営業権償却国税庁における処理方法

営業権償却国税庁における処理方法

営業権の償却について国税庁が定める取扱いを詳しく解説します。平成29年税制改正による月割計算への変更点や耐用年数5年の定額法による償却方法、M&Aで発生するのれんとの違いなど、実務で必要な知識はこちらでわかりますか?

営業権償却国税庁の取扱い

営業権償却国税庁の重要ポイント
📊
法定耐用年数5年

定額法による均等償却で税務処理

📅
月割計算の導入

平成29年4月1日以後取得分から適用

🔍
のれんとの区別

独立取引慣行の有無で判定

営業権の法定耐用年数と償却方法

国税庁が定める営業権の償却については、法定耐用年数5年での定額法による償却が基本となっています 。営業権は無形減価償却資産として扱われ、毎年均等に償却を行います 。
参考)https://koyano-cpa.gr.jp/nobiyo-kaikei/column/5482/

 

税務上の営業権は「独立した資産として取引される慣習のある無形資産」と位置づけられており、具体的には繊維工業における織機の登録権利、許可漁業の出漁権、タクシー業のナンバー権などが例示されています 。これらは法令の規定や行政官庁の指導による規制に基づく登録・認可・許可・割当て等の権利を獲得するために支出した費用として処理されます。
参考)https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2022/x20220408/

 

償却の計算方法は、取得価額を5年(60カ月)で除した金額が年間の償却限度額となります。例えば5,000万円の営業権を取得した場合、年間の償却額は1,000万円(5,000万円÷5年)となります 。
参考)https://ma-la.co.jp/m-and-a/business-goodwill/

 

平成29年度税制改正による月割計算の導入

平成29年度税制改正により、営業権の償却方法に重要な変更が加えられました 。改正前は事業年度単位での償却計算であったため、事業年度内のいつ取得しても12ヶ月分の償却が可能でしたが、改正後は取得年度において月割計算を行うこととなりました 。
参考)https://tax.mykomon.com/daily_contents_36572.html

 

この改正は平成29年4月1日以後に取得した営業権について適用され、所得税についても同様の取扱いとなります 。資産調整勘定および負債調整勘定についても同じく月割計算が導入されています。
参考)https://tax-bestbalance.com/news18.html

 

具体的な計算例として、営業権が5,000万円で発生日が20X1年10月1日、事業年度終了日が20X2年3月31日の場合、発生日から事業年度終了日までの月数は6ヵ月となります。この場合の償却額は、5,000万円×6ヵ月÷60ヵ月=500万円となります 。
改正前後の違いを3月決算法人で比較すると、2,000万円の営業権を10月に取得した場合、改正前は2,000万円×12/60=400万円でしたが、改正後は2,000万円×6/60=200万円となり、取得年度の償却額が半減することになります 。
参考)https://www.yamada-partners.jp/reform/h29/h11-review-of-goodwill-amortization-method

 

営業権とのれん(資産調整勘定)の税務上の区別

税務上、M&Aで発生する「のれん」は資産調整勘定として処理され、営業権とは明確に区別されます 。会計上の「のれん」から「営業権」を控除した金額が「資産調整勘定」として取り扱われることになります 。
参考)https://toranomaki.cpa-furuhata.com/archives/2405

 

資産調整勘定は「買収価額-税務上の時価純資産」で計算され、会計上ののれんとは計算基準が異なります 。資産調整勘定も営業権と同じく5年間での均等償却となりますが、その性質は異なるものです。
営業権として認められるためには「独立した資産として取引される慣習があるもの」という要件を満たす必要があり、単なる企業の超過収益力やブランド力だけでは営業権には該当しません 。この判定は実務上重要なポイントとなっており、適切な区分により正確な税務処理が求められます。
負債調整勘定についても営業権と同様に月割計算の対象となり、退職給与負債調整勘定、短期重要負債調整勘定、差額負債調整勘定の3つに分類されます 。
参考)https://www.strike.co.jp/about_ma/tax_goodwill.html

 

営業権の評価方法と取得価額の算定基準

営業権の評価については、企業価値算定の三つのアプローチ(コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチ)を組み合わせて決定するのが一般的です 。DCF法では将来キャッシュフローを基に事業価値を算定し、純資産との差額を営業権として評価します 。
参考)https://ma-succeed.jp/content/knowledge/post-8526

 

超過収益法では、企業の超過収益力を基に営業権の価値を算定します。相続税評価における営業権は、超過利益金額に営業権の持続年数に応じた複利年金現価率を乗じて計算されます 。持続年数は原則として10年とされますが、実際の計算では時価を考慮した現価率が適用されます。
参考)https://osd-souzoku.jp/eigyouken/

 

年買法(年倍法)では、年間利益の数倍で営業権を評価する簡便な方法として用いられることがあります。類似会社比較法では、同業他社の取引事例を参考に営業権を評価しますが、比較可能な事例の入手が課題となることも多いのが実情です 。
参考)https://www.ma-cp.com/about-ma/right-to-operate-in-manda/

 

時価純資産法は、対象企業の貸借対照表をもとに総資産から総負債を差し引き、純資産に基づいて算定するため客観的な評価が可能ですが、将来性や無形資産の価値が反映されにくいという限界があります 。

営業権償却に関する税務調査のポイントと注意事項

税務調査では、営業権の価額および償却方法が重要な焦点となります 。特に法律上ないし事実上の権利については、損金処理か資産の取得価額かの判定が問題となることが多く見られます。
参考)http://www.cpta.jp/index.php?%E7%A8%8E%E5%8B%99%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%96%B6%E6%A5%AD%E6%A8%A9

 

営業権の取得価額が適正かどうかの判定において、国税庁は取引の合理性や第三者間取引としての妥当性を重視します。関連会社間での営業権取引については、移転価格税制の観点からも慎重な検討が必要となります。実際の超過収益力に見合わない高額な営業権価額は、税務上の否認リスクを伴います。

 

償却方法についても、平成29年度改正による月割計算への変更が適切に適用されているか確認されます 。改正前後の取得時期により計算方法が異なるため、取得日の正確な把握と適切な償却計算の実施が求められます。
また、営業権として処理すべき無形資産を他の資産として計上した場合、本来の償却期間との差により課税所得に影響を与える可能性があります 。例えば、本来5年で償却すべき営業権を、より長期の償却が認められる他の無形資産として処理した場合、過少申告となるリスクがあります。
参考)https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/80/03/index.htm

 

M&A取引における営業権の認識についても、のれんとの適切な区分や資産調整勘定との関係性について詳細な検証が行われることがあります 。企業結合時の取得原価配分や識別可能無形資産の評価についても、税務上の取扱いと会計上の取扱いの相違点を理解した適切な処理が不可欠となります。