
都道府県知事の被選挙権年齢は、公職選挙法第10条により満30歳以上と規定されています。これは衆議院議員の25歳、参議院議員の30歳と同様の年齢制限となっています。
年齢の算定については、選挙期日(投票日)にその年齢に達していれば良いとされており、立候補届出時点では達していなくても構いません。また、誕生日の前日をもって満年齢を迎えたものとして取り扱われます。
選挙の種類 | 被選挙権年齢 | 備考 |
---|---|---|
衆議院議員 | 満25歳以上 | 日本国民 |
参議院議員 | 満30歳以上 | 日本国民 |
都道府県知事 | 満30歳以上 | 日本国民 |
都道府県議会議員 | 満25歳以上 | 選挙権も必要 |
市町村長 | 満25歳以上 | 日本国民 |
被選挙権には積極的要件(満たすべき条件)と消極的要件(該当してはならない条件)が存在します。消極的要件に該当すると、年齢要件を満たしていても立候補できません。
主な消極的要件:
これらの規定は、公職の清廉性と民主主義制度への信頼確保を目的としています。
現行の30歳という年齢制限は、戦後の地方自治制度改革において制定されました。戦前の府県知事は官選制であったため、公選制導入時に適切な年齢要件が検討されました。
制度設計時の議論では、知事職の責任の重さと政治的経験の必要性が考慮されました。しかし、近年は若年層の政治参画促進の観点から、この年齢制限への見直し論も存在します。
実際に2023年の統一地方選挙では、年齢要件を満たさない若者が被選挙権制限の違憲性を主張する訴訟を起こしており、現行制度への問題提起が行われています。
国際的には、カナダやニュージーランドなど一部の国で首長選挙の被選挙権年齢を18歳に設定している例もあり、日本の制度は比較的保守的とされています。
都道府県知事の被選挙権年齢制限は、不動産業界に従事する専門家にとって重要な意味を持ちます。都市計画や建築基準法の運用、宅地建物取引業法の監督など、不動産業界に直接影響する多くの施策が都道府県レベルで決定されるためです。
不動産業界での知事選挙参画のメリット:
不動産関係者が30歳以上になってから県政参画できる現行制度は、業界の若手専門家にとって参入障壁となる可能性があります。宅地建物取引士資格は18歳から取得可能であり、若手でも十分な専門性を持つ人材が存在するためです。
また、人口減少地域での土地利用見直しや空き家対策など、現代的な課題には若い視点からのアプローチが有効な場合も多く、年齢制限の見直し議論は不動産業界にも関連する重要なテーマとなっています。
現行の30歳という年齢制限については、憲法学者や政治学者の間で活発な議論が続いています。特に、国民主権原理と代表民主制の観点から、年齢による被選挙権制限の合理性が問われています。
制度見直しの主要論点:
一方で、知事職の責任の重さや政治的経験の重要性を理由に、現行制度を支持する意見も根強く存在します。地方自治体の首長は予算編成権、人事権、政策立案権など強大な権限を持つため、一定の社会経験が必要との考え方です。
2020年の公職選挙法改正では選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、被選挙権年齢は据え置かれました。しかし、若年層の政治離れや少子高齢化の進行を背景に、今後も継続的な見直し議論が予想されます。
総務省では、これらの議論を踏まえて制度の在り方について検討を継続しており、将来的な法改正の可能性も完全には排除されていません。