
サラリーマンが不動産投資で節税できる最大の理由は、損益通算という制度にあります。この仕組みは、不動産所得で発生した赤字を給与所得と相殺することで、全体の課税所得を圧縮できる点が特徴です。
具体的には以下のような流れで節税効果が生まれます。
この仕組みで重要なのが減価償却費です。建物の購入代金を法定耐用年数で割って毎年経費計上できるため、実際の現金支出を伴わずに帳簿上の赤字を作ることが可能になります。
例えば、木造建物の法定耐用年数は22年ですが、築古物件なら耐用年数×20%の期間で償却できるため、より大きな減価償却費を計上できます。
不動産投資による節税効果は、サラリーマンの年収水準によって大きく変わります。特に効果が高いのは課税所得900万円以上の高所得者です。
年収別の所得税率と節税効果の目安。
課税所得 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 | 節税効果 |
---|---|---|---|---|
330万円以下 | 10% | 10% | 20% | 低い |
695万円以下 | 20% | 10% | 30% | 中程度 |
900万円以下 | 23% | 10% | 33% | 高い |
900万円超 | 33%以上 | 10% | 43%以上 | 非常に高い |
課税所得900万円以上の場合、所得税と住民税の合計税率が43%以上となり、譲渡所得税(長期保有20.315%)との税率差が大きくなります。この差額分が実質的な節税効果として現れるのです。
実際のシミュレーション例では、年収700万円のサラリーマンが2000万円のアパートに投資した場合、初年度で約9万円の節税効果が得られるケースもあります。
節税効果を最大化するには、物件選びが極めて重要です。減価償却費を大きく取れる物件ほど、会計上の赤字を作りやすくなるためです。
節税に有利な物件の特徴。
例えば、築15年の木造物件なら残存耐用年数は7年となり、建物価格2400万円の場合、年間約340万円の減価償却費を計上できます。
**意外と知られていない節税テクニック**として、建物と設備を分けて償却する方法があります。エアコンや給湯器などの設備は建物より短い耐用年数(6年程度)で償却できるため、初期の減価償却費をさらに増やすことが可能です。
不動産投資では、家賃収入から様々な経費を差し引くことができます。適切な経費計上により、課税所得をさらに圧縮できるのです。
計上可能な主な経費。
さらに、青色申告特別控除を活用すれば、最大65万円の特別控除を受けられます。これにより、不動産所得からさらに65万円を差し引くことができ、節税効果が高まります。
青色申告を行うには事前の届出が必要ですが、複式簿記での記帳と電子申告を行えば65万円控除を受けられます。簿記の知識がない場合でも、会計ソフトを使用すれば比較的簡単に対応可能です。
不動産投資による節税には、知っておくべき重要な注意点があります。単純に「節税になる」という理由だけで投資を始めると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
主な注意点とリスク。
特に重要なのが「課税の繰り延べ効果」の理解です。減価償却による節税は、実際には税金の支払いを先送りしているだけで、売却時に譲渡所得として課税されます。
ただし、所得税率と譲渡所得税率の差を活用すれば、実質的な節税効果は得られます。例えば、所得税率33%の人が長期譲渡所得税率20.315%で売却すれば、約13%の税率差分が節税効果となります。
リスク管理のポイント。
不動産投資は長期的な視点が重要です。短期的な節税効果だけでなく、将来的なキャッシュフローや資産価値の変動も考慮した総合的な判断が求められます。