
都市計画法34条11号は、平成12年の都市計画法改正により新設された制度で、市街化調整区域における開発許可の例外規定として位置づけられています。この制度の根幹となる条文では、以下の要件を満たす区域での開発行為を許可対象としています。
主な立地基準
この制度の背景には、既存宅地確認制度の廃止に伴う救済措置としての側面があります。市街化調整区域内の既存集落では、すでに相当程度の公共施設が整備されているか、隣接する市街化区域の公共施設を利用可能であるため、積極的な公共投資を必要としないという考え方が基本となっています。
建築可能な建築物は、原則として第二種低層住居専用地域に建築できる建築物に準じており、住宅や共同住宅、150㎡以内の店舗等が対象となります。高さ制限は10メートル以下とされ、最低敷地面積は原則として300㎡以上が求められています。
条例指定区域の指定には、厳格な要件が設けられています。滋賀県の例を見ると、市街化区域から1km以内で、区域外の幅員6.5m以上の道路に接続している区域であることが求められています。また、区域内の道路幅員は原則6m以上(4mでも可)とされ、40以上の建築物が連たんする区域であることが条件となっています。
指定要件の詳細
令和4年4月1日の都市計画法施行令改正により、災害リスクの高いエリアは原則として条例指定区域から除外されることとなりました。具体的には、災害危険区域、浸水想定深3.0m以上の浸水ハザードエリア、土砂災害警戒区域が除外対象となっています。
手続きとしては、市町村長が県知事に申出を行い、県から告示・指定を受ける流れとなっています。指定後は、開発許可申請により建築が可能となりますが、不動産会社が開発許可を取得済みの土地も存在します。
都市計画法34条11号の運用は、市街化調整区域における農地転用動向に大きな影響を与えています。堺市を事例とした研究では、34条11号条例の施行により農地転用が促進され、残存農地の利用状況にも変化が生じていることが明らかになっています。
農地転用の実態を見ると、営農を断念して耕作放棄地となるケースと、農地を他用途に転用する農転地のケースが混在しています。特に農転地は再転用による農地復帰が現実的でなく、食糧生産機能や自然的機能などの農地が持つ多面的機能が半永久的に失われる点が問題視されています。
農地転用への影響要因
研究によると、農地転用により日照条件や水利条件が悪化し、周辺の残存農地の営農環境に悪影響を与える可能性が指摘されています。このため、34条11号区域の指定にあたっては、農業的土地利用との調和を図る配慮が重要となっています。
近年、都市計画法34条11号区域の廃止や縮小に踏み切る自治体が増加しています。代表的な事例として、大阪府堺市と埼玉県川越市が区域指定の全面廃止を実施しており、その要因分析が注目されています。
廃止に至る主な要因として、以下の点が挙げられています。
廃止要因の分析
国土交通省が推進するコンパクトシティ政策の影響により、市街地の拡散を抑制し、既存市街地への居住誘導を図る動きが加速しています。立地適正化計画の策定が進む中で、34条11号区域は縮小・廃止される傾向にあります。
不動産市場への影響は深刻で、区域指定から除外された土地は建築制限が強化され、不動産価値の大幅な下落が生じています。特に、すでに34条11号区域として開発された住宅地では、将来的な区域除外リスクが資産価値に影響を与える可能性があります。
市場への具体的影響
都市計画法34条11号を取り巻く環境は大きく変化しており、不動産業界としても戦略的な対応が求められています。人口減少社会の進行と災害リスクへの対応強化により、従来の開発手法の見直しが不可避となっています。
今後の展望として、以下の動向が予想されます。
制度運用の変化予測
不動産業界への提言として、34条11号区域での事業展開にあたっては、長期的な区域指定の継続性を慎重に評価することが重要です。特に、災害ハザードマップの確認、自治体の都市計画方針の把握、地域の人口動態分析などの事前調査が不可欠となります。
また、既存の34条11号区域内の物件取引においては、将来的な区域除外リスクを顧客に適切に説明し、リスク開示を徹底することが求められます。これにより、取引後のトラブル回避と顧客満足度の向上を図ることができます。
業界としての対応策
さらに、34条11号区域の縮小・廃止が進む中で、市街化区域内での開発や既存住宅のリノベーション事業への転換も検討すべき選択肢となっています。持続可能な事業展開のためには、制度変更に柔軟に対応できる事業ポートフォリオの構築が重要です。