程において、権利者の正確な把握が不可欠であり、公用請求制度がその基盤を支えている 。
参考)https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/sangyo-rodo/0b90e946f05b25b6ac7295d4aeccd93b
事業計画概要の公告前に実施される権利関係調査では、登記記録の確認に加えて、実際の権利者の現況調査が重要となる 。特に農用地の場合、所有権者と実際の使用者が異なるケースが多く、土地改良法第3条に規定する資格要件の判定には詳細な調査が必要である 。
参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/652303.pdf
申請人による事前調査の徹底は、後の認可手続きの円滑化に直結する 。都道府県知事による審査において、権利関係の不備は認可遅延の主要因となるため、公用請求制度を活用した正確な事前調査が事業成功のカギとなっている 。
土地改良区設立における権利関係調査では、単純な所有権調査を超えた複雑な判定が求められる 。土地改良法第3条に規定する事業参加資格は、所有権の有無だけでなく、実際の使用収益の実態に基づいて判定される 。
参考)https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/t0000958.html
この制度の特殊性は、農地の貸借関係や使用貸借の実態調査が不可欠な点にある 。公用請求により把握した住民票情報と、現地での聞き取り調査を組み合わせることで、真の権利者を特定する手法が確立されている 。
未成年者や成年被後見人が権利者となる場合の取り扱いも重要である 。これらのケースでは、法定代理人や後見人の特定が必要となり、戸籍調査や家庭裁判所記録の確認が求められる 。公用請求制度により、これらの複雑な調査も効率的に実施することが可能となっている 。
土地改良法第113条の2は、共有地における事業参加資格者の取り扱いを明確に規定している 。共有者は代表者1人を選任し、その者が事業に関する意思表明を行うシステムが採用されている 。
この制度運用において、公用請求制度の役割は極めて重要である 。共有者全員の特定と現況確認、代表者選任の有効性確認、未選任の場合の対応判定など、複雑な調査業務が要求される 。
特に相続未登記の共有地では、真の共有者の特定に膨大な調査が必要となる 。戸籍調査による相続人の確定、各相続人の現住所調査、代表者選任に関する意向確認など、段階的な調査プロセスが必要であり、公用請求制度なしには実現困難な作業となっている 。