
市街化区域は都市計画法において最も重要な概念の一つです。法律上の定義では、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされています。
この定義には2つの重要な要素が含まれています。
市街化区域の最大の特徴は、積極的な開発が促進される点です。市街化調整区域が「市街化を抑制すべき区域」であるのとは対照的に、市街化区域では建物の建築や土地の開発が基本的に推奨されています。
また、市街化区域には必ず用途地域が定められます5。これは「少なくとも用途地域を定める」とも表現され、宅建試験では頻出の表現として覚えておく必要があります5。用途地域の指定により、その土地にどのような建物を建てられるかが明確になり、計画的な土地利用が実現されます。
都市計画における位置づけとして、市街化区域は都市の中心部や主要な交通結節点周辺に指定されることが多く、人口密度が高く、インフラ整備も充実している地域が選定されます。
市街化区域での開発行為には開発許可制度が適用されますが、その要件は他の区域と異なる特徴があります。
基本的な許可要件
市街化区域内では、原則として1,000㎡以上の開発行為について開発許可が必要です。これは「開発行為の規模による許可要件」と呼ばれ、宅建試験でも必須の知識です。
ただし、三大都市圏の特定の区域では500㎡以上、さらに一定の場合には300㎡以上が許可対象となることもあります。この地域による違いは実務上重要で、取引を行う地域の具体的な基準を確認する必要があります。
許可不要となる場合
以下の開発行為については、面積に関係なく開発許可が不要とされています。
これらは「計画的な街づくりを妨げる恐れが少ない」という理由で許可が不要とされています。
農林漁業関連の扱い
市街化区域では、農林漁業に関する特例はありません。これは市街化調整区域や非線引き区域とは大きく異なる点で、市街化区域では農業よりも都市的土地利用が優先されることを示しています。
宅建実務において、開発許可の要否を判断する際は、開発行為の規模だけでなく、その目的や性質も含めて総合的に検討する必要があります。
市街化区域と用途地域の関係は、宅建業務において極めて重要な知識です。
用途地域の指定義務
市街化区域には「必ず」用途地域を定めることとされています5。これは都市計画法の基本原則の一つで、計画的な市街地形成を図るための重要な仕組みです。
用途地域は以下の13種類に分類されます。
特別な地域地区の指定
市街化区域では、用途地域に加えて以下の地域地区を指定することができます。
地域地区名 | 指定可能性 | 条件 |
---|---|---|
特別用途地区 | ○ | 用途地域にのみ指定可能 |
高度地区 | ○ | 用途地域にのみ指定可能 |
高度利用地区 | ○ | 用途地域にのみ指定可能 |
高層住居誘導地区 | △ | 一定の用途地域にのみ指定可能 |
特定用途制限地域 | × | 指定不可 |
防火地域・準防火地域 | ○ | 指定可能 |
実務での活用方法
宅建業者として重要事項説明を行う際、市街化区域内の物件については必ず用途地域の確認が必要です。用途地域により建築可能な建物の種類や規模が制限されるため、購入者の利用目的に適合するかを事前に確認することが重要です。
また、用途地域の境界付近では、隣接する用途地域の影響も考慮する必要があります。例えば、住居系用途地域に隣接して工業系用途地域がある場合、将来的な環境変化の可能性についても説明することが望ましいでしょう。
宅建試験における市街化区域関連問題は、毎年必ず出題される重要分野です。過去問分析から見える頻出ポイントを詳しく解説します。
定義に関する問題
最も基本的でありながら重要なのが、市街化区域の定義に関する問題です5。過去に同じ選択肢が3回も出題されており5、以下の表現は確実に覚える必要があります。
この定義問題では、「市街化を禁止すべき区域」といった誤った表現が選択肢に含まれることが多く、市街化調整区域との混同を狙った引っかけ問題が頻出します。
開発許可に関する計算問題
開発許可の面積要件は計算問題として出題されることが多く、以下のパターンが重要です。
特に「1ha = 10,000㎡」の換算は頻出で、「1haのゴルフコース建設」といった具体例での出題が見られます。
用途地域との関係
「市街化区域には少なくとも用途地域を定める」という表現は非常に重要です5。この「少なくとも」という表現と「必ず」という表現の両方が正しいことを理解しておく必要があります。
許可不要の例外規定
以下の場合は開発許可が不要となることが頻出します。
過去問での出題傾向
令和4年問16では、市街化区域内での1ha(10,000㎡)のゴルフコース建設について出題されました。このように具体的な面積と建物用途を組み合わせた問題が多く、実際の数値を正確に覚えることが重要です。
また、平成時代の過去問では、農業者住宅の特例(市街化区域では適用されない)や、畜舎建設での開発許可の要否などが出題されており、市街化区域特有の規制内容を正確に理解する必要があります。
宅建実務において、市街化区域と他の区域との違いを正確に理解することは、適切な不動産取引を行うために不可欠です。
市街化調整区域との根本的違い
市街化区域と市街化調整区域は、都市計画における対極的な位置づけにあります。
項目 | 市街化区域 | 市街化調整区域 |
---|---|---|
基本方針 | 市街化の促進 | 市街化の抑制 |
用途地域 | 必ず指定 | 原則として指定しない |
開発許可 | 1,000㎡以上で必要 | 原則として全面的に制限 |
住宅建築 | 基本的に自由 | 厳しい制限あり |
農林漁業特例 | なし | 一定の配慮あり |
市街化調整区域では「市街化が進まないよう抑える区域」とされ、一般住宅の建築が原則として制限されています。宅建業者として市街化調整区域内の物件を扱う場合は、必ず役所で建築可能性を確認する必要があります。
非線引き区域(非線引都市計画区域)との違い
非線引き区域は「市街化区域でも市街化調整区域でもない区域」で、区分されていない都市計画区域です。この区域では。
準都市計画区域との関係
準都市計画区域は都市計画区域外の特別な区域で、幹線道路沿道やインターチェンジ付近など将来発展の可能性が高い地域に指定されます。市街化区域とは直接的な関係はありませんが、将来的に都市計画区域に編入される可能性があります。
実務での活用戦略
1. 重要事項説明での注意点
市街化区域内の物件について重要事項説明を行う際は、以下の点を必ず確認・説明する必要があります。
2. 投資物件としての評価
市街化区域は投資用不動産として以下のメリットがあります。
3. 融資審査での優位性
金融機関の融資審査において、市街化区域内の物件は一般的に高く評価されます。これは担保価値の安定性や流動性の高さが評価されるためです。
4. 税務上の取扱い
市街化区域では市街化区域農地として固定資産税の軽減措置が適用される場合があります。また、相続税の計算においても宅地評価が適用されるため、税務面でのアドバイスも重要な業務となります。
宅建業者として、これらの知識を総合的に活用し、顧客に対して適切なアドバイスを提供することが、信頼される不動産のプロフェッショナルとしての第一歩となります。
市街化区域に関する法令や制度は複雑ですが、基本的な理解を積み重ねることで、宅建試験合格はもちろん、実務においても自信を持って業務を遂行できるようになるでしょう。