耐力壁と壁倍率の一覧と基礎知識

耐力壁と壁倍率の一覧と基礎知識

建築における耐力壁の種類と壁倍率について、筋かいや面材の違い、計算方法を詳しく解説します。木造住宅の耐震性能を理解するために必要な知識とは?

耐力壁と壁倍率の一覧

耐力壁の壁倍率一覧
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筋かい耐力壁

木材の厚さと幅により1.0倍〜5.0倍

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面材耐力壁

構造用合板などで2.5倍〜5.0倍

⚖️
土塗壁・木ずり壁

伝統的な壁で0.5倍〜1.0倍

耐力壁の種類別壁倍率表

耐力壁の壁倍率は建築基準法施行令第46条で規定されており、材料と施工方法により異なる数値が設定されています 。最も基本的な耐力壁として、土塗壁が壁倍率0.5倍、木ずり等を打った壁が片面で0.5倍、両面で1.0倍となっています 。
参考)https://kentikusi-siken.com/tairyokuheki/

 

筋かい耐力壁については、厚さ15mm以上で幅90mm以上の木材(または径9mm以上の鉄筋)による片筋かいが1.0倍、たすき掛けで2.0倍の壁倍率を持ちます 。厚さ30mm以上で幅90mm以上の木材による筋かいは1.5倍(たすき掛けで3.0倍)、厚さ45mm以上で幅90mm以上の木材による筋かいは2.0倍(たすき掛けで4.0倍)となり、90mm角の木材では3.0倍(たすき掛けで5.0倍)の最高倍率が得られます 。
参考)https://www.hgm-press.com/sekotm191024/

 

面材耐力壁では、厚さ7.5mm以上のJAS構造用合板や厚さ9mm以上の構造用パーティクルボード・構造用MDFがN50釘で15cm以下の間隔で留められた場合、壁倍率2.5倍となります 。石こうボード(屋内壁)では厚さ12mm以上のものをGNF40またはGNC40釘で留めた場合、壁倍率0.9倍が認められています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001753667.pdf

 

耐力壁の高倍率仕様と大臣認定

近年の告示改正により、木造軸組工法では従来の2.5倍を上回る高倍率仕様が追加されました 。大壁仕様では壁倍率3.7倍、真壁仕様では3.3倍の高倍率が実現可能となり、CN50釘の使用やくぎ間隔の調整により実現されています 。
参考)https://www.eu-plan.co.jp/factory/2019/10/08/bairitsu/

 

枠組壁工法(ツーバイフォー工法)でも高倍率仕様が追加され、3.6倍から最高4.8倍の壁倍率が認められています 。これらの高倍率仕様により、必要な耐力壁の枚数を減らすことが可能になり、間取りの自由度向上に寄与しています 。
参考)https://jpma.jp/data/kouzou-3/kouzou-3-1_pr.pdf

 

大臣認定による特別な仕様では、さらに高い壁倍率が認められています 。日本合板協会の認定では厚さ12mm構造用合板で最高4.0倍、ニチハ耐力面材『あんしん』では最高5.0倍(外周部めっき鋼板取り付け耐力壁)の壁倍率が認定されています 。
参考)https://www.jpma.jp/nintei12mm/index.html

 

耐力壁の計算方法と必要壁量

耐力壁の存在壁量は、各耐力壁の長さに壁倍率を乗じた値の合計で算出されます 。例えば、壁倍率2.5倍の耐力壁が1mの長さで9ヶ所ある場合、存在壁量は「2.5倍×1m×9ヶ所=22.5m」となります 。
参考)https://kakunin-shinsei.com/wall-amount-calculation/

 

必要壁量の算出は、建物の床面積や外壁の見付面積を基に、地震力と風圧力に対する必要な壁量を求めて行います 。地震力に対する壁量は建物の階数や重さに応じた係数を床面積に乗じ、風圧力に対する壁量は地域の風の強さに応じた係数を外壁の見付面積に乗じて計算します 。
参考)https://www.cadjapan.com/products/items/house_st1/topics/2024/241004_01.html

 

複数の仕様が併用されている耐力壁では、それぞれの壁倍率を合算することができ、筋かい耐力壁(2.0倍)と構造用合板(2.5倍)を組み合わせると4.5倍となります 。ただし、合算した場合の上限は建築基準法では5.0倍、耐震補強診断では7.0倍までとされています 。
参考)http://www.wakayama-aba.jp/wp-content/uploads/2013/05/b8ed52263adb4b333b7dae6cc4f8d86f.pdf

 

筋かい耐力壁と面材耐力壁の違い

筋かい耐力壁は柱と梁で構成された四角いフレームに斜めの木材を入れる伝統的な工法で、三角形の構造により横からの力に抵抗します 。筋かいは水平力の方向により、突っ張る形で圧縮力を負担する場合と引っ張られる形で引張力を負担する場合があり、材料要求も異なります 。
参考)https://iizukakazuki.net/blog/1542/

 

面材耐力壁は柱と梁のフレームに構造用合板やダイライトなどのパネルを釘・ビスで打ち付け、壁全体で力を受け止める比較的新しい工法です 。面材耐力壁は外力を耐力面材が受け止めて分散して軸材に伝える特性があり、筋かい耐力壁よりも安定した性能を発揮するとされています 。
参考)https://irishome.jp/magazine/staff-blog/iwao-s/24177

 

施工面では、筋かい耐力壁はコスト効率が良く、内装の自由度が高い一方、断熱材が入れにくいというデメリットがあります 。面材耐力壁は断熱材がムラなく入り、面で支えるため壊れにくく方向性もない利点がありますが、構造用合板では通気性の問題もあります 。
参考)https://om-seishin.com/glossary/tairyokuheki-sujikai-menzai/

 

耐力壁施工における注意点と問題

筋かい金物の施工では、設計図書で指定された壁倍率を確保できる筋かいプレートを基準通りに取り付けることが重要です 。他の金物との干渉や、羽子板ボルトとの競合により正しく施工できない場合があり、これらの問題は設計時点での検討不足によるものが多くあります 。
参考)https://www.takumi-probook.jp/tkbs/construction/const-sujikai/post-94

 

筋かい端部の取り付けでは、横架材のみでなく柱にも適切に接合する必要があり、筋かい側のビス不足や柱の背割り部分へのビス留めは効力がありません 。また、異なる種類の筋かい金物(ボックス型と二面施工型)を1本の筋かいで併用することはメーカー保証がないため避けるべきです 。
面材耐力壁の施工では、釘の種類と間隔が壁倍率に直接影響するため、仕様書通りの施工が不可欠です 。特に高倍率仕様では、従来のN50釘からCN50釘への変更が必要な場合があり、施工者への周知徹底が重要となっています 。
準耐力壁では、横架材間内法寸法に対する面材高さの割合により壁倍率が決まり、面材(構造用合板)の場合は基準倍率2.5倍に高さ比率を乗じて算出されます 。木ずりの場合は基準倍率0.5倍に高さ比率を乗じ、規定する準耐力壁の壁倍率は1.5倍以下となる制限があります 。