特別決議と特殊決議の違いを解説

特別決議と特殊決議の違いを解説

株主総会における特別決議と特殊決議の違いとは?議決権、定足数、決議事項の要件を詳しく比較し、不動産業界で知っておくべき会社法の基礎知識を紹介。決議要件の違いが分かりますか?

特別決議と特殊決議の違い

株主総会決議の3つのタイプ
📝
普通決議

過半数の出席・過半数の賛成で可決

⚖️
特別決議

過半数の出席・2/3以上の賛成で可決

🔒
特殊決議

頭数要件と議決権要件の両方が必要

特別決議の定義と基本要件

特別決議は、株式会社の株主総会において、通常の議案よりも重要度が高く株主に大きな影響を及ぼす事項について決議を採る場合に用いられる決議方法です。
特別決議の成立要件は以下のとおりです。

  • 定足数要件:議決権を行使できる株主の過半数が出席
  • 表決要件:出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成

この要件は会社法309条2項に規定されており、普通決議よりも厳しい条件が設定されています。特別決議が必要とされる事項には、定款変更、合併、事業譲渡、資本金の減少などがあります。
不動産業界においても、不動産会社が事業譲渡や合併を行う際には特別決議が必要となるケースが多く、重要な手続きの一つです。また、不動産投資法人(REIT)の運営においても、資産運用会社の変更や投資方針の大幅な変更などで特別決議が求められることがあります。

 

株主総会の特別決議とは?普通決議との違いや決議事項を解説 - マネーフォワード

特殊決議の定義と厳格な要件

特殊決議とは、会社法第309条第3項や4項で定められている、会社にとって特に重要な事項を決議するために必要とされる株主総会決議です。特殊決議は特別決議と比較し、さらに重要な事項が対象となっており、限定的な場面でのみなされる決議で、特別決議以上に厳しい要件が課されています。
特殊決議は会社法上、二種類に分かれています。
会社法309条3項の特殊決議

  • 頭数要件:議決権を行使できる株主の過半数の賛成
  • 議決権要件:その株主の議決権の3分の2以上の賛成

会社法309条4項の特殊決議

  • 頭数要件:総株主の過半数
  • 議決権要件:総株主の議決権の4分の3以上

特殊決議の重要な特徴は、特別決議と異なり定足数の要件がない点です。代わりに、株主人数(頭数)の要件と議決権数の要件が両方必要になっており、大口株主の意向だけでは可決が難しい仕組みになっています。
株主総会の特別決議とは?成立要件や決議事項 - 顧問弁護士相談広場

特別決議の対象事項と不動産業への影響

特別決議が必要となる主な決議事項は以下のとおりです。

  • 定款変更:会社の基本的な規則を変更する場合
  • 合併:他の会社との統合を行う場合
  • 事業譲渡:重要な事業の一部または全部を他社に譲渡する場合
  • 資本金の減少:会社の資本構成を変更する場合
  • 解散:会社を解散する場合
  • 役員報酬の決定:一部のケースにおいて

不動産業界においては、以下のような場面で特別決議が重要になります。
🏢 不動産会社の事業統合:不動産仲介業者同士の合併や、デベロッパーによる買収など
🏠 事業譲渡による業態転換:賃貸管理業から売買仲介業への転換など
💰 資本政策の変更:不動産投資の拡大に伴う資本金の増減
📋 定款変更による事業拡大:新たな不動産関連サービスへの進出
特に不動産業界では、市場環境の変化に応じて事業戦略を柔軟に変更する必要があり、これらの決議は企業の将来を左右する重要な判断となります。

 

M&Aに必要な株主総会の特別決議とは?決議事項や要件など - 事業承継コンサルティング

特殊決議の対象事項と限定的な適用場面

特殊決議が必要となる決議事項は、極めて限定的で特殊な場面に限られています。主な対象事項は以下のとおりです。
会社法309条3項の特殊決議対象事項

  • 全部の株式を譲渡制限とする定款変更(公開会社から非公開会社への変更)
  • 株式譲渡制限株式を対価として交付する場合の合併契約承認
  • 株式譲渡制限株式を対価として交付する場合の株式交換契約承認

会社法309条4項の特殊決議対象事項

  • 株主ごとに異なる取り扱いを行う旨についての定款変更
  • 特定の株主に不利益を与える可能性がある定款変更

不動産業界における特殊決議の具体例。
🔐 非公開化による経営の安定化:上場不動産会社が非公開会社に転換し、長期的な不動産開発に集中
📊 株主優遇制度の導入:不動産投資における大口株主に対する特別な配当制度
🏘️ 地域密着型経営への転換:特定地域の株主に対する優遇措置を含む定款変更
特殊決議は、株主間の利害関係が複雑になりやすい場面で用いられるため、不動産業界でも家族経営の不動産会社が事業承継を行う際や、地域密着型の経営戦略を推進する場合などに重要な手続きとなります。

 

特殊決議 - 田辺経営 用語集

特別決議と特殊決議の議決権要件比較分析

特別決議と特殊決議の最も重要な違いは、議決権に関する要件の厳格さです。以下の表で詳細な比較を行います。

要件項目 特別決議 特殊決議(309条3項) 特殊決議(309条4項)
定足数要件 議決権の過半数が出席 なし なし
頭数要件 なし 議決権を行使できる株主の過半数 総株主の過半数
議決権要件 出席株主の議決権の2/3以上 その株主の議決権の2/3以上 総株主の議決権の3/4以上
可決難易度 中程度 高い 最高

この違いから分かるように、特殊決議は「出席株主」ではなく「議決権を行使できる株主」または「総株主」を基準とするため、より多くの株主の賛同が必要となります。
実務上の重要なポイント
🎯 特別決議の場合:株主総会に出席しない株主は決議に影響しません
特殊決議の場合:欠席株主も含めた全体の株主構成が決議成立に影響します
不動産業界では、地主など長期保有を前提とした株主が多いケースがあり、このような株主構成の違いが決議の成立可能性に大きく影響することがあります。特に家族経営の不動産会社では、親族間での意見調整が特殊決議の成立において極めて重要となります。

 

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