
被担保債権とは、担保物権によって担保される債権のことを指します。例えば、AがBに100万円を貸した場合、AはBに対する貸金債権を有し、この返済を保証するためにBの所有する建物に抵当権を設定すると、この100万円の債権が被担保債権となります。
担保物権には以下の4種類があります。
このうち抵当権と質権は当事者間の契約によって成立する約定担保物権、留置権と先取特権は法律の規定により発生する法定担保物権に分類されます。宅建試験では特に抵当権の被担保債権の範囲が頻出テーマとなっています。
抵当権における被担保債権の範囲には、民法により明確な制限が設けられています。原則として、抵当権者は元本のほか、利息その他の定期金について、その満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使することができます。
この2年制限の理由は、利息や定期金が無制限に累積することで、後順位抵当権者や一般債権者の利益を害することを防ぐためです。例えば、1000万円の元本に対して年利5%で20年間利息が累積すると、利息だけで1000万円に達してしまう可能性があります。
被担保債権の範囲(原則)
この制限により、担保不動産の価値を超えて債権が膨張することを防ぎ、関係者間の利益バランスを保っています。
普通抵当権と根抵当権では、被担保債権の範囲に重要な違いがあります。
普通抵当権の場合
利息・遅延損害金等は最後の2年分についてのみ担保されます。これは前述の原則通りの取り扱いです。
根抵当権の場合
極度額の範囲内であれば最後の2年分に限らず、全ての利息・遅延損害金が担保されます。これは根抵当権が継続的取引を前提とした制度であり、債権額の変動を想定しているためです。
例えば、極度額1000万円の根抵当権を設定した場合。
この違いは宅建試験で頻繁に出題されるポイントです。根抵当権の被担保債権範囲に関する最高裁判例では、「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被担保債権には、信用金庫の保証債務も含まれると判示されています。
被担保債権の範囲制限には重要な例外があります7。後順位抵当権者その他の利害関係者がいない場合には、2年分の制限が適用されず、全額について抵当権を行使することができます。
利害関係者がいる場合
利害関係者がいない場合
利害関係者には以下が含まれます。
この例外規定は実務上重要で、競売手続きにおいて配当を受ける権利者がいるかどうかで被担保債権の範囲が変わります。
宅建試験では被担保債権の範囲に関する問題が毎年出題されています。特に以下の論点が頻出です。
頻出パターン1:2年制限の有無
「後順位抵当権者がいない場合でも、満期となった最後の2年分を超える利息については抵当権を行使できない」
→ 誤り。利害関係者がいない場合は制限なし7
頻出パターン2:普通抵当権vs根抵当権
「普通抵当権でも根抵当権でも、遅延損害金は最後の2年分のみ担保される」
→ 誤り。根抵当権は極度額内で全額担保
頻出パターン3:抵当権の効力範囲
抵当権の効力が及ぶ範囲も合わせて出題されます。
実践的な覚え方
これらのポイントを整理して覚えることで、宅建試験での得点確保が可能になります。過去問演習では、問題文中の「利害関係者の有無」や「普通抵当権・根抵当権の別」を必ず確認する習慣をつけることが重要です。