
漁業権は漁業法に基づいて都道府県知事により免許される権利であり、一定の水面において特定の漁業を排他的に営むことができる重要な権利です 。現在の日本では、共同漁業権、区画漁業権、定置漁業権の3種類が存在しています 。
参考)https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/gyogyouken_jouhou3.html
共同漁業権は地元漁協が権利者となり、組合員が共同で漁場を利用する仕組みです 。この権利には第1種から第5種まで細かな分類があり、第1種は貝類や海藻類などの定着性水産動植物の採捕を対象とし、第2種は刺網や小型定置網などの固定式漁具を用いる漁業、第3種は地引き網やつきいそ漁業、第4種は寄魚漁業、第5種は内水面での漁業を対象としています 。
参考)https://yuime.jp/post/bigin-fishing-rights
区画漁業権は一定の区域内で養殖業を営む権利であり、真珠養殖の場合は免許期間が10年、その他の養殖業では5年となっています 。定置漁業権は水深27メートル以上の海域で大型定置網を設置する漁業を対象とし、免許期間は5年です 。
参考)https://www.pref.kagawa.lg.jp/suisan/gyogyo/gyogyouken/gyogyouken.html
漁業権取得には複雑な手続きが必要で、まず該当地域の都道府県に対して申請を行う必要があります 。申請には漁業権免許申請書、漁業協同組合の総会議事録抄本、代表理事組合長の資格を証する登記簿謄本、正組合員名簿などの書類が必要です 。
参考)https://yuime.jp/post/bigin-fishing-rights-cost
手数料は多くの都道府県で3,700円となっており、事前に申請書類一式をPDFで提出し、内容確認後に納付書が郵送される仕組みです 。手数料は最寄りの金融機関で納付し、納付済証を申請書に添付して提出します 。
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/menkyo/o120130/0003758/0010143.html
個人が直接漁業権を取得することは困難で、まず漁業協同組合の組合員になることが必要です 。組合員になるためには、組合の地区内に住所を有し、年間120日を超えて漁業に従事した実績が必要とされています 。また、出資金と賦課金の支払いも義務付けられており、新規加入は通常1月下旬に受け付けられ、3月の組合員資格審査委員会での承認を経て4月から組合員となります 。
参考)https://shikabe-gyogyou.jp/fishermans_work/be_a_fisherman
漁業権の存続期間は種類によって異なります 。共同漁業権は10年、区画漁業権は真珠養殖が10年でその他の養殖業は5年、定置漁業権は5年となっています 。これらの期間満了時には一斉切替えが行われ、新たな漁場計画に基づいて再免許される仕組みです 。
参考)https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/pdf/004_gyogyouhou_gaiyou.pdf
令和5年9月以降、各地で漁業権の一斉切替え時期を迎えており、都道府県知事が海区漁場計画を作成し、漁業者からの申請により免許が行われています 。平成30年の漁業法改正により、新たな定置漁業権は「地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者」に免許することとされ、漁業生産の増大、所得の向上、就業機会の確保などが重視されるようになりました 。
参考)https://lib.suisan-shinkou.or.jp/column/ondanka/vol14.html
特に定置漁業権については、これまで一斉切替え時期にのみ新規免許を行ってきましたが、近年の漁業を取り巻く状況の変化を踏まえ、一斉切替え時期によらない免許手続きも推奨されています 。
日本全国で現在免許されている漁業権は約14,573件となっています 。地域別では、大阪府で56件の共同漁業権と24件の区画漁業権が免許されており、泉佐野市以南の海域(海岸から約1~2km)に漁業権が設定されています 。
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/o120130/suisan/gyogyoken/index.html
徳島県では定置漁業権(大敷網)、区画漁業権(魚類養殖・藻類養殖)、第1種共同漁業権(定着性水産動植物の採捕)、第2種共同漁業権などが設定されています 。沖縄県では共同漁業権の対象種として、海藻類(モズク、ヒトエグサ、ヒジキ)、水産動物(ウニ、イセエビ、セミエビ、ゾウリエビ、ナマコ、タコ)、貝類(シャコガイ、タカセガイ、ヤコウガイ、マガキガイ、サザエ、バイガイ)が指定されています 。
参考)https://www.pref.tokushima.lg.jp/sp/ippannokata/sangyo/suisangyo/2013082600097/
これらの漁業権設定水域では、漁業権の対象種を地元漁業協同組合の組合員以外の者が採捕すると漁業権の侵害となる可能性があるため、一般の遊漁者は十分な注意が必要です 。
参考)https://www.pref.okinawa.jp/shigoto/suisangyo/1010995/1011045.html
漁業協同組合は水産業協同組合法により漁民を組合員として設立される法人で、一般的に「JF(Japan Fisheries)」の略称で呼ばれています 。組合員は正組合員と准組合員に分類され、正組合員は組合の地区内に住所を有し、90~120日の間で定款に定める日数を超えて漁業を営む漁民、漁業生産組合、中小規模の漁業法人となっています 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%81%E6%A5%AD%E5%8D%94%E5%90%8C%E7%B5%84%E5%90%88
正組合員は一人一票の平等な議決権と役員の選挙権を持ちますが、准組合員は正組合員以外の漁民、正組合員と同世帯の者、組合地区内の水産加工業者・遊漁船業者等で、議決権及び選挙権を有しません 。漁協の設立には正組合員になろうとする発起人20人以上が必要で、正組合員が20人未満になった場合は解散することが法律で定められています 。
組合員になるための資格条件として、住所条件(組合の地区内に住んでいること)と営業・従事条件(年間30~90日の間で定款で定められた日数以上の漁業関連活動)があります 。内水面地区漁協では漁業で生計を立てている組合員は少なく、採捕(主に釣り)者が主であり、資源の増殖や漁場管理を行う指導事業が主となっている組合が多いのが特徴です 。
参考)https://wearth.tokyo/fisheries-association/