
農業委員会における農地転用許可申請は、農地法に基づく厳格な規制制度です。農地を農業以外の目的で使用する場合、事前に知事の許可が必要となります。
農地転用許可制度の目的は、優良農地を確保し、耕作者の地位安定と農業生産増大を図ることにあります。国土の計画的かつ合理的な土地利用の観点から、農業と農業以外の土地利用計画との調整を図りながら運用されています。
農地転用の区分と申請先
転用面積が4ヘクタールを超える場合は農林水産大臣の許可となり、2ヘクタールを超える場合は事前協議が必要となる場合があります。
農地転用許可申請の費用期間は、申請内容や地域によって大きく異なります。通常、申請から許可が下りるまで約6週間程度かかりますが、複雑な案件では3ヶ月以上要することもあります。
申請費用の内訳
許可・届出の受付締切日は毎月25日(休日の場合は直前の業務日)に設定されており、翌月に開催される定例会での審議後に許可書が交付されます。申請書類の不備があると審議が延期されるため、事前の十分な準備が重要です。
地域計画内の農地については、農地転用申請前に地域計画の変更手続きが必要になります。提出後、地域計画の変更がされた場合に限り、農地転用申請を受け付けるという二段階の手続きが設けられています。
農地法による農地転用規制は、第3条、第4条、第5条で構成されています。それぞれ異なる状況に対応した規制内容となっており、適切な条項の選択が重要です。
農地法各条の適用場面
農地転用許可制度では、具体的な転用目的を有しない投機目的、資産保有目的での農地の取得は認められていません。優良農地を確保するため、農地の優良性や周辺の土地利用状況などにより農地を区分し、転用を農業上の支障が少ない農地に誘導する仕組みとなっています。
許可を受けないで転用したり、許可の内容と異なる目的に転用した場合には、工事の中止や原状回復等を命じられることがあり、罰則の適用もあります。仮設事務所の設置や農地の造成などの一時的な期間の転用、農業用施設の設置であっても許可が必要となる場合があるため注意が必要です。
農地転用許可申請には、多数の書類準備が必要です。申請書類の不備は審議の延期につながるため、事前のチェックリストによる確認が重要です。
基本書類一覧
転用する農地が市街化調整区域内の場合、農業委員会総会での議決及び大阪府農業会議への意見聴取を経て、大阪府知事に意見書を提出し許可を受ける流れとなります。許可申請は農地法の転用許可基準に適合し、かつ関係法令(開発関係等)とも整合していなくてはなりません。
200㎡未満の農業用施設用地の転用については農地転用許可を要しませんが、当該転用について所有者等に農業委員会へ届出を求めている場合があります。小規模な転用でも事前に農業委員会への確認が推奨されます。
農業委員会における農地転用では、しばしばブローカー問題が指摘されています。農地の違法転用を野放しにする構造的問題が存在し、適正な審査体制の確立が課題となっています。
ブローカー問題の具体例
世田谷区の農地転用と農業委員会の歴史的研究(1960〜1975年)では、都市化の進展とともに農地転用圧力が増大し、農業委員会の機能が問われた経緯が明らかにされています。現在でも同様の構造的問題が継続していると考えられます。
対策として重要なポイント
農地につき農業委員会が農地転用届出を受理したため第三者に売却された場合、農地を賃借していたと主張する者の賃借権侵害による農業委員会の国家賠償責任が問われたケースもあります。適正な手続きの重要性が司法判断でも確認されています。
農業委員会は地域農業の再生と農地制度の中核的役割を担っており、日本社会の礎である村と農地を守るために、より厳格で透明性の高い運用が求められています。不動産業従事者としては、これらの問題を理解し、適正な手続きによる農地転用の推進に努めることが重要です。