不動産の表示に関する公正競争規約内容と施行規則の詳細解説

不動産の表示に関する公正競争規約内容と施行規則の詳細解説

不動産業界の自主規制ルールである公正競争規約の内容と施行規則について、必要な表示事項や特定事項の明示義務、表示基準などを詳しく解説します。あなたの不動産広告は規約に適合していますか?

不動産の表示に関する公正競争規約内容

不動産表示規約の基本構造
📋
規約の目的と責務

不当な顧客誘引を防止し、消費者の自主的選択と事業者間の公正競争を確保

📝
必要な表示事項

物件種別ごとに定められた必須記載項目と見やすい表示方法

⚠️
特定事項の明示義務

消費者が予期できない不利な条件の明瞭な表示義務

不動産表示規約の目的と事業者責務

不動産の表示に関する公正競争規約は、不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された業界の自主規制ルールです。この規約の主要な目的は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することにあります。

 

事業者は不動産広告の社会性を深く認識し、この規約を遵守することが求められています。特に重要なのは、社会的・経済的諸事情の変化に即応しつつ、常に適正な広告表示を行う責務を負っていることです。

 

規約の適用範囲は以下の広告表示に及びます。

  • インターネットによる広告表示
  • チラシ、ビラ、パンフレット等による広告表示
  • ポスター、看板、のぼり、垂れ幕等による広告表示

この規約は昭和38年に認定され、全国9地区にある不動産公正取引協議会が運用しています。加盟事業者は必ずこの規約を遵守しなければならず、違反した場合は業界内での処分対象となります。

 

不動産広告の必要な表示事項と施行規則

必要な表示事項とは、いわゆる「物件概要」のことで、施行規則第4条で定める表示媒体で広告を行う場合には必ず記載しなければならない項目です。これらの事項は「見やすい場所に、見やすい大きさ(原則として7ポイント以上の大きさの文字)、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に表示」する必要があります。

 

表示すべき事項は「別表1から別表10」において、物件種別ごとに具体的に規定されています。主な物件種別と必要な表示事項は以下の通りです。
分譲宅地(小規模団地を含む)の場合:

  • 取引態様
  • 物件の所在地
  • 交通の利便性
  • 団地の規模
  • 面積
  • 価格
  • 設備・施設等

新築分譲住宅・マンションの場合:

  • 上記に加えて建物の構造・規模
  • 住宅ローン等の条件
  • 管理費・修繕積立金(マンションの場合)

施行規則では、これらの表示事項について詳細な基準を定めています。例えば、交通の利便性については、最寄り駅からの徒歩時間を「徒歩○分」と表示する際は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出することが規定されています。

 

不動産表示における特定事項の明示義務

特定事項の明示義務は、規約第13条で定められた重要な規定です。これは、一般消費者が通常予期することができない物件の地勢、形質、立地、環境等に関する事項又は取引の相手方に著しく不利な取引条件について、見やすい場所に明瞭に表示しなければならないというものです。

 

具体的な特定事項には以下のようなものがあります。
物件の状況に関する事項:

  • 古家等がある土地の場合:「現況:古家あり」の表示
  • 高圧線下の物件:高圧線下である旨とおおむねの面積を明示
  • 土地の形質:がけ地、低地、埋立地等の表示
  • 法令上の制限:建築基準法都市計画法等による制限

取引条件に関する事項:

これらの特定事項は、賃貸住宅を除くすべての物件について表示義務があります。表示方法についても、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に表示することが求められています。

 

興味深いことに、高圧線下である旨を「地役権設定有」等の文言で表示している事例が見受けられますが、この表示をもって高圧線下である旨を表示したことにはならないため注意が必要です。

 

不動産広告の表示基準と価格表示規則

表示基準は規約第15条で定められており、物件の内容・取引条件等について表示する際の詳細な基準を規定しています。施行規則第10条では、これらの基準について具体的な表示方法を定めています。

 

取引態様の表示:

  • 売主、代理、媒介の別を明確に表示
  • 媒介の場合は「仲介」と表示することも可能

物件の所在地表示:

  • 地番又は住居表示による正確な所在地
  • 現地案内図の添付(一定の場合)

交通の利便性表示:

  • 最寄り駅からの徒歩時間(80m=1分で算出)
  • バス利用の場合はバス停名と所要時間
  • 自動車利用の場合の所要時間

価格・賃料の表示基準:
価格表示については特に詳細な規定があります。住宅の価格については1戸当たりの価格(敷地の価格及び建物に係る消費税等の額を含む)を表示することが基本です。

 

すべての住戸の価格を示すことが困難な場合は。

  • 新築分譲住宅・マンション:最低価格、最高価格及び最多価格帯を表示
  • 最多価格帯:売買に係る物件の価格を100万円刻みでみたときの最も多い価格帯

現況有姿分譲地の価格については、分割可能最小面積を明示して1平方メートル当たりの価格を表示し、価格が異なる土地があるときは、それぞれの面積を明示して最低価格及び最高価格を表示することが求められています。

 

不動産表示規約の改正動向と実務への影響

不動産の表示に関する公正競争規約は、社会情勢の変化や消費者ニーズの多様化に対応するため、定期的に改正が行われています。近年の主な改正内容には、デジタル化の進展に対応した表示方法の見直しや、消費者保護の観点からの規制強化が含まれています。

 

最近の改正ポイント:

  • インターネット広告における表示基準の明確化
  • 写真・動画使用時の注意事項の追加
  • 環境性能表示に関する新たな基準
  • 既存住宅の品質表示制度への対応

実務上、これらの改正は不動産事業者にとって重要な影響を与えています。特に、インターネット広告の普及により、従来の紙媒体とは異なる表示上の課題が生じており、規約もこれに対応する形で進化を続けています。

 

規約違反のリスクと対策:
規約に違反した場合、不動産公正取引協議会による指導・勧告・公表等の措置が取られる可能性があります。また、規約に参加しない事業者については、公正取引委員会が景品表示法に基づき排除命令などの行政処分を行います。

 

事業者は以下の点に注意して広告作成を行う必要があります。

  • 定期的な規約改正内容の確認
  • 社内チェック体制の整備
  • 従業員への継続的な教育・研修
  • 専門家との連携による適正性の確保

この規約は不動産業界の健全な発展と消費者保護を両立させるための重要な仕組みであり、すべての不動産事業者が正しく理解し、適切に運用することが求められています。

 

不動産公正取引協議会連合会の公式サイトでは最新の規約内容を確認できます。
https://www.rftc.jp/koseikyosokiyaku/
首都圏不動産公正取引協議会では詳細な施行規則を公開しています。
https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2019/01/h_kiyaku.pdf