
2019年(令和元年)6月25日に施行された建築基準法改正により、用途変更の確認申請手続きが大幅に簡素化されました。この改正では、200㎡以下の特殊建築物への用途変更について確認申請が不要となっています。
改正前は面積に関わらず、すべての特殊建築物への用途変更で確認申請が必要でしたが、小規模な建築物については手続きの負担軽減が図られました。具体的には、住宅から旅館やデイサービス施設、飲食店などへの変更でも、床面積の合算が200㎡以下であれば手続きが不要です。
ただし、確認申請が不要であっても建築基準法への適合は必須です。申請不要を法適合不要と誤解することは禁物で、建築基準関係規定はすべて遵守しなければなりません。
面積計算においては、用途変更する部分の合算面積で判断されます。例えば、1階180㎡、2階180㎡の建物で両方を用途変更する場合、合計360㎡となるため確認申請が必要です。
建築基準法では、類似用途間での用途変更について確認申請を不要としています。これは、類似用途の建築物は同程度の安全基準が求められるため、構造的な変更が最小限で済むことが理由です。
法定の類似用途は11種類のグループに分類されています:
例えば、劇場から映画館への変更、ホテルから旅館への変更は類似用途に該当し、面積に関わらず確認申請が不要です。
重要な注意点として、用途地域による制限があります。第一種・第二種低層住居専用地域および田園住居地域内では、診療所等の類似用途変更でも確認申請が必要な場合があります。
特殊建築物とは、多数の人が利用する建築物で、火災時の避難や安全確保において特別な配慮が必要な建物を指します。建築基準法では、これらの建物に対してより厳格な構造・設備基準を設けています。
主な特殊建築物の例。
非特殊建築物から特殊建築物への変更が確認申請の対象となります。逆に、特殊建築物から非特殊建築物(事務所、専用住宅、工場など)への変更は面積に関わらず確認申請が不要です。
興味深い事例として、学校から事務所への変更では、より厳しい安全基準の建物からより緩い基準の建物への変更となるため、面積が1000㎡を超えても確認申請は不要です。
確認申請が不要な場合でも、建築基準法への適合は必須要件です。この点を見落とすと、後に重大な法的問題に発展する可能性があります。
建築基準法適合性の主な要件。
用途地域制限も重要な確認事項です。住居系用途地域では建てられない用途の建築物への変更は、たとえ確認申請が不要でも実施できません。
法適合性の確認には、建築士や建築事務所への相談が不可欠です。特に構造計算が必要な場合や、防火・避難規定への適合判断は専門的知識を要します。
実際の不適合事例では、既存不適格建築物への対応も考慮が必要です。現行法に適合しない既存建築物の用途変更では、段階的な改善計画の策定が求められる場合があります。
実務において見落としがちな申請不要事例として、複合用途建築物での部分的用途変更があります。例えば、1階が店舗、2階が事務所の建物で、1階店舗部分のみを異なる店舗用途に変更する場合、変更部分の面積で判断されます。
テナント退去後の用途変更では、前テナントの用途と新テナントの用途の関係で申請要否が決まります。物品販売店舗から飲食店への変更は類似用途ではないため、200㎡を超える場合は確認申請が必要です。
暫定的用途変更の考え方も重要です。イベント等での一時的な用途変更では、90日を超える継続使用の場合に用途変更とみなされる場合があります。この判断は所管行政庁によって異なるため、事前相談が推奨されます。
既存不適格への対応策として、段階的改修計画の活用があります。全面的な法適合が困難な場合でも、安全性向上のための部分的改修により用途変更が認められる場合があります。
行政との事前相談制度を活用することで、確認申請の要否判断や必要な改修範囲の確定が可能です。特に複雑な案件では、建築指導課等での事前相談が時間とコストの節約につながります。
建築基準法に関する詳細な解釈については、国土交通省の技術的助言や建築基準法質疑応答集が参考になります。
国土交通省:建築基準法改正による小規模建築物の用途変更手続き簡素化について
法改正の背景と具体的な適用条件について詳しく説明されており、実務上の判断基準として活用できます。