第一種中高層住居専用地域と宅建試験の用途地域制限

第一種中高層住居専用地域と宅建試験の用途地域制限

第一種中高層住居専用地域の特徴や建築制限について詳しく解説。宅建試験でよく出題される用途地域の知識を深め、実務にも役立つ情報を提供します。あなたは用途地域の違いをきちんと説明できますか?

第一種中高層住居専用地域と宅建試験

第一種中高層住居専用地域の基本
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良好な住環境の保護

中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定められた用途地域です

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建ぺい率と容積率

建ぺい率は30~60%、容積率は100~500%の範囲で指定されます

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建築可能な施設

住宅のほか、一定規模の店舗や学校、病院なども建設可能です

第一種中高層住居専用地域の定義と目的

第一種中高層住居専用地域は、都市計画法第9条に規定されている用途地域の一つです。この地域は「中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」と定義されています。一般的に「一中高」または「一中専」と略されることもあります。

 

この用途地域の主な目的は、3~4階建て程度の中高層マンションを中心とした良好な住環境を維持することにあります。低層住宅地域よりも高い建物が許容される一方で、商業施設や事務所などの立地は限定的に規制されています。

 

宅建試験では、各用途地域の特徴や建築制限について頻出の出題分野となっており、第一種中高層住居専用地域についても、その特性や建築可能な建物の種類などが問われます。特に他の用途地域との違いを明確に理解しておくことが重要です。

 

第一種中高層住居専用地域の建ぺい率と容積率制限

第一種中高層住居専用地域における建ぺい率は、30%、40%、50%、60%のいずれかで指定されます。一方、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%の範囲内で指定されます。これらの数値は地域の特性や都市計画の方針に基づいて自治体が決定します。

 

特筆すべき点として、第一種中高層住居専用地域には絶対高さ制限がありません。これは第一種低層住居専用地域との大きな違いの一つです。ただし、日影規制斜線制限が適用されるため、実質的に建物の高さは制限されます。

 

具体的な制限として、以下のものが挙げられます。

  • 道路斜線制限:適用距離は20m、25m、30m、35mのいずれかで、勾配は1.25または1.5
  • 隣地斜線制限:立ち上がりは20mまたは31m、勾配は1.25または2.5
  • 北側斜線制限:立ち上がりは10m、勾配は1.25
  • 日影規制:高さ10m超の建築物が対象、測定面は4mまたは6.5m

これらの制限は、周辺環境への影響を考慮し、住環境の質を保つために設けられています。宅建試験では、これらの数値を正確に覚えておくことが求められます。

 

東建コーポレーションの用語辞書 - 第1種中高層住居専用地域の詳細な制限について

第一種中高層住居専用地域で建築可能な建物と制限

第一種中高層住居専用地域では、主に住居系の建物が建築可能ですが、一定の条件を満たす非住居系の建物も建てることができます。建築可能な主な建物は以下の通りです。

  1. 住宅関連
    • 戸建て住宅
    • マンション等の中高層住宅
    • 店舗兼住宅・事務所兼住宅(住宅部分が50%以上)
  2. 教育・医療・福祉施設
    • 幼稚園・小学校・中学校・高等学校
    • 大学・高等専門学校
    • 図書館
    • 病院・診療所
    • 老人ホーム・身体障害者福祉ホーム
    • 保育所・老人福祉センター・児童厚生施設
  3. 商業施設(限定的)
    • 2階以下で床面積500㎡以下の店舗・飲食店
    • 2階以下で床面積150㎡以下の一定の店舗
  4. その他
    • 神社・寺院・教会
    • 公衆浴場
    • 巡査派出所(交番)・公衆電話ボックス
    • 2階以下で床面積300㎡以下の自動車車庫

一方、以下の建物は建築が禁止されています。

  • 事務所(兼用住宅を除く)
  • ホテル・旅館などの宿泊施設
  • ボーリング場・スケート場・プールなどの遊戯施設
  • マージャン屋・パチンコ屋・カラオケボックス
  • 劇場・映画館
  • キャバクラ・ナイトクラブなどの風俗施設
  • 工場・倉庫
  • ガソリンスタンドなどの危険物取扱施設

これらの制限は、住環境の保全を目的としており、騒音や交通量の増加など、住環境に悪影響を及ぼす可能性のある施設の建設を制限しています。宅建試験では、どのような建物が建築可能か、あるいは不可能かを正確に把握しておくことが重要です。

 

イクラ不動産 - 第一種中高層住居専用地域で建てられる建物の詳細一覧

第一種中高層住居専用地域と類似用途地域との違い

第一種中高層住居専用地域と混同されやすい用途地域として、第二種中高層住居専用地域と第一種低層住居専用地域があります。これらの違いを明確に理解することは、宅建試験対策として非常に重要です。

 

【第一種中高層住居専用地域と第二種中高層住居専用地域の違い】

  1. 店舗・事務所の規模制限
    • 第一種:2階以下、500㎡以下の店舗・飲食店のみ
    • 第二種:1500㎡以下の店舗・事務所・飲食店が可能
  2. 危険物の取扱い
    • 第一種:不可
    • 第二種:量が非常に少ない施設なら可能

【第一種中高層住居専用地域と第一種低層住居専用地域の違い】

  1. 容積率の制限
    • 第一種中高層:100%~500%
    • 第一種低層:50%~200%
  2. 店舗の建築許可
    • 第一種中高層:2階以下、500㎡以下なら可能
    • 第一種低層:不可(ただし、小規模兼用住宅は可能)
  3. 大規模な公共施設の建築許可
    • 第一種中高層:可能(大学、病院など)
    • 第一種低層:不可
  4. 高さ制限
    • 第一種中高層:絶対高さ制限なし(斜線制限や日影規制による間接的な制限あり)
    • 第一種低層:10m or 12mの絶対高さ制限あり

これらの違いを理解することで、各用途地域の特性をより明確に把握することができます。宅建試験では、これらの違いを問う問題が頻出するため、しっかりと整理しておきましょう。

 

イエール総研 - 第一種中高層住居専用地域と類似用途地域の詳細な比較

第一種中高層住居専用地域の宅建試験での出題傾向と対策

宅建試験において、用途地域に関する問題は毎年のように出題されています。特に第一種中高層住居専用地域については、以下のような出題傾向があります。

 

  1. 建築可能・不可能な建物に関する問題
    • 特定の建物(例:病院、大学、店舗など)が建築可能かどうか
    • 床面積や階数の制限に関する問題
  2. 建ぺい率・容積率に関する問題
    • 指定可能な数値の範囲
    • 他の用途地域との比較
  3. 斜線制限・日影規制に関する問題
    • 北側斜線制限の有無
    • 日影規制の適用条件
  4. 用途地域の指定目的に関する問題
    • 「中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため」という目的の理解

効果的な対策としては、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

  • 各用途地域の定義と目的を正確に理解する
  • 建築可能・不可能な建物のリストを作成し、暗記する
  • 建ぺい率・容積率の範囲を確実に覚える
  • 類似する用途地域(特に第二種中高層住居専用地域と第一種低層住居専用地域)との違いを整理する
  • 過去問を解き、出題パターンに慣れる

また、実際の試験では「第一種中高層住居専用地域」という名称ではなく、「一中高」「一中専」などの略称で問われることもあるため、これらの略称にも慣れておくことが大切です。

 

e-宅建 - 宅建試験の用途地域に関する過去問解説

第一種中高層住居専用地域の実務における重要性と活用法

宅建業務において、第一種中高層住居専用地域に関する知識は単に試験対策だけでなく、実務上も非常に重要です。特に以下のような場面で活用されます。

 

  1. 物件説明・重要事項説明
    • 建築制限や将来的な周辺環境の予測に関する説明
    • 建替えや増改築の可能性についての説明
    • 日影規制や斜線制限による建築計画への影響
  2. 土地活用提案時
    • マンション経営や賃貸住宅経営の提案
    • 小規模店舗との併用住宅の提案
    • 建ぺい率・容積率を最大限活用した建築プランの提案
  3. 物件価値評価時
    • 用途地域による土地の価値への影響分析
    • 周辺環境の将来性予測
    • 最有効使用の検討

実務上のポイントとして、第一種中高層住居専用地域は中高層マンションと戸建て住宅が混在する地域であり、比較的静かで落ち着いた住環境が特徴です。一方で、日常生活に必要な小規模店舗も立地可能なため、利便性も確保されています。

 

顧客に対しては、この用途地域のメリットとして以下の点を強調することができます。

  • 良好な住環境が法的に保護されている
  • 騒音や振動、ネオンなどの光害が少ない
  • 日常生活に必要な施設(スーパー、病院など)が一通り揃っている
  • 治安が比較的良好

一方、デメリットとしては以下の点に注意が必要です。

  • レジャー施設や大型商業施設が建てられない
  • オフィスビルが建てられないため、職住近接を求める人には不向き
  • 日当たり・日影に関する建設条件が比較的厳しい

これらの特性を理解し、顧客のニーズに合わせた適切な提案や説明ができるようになることが、宅建業務における専門性の向上につながります。

 

第一種中高層住居専用地域における将来的な都市計画の動向

近年の都市計画において、第一種中高層住居専用地域は重要な位置づけとなっています。特に以下のような動向が見られます。

 

  1. コンパクトシティ構想との関連

    第一種中高層住居専用地域は、一定の人口密度を確保しながらも良好な住環境を維持できる地域として、コンパクトシティ構想の中で重要な役割を果たしています。特に駅周辺などの利便性の高い地域では、この用途地域の指定によって中高層マンションの建設を促進し、効率的な土地利用と公共交通機関の利用促進を図る自治体が増えています。

     

  2. 高齢化社会への対応

    高齢化社会において、医療・福祉施設へのアクセスが容易な住環境の需要が高まっています。第一種中高層住居専用地域では病院や福祉施設の建設が可能であるため、高齢者にとって住みやすい環境を整備できるという利点があります。

     

  3. 用途地域の見直し傾向

    一部の自治体では、人口減少や産業構造の変化に対応するため、用途地域の見直しを行っています。特に郊外の第一種低層住居専用地域を第一種中高層住居専用地域に変更し、より多様な建物用途を許容することで地域の活性化を図る動きも見られます。

     

  4. 環境配慮型都市計画との連携

    第一種中高層住居専用地域では、一定の建物密度を確保しながらも緑地や公開空地の確保が可能です。近年は環境配慮型の都市計画との連携により、この用途地域内でも緑化率の向上や再生可能エネルギーの導入を促進する取り組みが進んでいます。

     

宅建業者としては、これらの動向を把握し、将来的な地域の発展可能性や不動産価値の変動を予測することが重要です。特に地方自治体の都市計画マスタープランや立地適正化計画などを定期的にチェックし、用途地域の変更や特別用途地区の指定などの動きに注目することで、顧客に対してより価値の高い情報提供が可能になります。

 

また、SDGsの観点からも、第一種中高層住居専用地域は「住み続けられるまちづくり」(目標11)に貢献する用途地域として注目されています。環境に配慮した住宅開発や、多世代が共生できる住環境の整備など、持続可能な都市づくりの視点からこの用途地域の特性を活かした提案ができると、顧客からの信頼獲得にもつながるでしょう。

 

国土交通省 - 用途地域等の指定状況及び動向調査