
地方公営企業法の全部適用では、事業管理者の設置が義務付けられ、地方公共団体の長から独立した広範な権限が付与されます。 具体的には、予算原案の作成、一部の契約、職員の採用や給与などについて独立した権限を得ることができます。
参考)https://www.iryoken.co.jp/hospital/qa/detail.html?id=544
この権限委譲により、従来の市長主導の意思決定プロセスから脱却し、事業管理者が経営に関する重要事項を迅速に判断できるようになります。 特に医療政策や診療報酬改定への迅速な対応が可能となり、変化する市場環境に柔軟に適応できる経営体制が構築されます。
参考)https://www.iryoken.co.jp/hospital/qa/detail.html?id=543
事業管理者は地方公営企業の経営に関し識見を有する者のうちから地方公共団体の長が任命し、任期は4年とされています。 このように専門性を重視した人材配置により、より効率的な企業運営が期待できます。
参考)http://www.koukirou.or.jp/users/webmaster/shiryo/kigyoho.PDF
全部適用の最大のメリットの一つは、病院事業を総括的に管理する事業管理者の設置により経営責任が明確になることです。 一部適用では経営責任が不明確でしたが、全部適用により事業管理者が経営責任を担うことになります。
この経営責任の明確化は、組織運営や体制の構築に関する権限が地方公共団体の長より委譲されることで実現されます。 事業管理者には、会計事務・予算原案の作成・決算の調製・職員人事・契約等の地方公営企業における業務全般の権限が付与され、企業としての独立性が確保されます。
参考)https://www.town.aikawa.kanagawa.jp/material/files/group/4/gesuidoukoueikigyou.pdf
特に注目すべきは、業績に応じた給与体系の導入が可能になることです。 これにより職員一人ひとりの経営意識が高まり、効率的で生産性の高い医療を実現しやすい環境が整備されます。経営状況等を考慮した労使交渉により給与が決定され、民間企業に類似した取扱いとなります。
地方公営企業法の適用により、最も大きなメリットとして各公営企業における財務情報の把握が可能となります。 公営企業会計の適用により、管理運営に係る取引(損益取引)と建設改良に係る取引(資本的取引)が明確に区分され、損益情報・ストック情報の把握による適切な経営戦略の策定が可能になります。
参考)https://www.deloitte.com/jp/ja/Industries/government-public/perspectives/audit-public-local4.html
全部適用により、行政と異なる会計方式(発生主義、複式簿記、損益取引に分離した経理等)の採用により経営内容が明確になります。 これまで曖昧だった収益性の把握が精緻に行えるようになり、経営判断の質が大幅に向上します。
また、公営企業会計の導入により黒字・赤字が顕在化し、経営判断に資することができるようになります。 資産と負債の最適化を意識することにより、最少の経費で最大の効用の発揮を図る経営マインドを持った人材が要請される効果も併せて見込まれます。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000613383.pdf
全部適用では管理者を設置することとなり、管理者には公営企業の業務の執行に関して法律上広範な権限が与えられるため、公営企業の自主独立性が確保され、より自律性の高い企業の運営と機動的に活動できる態勢をとることが可能となります。
組織体制において、一部適用では地方公共団体の長が業務を執行しますが、全部適用では原則として管理者を設置し、管理者が業務全般の権限を持ちます。 この組織の独立性により、議会の関与や長の指揮監督を必要最小限にとどめ、自らの判断と責任において事業体の運営ができるようになります。
参考)https://www.city.kashiwara.lg.jp/docs/2024091000020/file_contents/tekiyouhaninohenkou.pdf
特に重要なのは、企業職員については団結権及び団体交渉権が認められ、給与については団体交渉の対象とし、業務能率や企業全体の経営成績を考慮したものであることが原則とされることです。 これにより民間企業に類似した取扱いとなり、より企業の経済性を発揮することが可能となります。
全部適用において特筆すべきメリットは、人事制度における柔軟性の大幅な向上です。一部適用では職員の給与が市の決定する給与と同額に固定されていましたが、全部適用では経営状況等を考慮した後、労使交渉を経て給与が決定されます。
職員の採用に関する権限も、一部適用では市長にありましたが、全部適用では事業管理者に委譲されます。 これにより、事業の特性や専門性に応じた適切な人材確保が可能となり、特に医療技術の高度化や専門化に対応した採用戦略を実施できます。
企業職員概念の導入により、身分取扱いに差異が生まれ、地方公営企業等の労働関係に関する法律の適用を受けるようになります。 この結果、より企業的な人事管理が可能となり、成果主義的な評価制度や競争力のある処遇体系を構築できる環境が整います。
ただし、業績に応じた給与体系の導入は、経営状況の悪化に伴い給料減少を招く恐れがあるため職員の不安を煽る可能性もあり、労務管理の負担が増える側面もあります。 このため、導入に際しては職員への十分な説明と理解促進が重要となります。
総務省の地方公営企業法適用に関するガイドラインには、具体的な導入手順と留意事項が詳細に記載されています
病院経営研究所では、全部適用のメリット・デメリットを具体的な事例とともに解説しています