空家等対策の推進に関する特別措置法と宅建業者の関わり
空家等対策法の重要ポイント
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法改正の背景
全国的な空き家増加問題に対応するため、2023年に法改正が行われ、2023年12月に施行されました
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管理不全空家の新設
特定空家等になる前の段階で指導・勧告が可能となり、固定資産税の住宅用地特例が解除されます
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宅建業者の役割拡大
空き家の流通促進や管理業務など、宅建業者の業務範囲と報酬体系が見直されました
空家等対策の推進に関する特別措置法の改正ポイント
空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家特措法)は、全国的に増加する空き家問題に対応するために2015年に施行された法律です。その後、空き家問題がさらに深刻化したことを受け、2023年6月に一部改正法が公布され、同年12月から施行されています。
改正の主なポイントは以下の通りです。
- 「管理不全空家」の新設
- 特定空家等になる前段階で市区町村長が指導・勧告できる制度を創設
- 管理不全空家に指定されると固定資産税の住宅用地特例(1/6)が解除される
- 空き家の発生予防策の強化
- 相続発生時の空き家の適切な管理・活用を促進
- 所有者等による空き家の適切な管理の責務を明確化
- 特定空家等に対する措置の強化
- 管理不全空家から特定空家等への移行をスムーズに
- 行政代執行の手続きの合理化
この法改正により、宅建業者にとっても空き家対策への関わり方が変化し、新たなビジネスチャンスや社会的責任が生まれています。
宅建業者が関わる空き家対策の特例措置
空き家問題の解決を促進するため、2024年7月1日から宅建業者に関わる特例措置が導入されました。これは国土交通省による「不動産業による空き家対策推進プログラム」の一環として実施されています。
特例措置の主な内容は以下の通りです。
- 低廉な空家等(800万円以下)の売買・交換の媒介報酬の特例
- 改正前:上限18万円×1.1(消費税込み19.8万円)
- 改正後:上限30万円×1.1(消費税込み33万円)
- 適用条件:税抜き売買代金が800万円以下の宅地・建物
- 売買・交換の代理報酬の特例
- 上限66万円(30万円×1.1の2倍)まで報酬を受け取ることが可能
- 相手方からも報酬を受ける場合は、合計額が66万円を超えてはならない
- 長期の空家等の貸借の媒介における特例
- 空家の持ち主(貸主)から家賃の2.2倍以内で媒介報酬を受け取ることが可能
- 借主からの報酬額と合わせて、家賃の2.2倍を超えない範囲で設定
これらの特例措置により、宅建業者は空き家の流通促進に積極的に取り組むことができるようになりました。特に低額物件や長期間空き家となっている物件の取引において、適正な報酬を得られるようになったことは大きな変化です。
空家等対策における宅建業者の媒介以外の関連業務
今回の法改正では、宅建業者の業務範囲についても明確化されました。特に注目すべきは、媒介業務以外の関連業務についても宅建業者が積極的に取り組むことが期待されている点です。
宅建業者が行える媒介以外の関連業務。
- 空き家・空き室等の利活用に関する業務
- 空き家の課題整理や権利関係への助言
- 空き家の利活用方針の提案
- 相続に伴う権利関係の助言
- 専門職種(税理士、司法書士、工務店、金融機関など)の紹介
- リフォームの提案や総合調整
- 空き家の管理業務
- 遠隔地に居住する所有者等に代わって行う空き家の管理
- 具体的な管理内容:除草・草取り・通風・清掃・点検・修繕等の提案
- 定期的な見回り、ポストの確認・郵便物の転送等
これらの業務を行う際の重要なポイントは、媒介契約とは別に契約を締結し、業務内容や報酬額を明確にすることです。このように契約を分けることで、宅建業法第46条第2項の報酬制限に違反することなく、適正な報酬を受け取ることが可能となります。
空家等対策の推進に関する特別措置法と固定資産税の関係
空家特措法の改正により、空き家の管理状態と固定資産税の関係が強化されました。特に注目すべきは「管理不全空家」の新設による税制面への影響です。
固定資産税に関する主なポイント。
- 住宅用地の特例措置
- 一般的な住宅用地:固定資産税が1/6に軽減
- 小規模住宅用地(200㎡以下):固定資産税が1/6に軽減
- 管理不全空家への対応
- 市区町村長が管理不全空家として勧告すると、住宅用地特例が適用されなくなる
- 結果として固定資産税が最大6倍に増加する可能性がある
- 特定空家等への措置
- 従来から特定空家等に指定され勧告を受けると住宅用地特例が解除
- 管理不全空家から特定空家等への移行がスムーズになったことで、税制面での影響も考慮する必要がある
宅建業者としては、売主や買主に対してこれらの税制面の影響を適切に説明することが重要です。特に空き家の状態によっては、将来的な税負担が大きく変わる可能性があることを理解してもらう必要があります。
国土交通省による空家等対策の推進に関する特別措置法の概要と最新情報
空家等対策と宅建業者のデジタル技術活用の可能性
空き家対策において、近年注目されているのがデジタル技術の活用です。宅建業者が最新技術を取り入れることで、空き家の管理や流通促進に新たな価値を提供できる可能性があります。
デジタル技術を活用した空き家対策の例。
- IoT技術を活用した空き家管理
- センサーによる温度・湿度のモニタリング
- 防犯カメラによる不法侵入の監視
- 水漏れや火災の早期検知システム
- スマートフォンアプリでの遠隔管理
- VR/AR技術を活用した空き家の流通促進
- バーチャルツアーによる遠隔地からの内覧
- ARを活用したリノベーションのシミュレーション
- 3Dスキャンによる正確な物件情報の提供
- AI技術の活用
- 空き家の最適な活用方法の提案
- 地域特性に基づく需要予測
- 適正価格の算出支援
- ブロックチェーン技術の活用
- 不動産取引の透明性向上
- スマートコントラクトによる契約の自動化
- 所有権移転の効率化
これらのデジタル技術は、特に遠隔地に住む所有者と空き家をつなぐ手段として有効です。宅建業者がこうした技術を積極的に取り入れることで、空き家対策における新たな付加価値を創出し、ビジネスチャンスを広げることができるでしょう。
不動産テック協会による不動産業界のデジタル化に関する調査報告
空家等対策における宅建業者の実務と今後の展望
空家特措法の改正により、宅建業者の役割は単なる不動産の仲介業務から、空き家の管理や利活用の提案など、より幅広い業務へと拡大しています。この変化は宅建業者にとって新たなビジネスチャンスであると同時に、社会的責任を果たす機会でもあります。
空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく宅建業者の実務対応
宅建業者が空家特措法の改正を踏まえて実務で対応すべきポイントは多岐にわたります。以下に主な実務対応をまとめました。
- 媒介契約時の対応
- 低廉な空家等(800万円以下)の媒介契約を締結する際は、特例措置について説明
- 報酬額について事前に明確な説明と合意を得る
- 媒介契約書に特例適用の旨を明記
- 管理不全空家・特定空家等の取り扱い
- 物件調査時に管理状態を確認し、管理不全空家や特定空家等に該当する可能性を検討
- 該当する場合は、買主に対して固定資産税の特例解除について説明
- 将来的なリスクについても適切に情報提供
- 空き家管理業務の契約
- 媒介契約とは別に管理業務の契約を締結
- 業務内容、報酬額、期間などを明確に記載
- 定期的な報告方法についても取り決め
- 空き家の利活用提案
- 地域のニーズや特性を踏まえた利活用方法の提案
- リフォームやリノベーションの具体的なプラン提示
- 補助金や税制優遇措置の情報提供
これらの実務対応を適切に行うことで、空き家所有者の信頼を獲得し、長期的な関係構築につなげることができます。また、地域の空き家問題解決に貢献することで、宅建業者としての社会的評価も高まるでしょう。
宅建業者による空き家バンクとの連携強化
全国各地で自治体が運営する「空き家バンク」と宅建業者の連携は、空き家対策の重要な取り組みの一つです。空家特措法の改正を受けて、この連携はさらに強化されることが期待されています。
空き家バンクと宅建業者の連携の実態。
- 連携の形態
- 自治体と宅建協会の協定締結による組織的な連携
- 個別の宅建業者が空き家バンク登録物件の仲介を担当
- 宅建業者による空き家の発掘と空き家バンクへの登録促進
- 宅建業者のメリット
- 新たな物件情報の獲得
- 自治体との関係強化
- 地域貢献によるブランディング効果
- 特例措置による適正な報酬の確保
- 効果的な連携のポイント
- 定期的な情報共有の場の設定
- 空き家所有者向けセミナーの共同開催
- 物件調査や価格査定の協力体制構築
- 移住希望者向けの総合的なサポート提供
- 先進事例
- 山形県鶴岡市:宅建協会と連携した「空き家コーディネーター」制度
- 島根県雲南市:宅建業者と建築士による「空き家再生プロジェクト」
- 長野県佐久市:宅建業者と連携した「空き家見学ツアー」の実施
空き家バンクと宅建業者の連携を強化することで、空き家の流通促進だけでなく、地域の活性化にも貢献することができます。特に地方都市や過疎地域では、この連携が移住促進や地域再生の鍵となるでしょう。
国土交通省による空き家バンクの活用等による空き家に関する情報の提供について
空家等対策の推進に関する特別措置法と宅建業者の社会的責任
空家特措法の改正は、宅建業者に対して単なるビジネスチャンスだけでなく、社会的責任の側面も強調しています。宅建業者は不動産のプロフェッショナルとして、空き家問題の解決に積極的に関わることが期待されています。
宅建業者の社会的責任と取り組み。
- 地域コミュニティへの貢献
- 空き家の適切な管理による治安維持や景観保全
- 空き家の利活用による地域活性化
- 空き家問題に関する地域住民への啓発活動
- 環境負荷の軽減
- 既存住宅の活用によるエコロジカルな住環境の実現
- リノベーションによる省エネ住宅への転換促進
- 解体時の廃棄物削減や適正処理の提案
- 住宅セーフティネットへの貢献
- 低所得者や高齢者向けの住宅確保
- 災害時の一時避難所としての空き家活用提案
- 福祉施設や子育て支援施設への転用提案
- 空き家所有者への適切な情報提供
- 管理不全による周辺への影響の説明
- 固定資産税や相続税に関する情報提供
- 適切な維持管理や処分方法のアドバイス
宅建業者がこれらの社会的責任を果たすことで、地域社会からの信頼を獲得し、持続可能なビジネスモデルを構築することができます。また、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、空き家対策への取り組みは重要な意義を持っています。
空家等対策の推進に関する特別措置法と今後の宅建業界の展望
空家特措法の改正を契機として、宅建業界は今後どのように変化していくのでしょうか。空き家問題の深刻化と法制度の整備を背景に、宅建業者の役割や業務内容は大きく変わる可能性があります。
今後の宅建業界の展望。
- ビジネスモデルの多様化
- 仲介業務だけでなく、管理業務やコンサルティング業務の拡大
- サブスクリプションモデルによる空き家管理サービスの普及
- リノベーション・リフォームとの連携による付加価値創出
- 空き家の利活用提案による新たな収益源の確保
- 専門性の高度化
- 空き家管理のプロフェッショナルとしての知識・技術の習得
- 法律・税制・建築など多分野の知識の必要性
- デジタル技術を活用した新たなサービス提供能力
- 地域特性を踏まえた空き家活用の企画力
- 業界再編の可能性
- 総合不動産サービス企業の台頭
- 地域密着型の中小宅建業者の専門特化
- 異業種との連携・協業の拡大
- M&Aによる規模拡大や機能強化
- 公共的役割の強化
- 自治体との連携による空き家対策の推進
- 地域まちづくりへの積極的な参画
- 空き家問題に関する啓発・教育活動
- 災害時の住宅確保支援など社会貢献活動
これらの変化に対応するためには、宅建業者自身が常に最新の情報を収集し、専門性を高めていくことが重要です。また、地域社会との関係構築や他業種との連携を積極的に進めることで、空き家問題の解決に貢献しながら、持続可能なビジネスを展開していくことが求められます。
全宅連による空き家対策の手引き
以上のように、空家等対策の推進に関する特別措置法の改正は、宅建業者にとって大きな変化をもたらしています。この変化を前向きに捉え、空き家問題の解決に積極的に取り組むことで、宅建業者は社会的な価値を創出しながら、新たなビジネスチャンスを獲得することができるでしょう。