
転勤が決まった際、単身赴任を選択する場合は住宅ローンの継続が最も安全な選択肢となります。家族が引き続き住宅に居住している限り、契約者本人も居住しているものとみなされ、住宅ローンの契約条件に違反することはありません。
単身赴任時の重要なポイント。
国内単身赴任の場合、住宅ローン控除も継続して受けることができます。これは住宅ローン控除の適用要件である「本人の居住」について、家族の居住をもって本人の居住とみなす特例があるためです。
海外単身赴任の場合は注意が必要です。2016年4月1日以降に住宅を取得した場合は、家族が住み続けていれば住宅ローン控除を継続できますが、それ以前の取得では控除が停止されます。
家族全員で転勤先に移住する場合、住宅を賃貸に出すことを検討する方が多くいます。しかし、住宅ローンは原則として契約者の居住を前提としているため、賃貸活用には慎重な対応が必要です。
賃貸活用時の必須手続き。
多くの金融機関では、転勤などのやむを得ない事情による一時的な賃貸については承認する傾向にあります。ただし、無断で賃貸に出した場合は契約違反となり、一括返済を求められる可能性があります。
賃貸収入については不動産所得として確定申告が必要になります。また、将来的に戻ってくる可能性がある場合は、定期借家契約での賃貸を検討することが重要です。
住宅金融支援機構のフラット35を利用している場合、転勤などのやむを得ない場合には賃貸としての貸し出しを許可する旨が明記されています。
転勤により家族全員で転居した場合、住宅ローン控除は一時停止されますが、転勤期間終了後に再び居住する場合は再適用を受けることができます。
再適用の条件と計算方法。
例えば、入居から5年後に転勤し、3年後に戻ってきた場合、残りの2年間について住宅ローン控除を受けることができます。ただし、入居から10年が経過している場合は、控除期間が終了しているため再適用は受けられません。
重要な注意点として、転勤期間中に住宅を賃貸に出していた場合と空き家にしていた場合では、再適用の開始時期が異なります。
転勤前には「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。この手続きを怠ると再適用を受けられない可能性があります。
転勤先での長期居住が確実で、元の住宅に戻る予定がない場合は売却を検討することになります。売却時の最大の課題は、住宅ローン残高と売却価格の関係です。
売却検討時のチェックポイント。
ローン残高が売却価格を上回る「オーバーローン」の状態では、通常の売却ができません。この場合、以下の選択肢があります。
買い替えローンは、新居の購入資金と既存住宅ローンの残債を合わせて借り入れる制度です。ただし、総借入額が増加するため、返済能力の慎重な検討が必要です。
売却時の税務上の特例として、居住用財産の3,000万円特別控除や買い替え特例の適用可能性も検討する必要があります。これらの特例は転勤による売却でも適用される場合があります。
金融機関によって転勤時の住宅ローン対応には大きな差があります。不動産業従事者として、主要金融機関の対応実態を把握しておくことは重要です。
都市銀行の対応傾向。
地方銀行・信用金庫の対応。
意外に知られていない事実として、一部の金融機関では転勤族向けの特別な住宅ローン商品を提供しています。これらの商品では、転勤時の賃貸活用が最初から承認されていたり、返済条件の変更手続きが簡素化されています。
また、転勤の多い大手企業では、人事部門と金融機関が連携して従業員の住宅ローン問題をサポートする体制を整えている場合があります。このような企業では、転勤辞令と同時に住宅ローンの対応策についてもアドバイスを受けることができます。
金融機関選択時のポイント。
転勤が多い職業の方には、これらの要素を重視した金融機関選びをアドバイスすることが重要です。また、住宅ローン契約時に転勤の可能性について事前に相談しておくことで、実際の転勤時により円滑な対応が期待できます。
住宅ローンの借り換えによる対応も選択肢の一つです。現在の金融機関で転勤時の対応が困難な場合、より柔軟な対応をする金融機関への借り換えを検討することで、転勤時の選択肢を広げることができます。