地方分権一括法とはわかりやすく解説

地方分権一括法とはわかりやすく解説

地方分権一括法とは何か、機関委任事務の廃止や自治事務と法定受託事務の違いなど、宅建受験生にとって重要なポイントをわかりやすく解説します。地方分権一括法はなぜ必要だったのでしょうか?

地方分権一括法とはわかりやすく

地方分権一括法の基本知識
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地方分権一括法の定義

国と地方自治体の関係を対等・協力関係に改革する法律

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機関委任事務の廃止

中央集権システムの核となる機関委任事務制度を廃止

⚖️
新しい事務区分

自治事務と法定受託事務の2つに事務を整理

地方分権一括法の基本概念と成立背景

地方分権一括法(正式名称:地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律)は、1999年7月に制定され、2000年4月に施行された画期的な法律です。この法律は、中央集権的な行政の在り方を見直し、国から地方へ権限や財源の移譲を進めることを目的としています。
参考)https://japanknowledge.com/introduction/keyword.html?i=1302

 

地方分権一括法の背景には、地方自治体の役割と国の役割を明確に分ける必要性がありました。1993年に衆議院・参議院両院による「地方分権の推進に関する決議」が行われ、その後1995年に地方分権推進委員会が設置されたことから本格的な地方分権改革が始まりました。
参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2023pdf/20230601034.pdf

 

この法律の最大の特徴は、国と地方自治体の関係を従来の上下関係から対等・協力関係に根本的に改革したことです。地方分権一括法により、地方自治体の自主性と自立性が大幅に向上し、地域の特性に応じた独自の行政運営が可能になりました。
参考)https://kids.gakken.co.jp/jiten/dictionary04200203/

 

内閣府の地方分権一括法に関する詳細な説明ページ

地方分権一括法による機関委任事務制度の廃止

地方分権一括法における最も重要な改革の一つが、機関委任事務制度の完全廃止です。機関委任事務とは、地方公共団体の首長(都道府県知事市町村長)等が法令に基づいて国から委任され、「国の機関」として処理する事務のことでした。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E9%96%A2%E5%A7%94%E4%BB%BB%E4%BA%8B%E5%8B%99

 

機関委任事務制度は、日本における中央地方関係の集権制の象徴として多くの地方自治研究者や自治体関係者から批判されてきました。この制度の下では、地方自治体は国の下部機関として位置づけられ、自主的な判断で行政を運営することが困難でした。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/publicpolicystudies/7/0/7_117/_article/-char/ja/

 

機関委任事務制度の廃止により、国による包括的指揮監督権も廃止され、地方公共団体は独自の条例制定権を大幅に拡充することができるようになりました。従来の機関委任事務は、国の直接執行事務とされたものや事務自体が廃止されたものを除いて、自治事務と法定受託事務という新たな事務区分に整理されました。
参考)https://www.bunken.nga.gr.jp/activity/chronology/bunken/kikanininjimu/

 

全国知事会による機関委任事務廃止の詳細解説

地方分権一括法における自治事務と法定受託事務の違い

地方分権一括法により、地方自治体が行う事務は自治事務と法定受託事務の2つに明確に分類されました。この新しい事務区分は、地方自治体の自主性確保において極めて重要な役割を果たしています。
参考)https://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_okinawa31/jichiken31/1/1_1_j_24/1_1_j_24.htm

 

自治事務は、地方自治体が自主的に行う行政事務で、地域の特性に応じて独自に処理する事務です。具体例として、地域の公園・緑地の整備管理、地域文化の振興、地域医療サービスの提供、地域の防災・消防活動、環境保全、産業振興などがあります。自治事務では地方自治体の裁量が大きく、地方自治体の条例や規則に基づいて実施されます。
参考)https://recommendsaas.jp/government-dictionary/local-government-tasks/

 

法定受託事務は、国が本来果たすべき役割に係る事務であって、国が地方自治体に委託して行わせる事務です。法定受託事務では国の関与が強く、地方自治体の裁量が限定的で、必ず法律のどこかにその事務が法定受託事務であることが明記されます。
参考)https://akiyoshijun.com/jichiseido-kunitojichitai-houteijutakujimutojichijimu/

 

この区分により、国の関与の方法も大きく変わりました。法定受託事務については国が処理基準を設定でき「是正の指示」を行えますが、自治事務についてはこのような強い関与はできません。

地方分権一括法が宅建業法に与えた実務的影響

地方分権一括法は宅建業法の運用にも重要な影響を与えました。従来、宅地建物取引業の免許や監督に関する事務の多くは機関委任事務として処理されていましたが、地方分権一括法により事務の性質が明確化されました。
参考)https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/1210/bunken/tihoubunnkenn.html

 

宅建業者の免許申請や更新、業務監督などの事務は、現在では主に法定受託事務として位置づけられています。これにより、都道府県知事は国の処理基準に従いつつも、地域の実情に応じた柔軟な対応が可能となりました。
地方分権一括法により、宅建業法の運用においても「義務付け・枠付け」の見直しが行われ、都道府県から市町村への権限移譲が段階的に進められました。例えば、都市計画法に基づく開発許可や建築基準法に基づく建築確認などの権限が、住民に身近な市町村に移譲されることで、より迅速で地域に密着した行政サービスの提供が可能になりました。
また、宅建業者が関わる土地利用規制や建築規制についても、地方自治体の条例制定権の拡充により、地域の特性に応じたより細かな規制が可能となりました。これは宅建業者にとって、地域ごとの規制内容をより詳細に把握する必要性が高まったことを意味します。

地方分権一括法の累次改正と現在の展開

地方分権一括法は2000年の施行以降も継続的に改正が重ねられており、2024年6月現在で第14次まで制定されています。これらの累次改正は「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」として、地方分権改革を段階的に推進しています。
参考)https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/ikkatsu/ikkatsuhou.html

 

第1次から第15次までの地方分権一括法では、国から地方公共団体または都道府県から市町村への事務・権限の移譲、地方公共団体への義務付け・枠付けの緩和等が継続的に行われています。最近の改正では、自家用有償旅客運送の登録・監査権限の市町村への移譲なども含まれており、より住民に身近な行政サービスの地方移譲が進んでいます。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000327098.pdf

 

地方分権改革推進法(2006年制定)により設置された地方分権改革推進委員会は、具体的な指針を政府に勧告し、地方分権改革推進計画の策定を通じて継続的な改革を推進しています。この一連の改革により、地方自治体の財政自主権の拡大や条例制定権の強化が図られ、真の地方自治の実現に向けた取り組みが続けられています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%96%B9%E5%88%86%E6%A8%A9%E6%94%B9%E9%9D%A9%E6%8E%A8%E9%80%B2%E6%B3%95

 

総務省による地方分権改革の経緯と今後の展望に関する資料