
保証人は主債務者が債務を履行しない場合に備えた「補充的な担保」として位置づけられており、民法上特別な権利が認められています。
催告の抗弁権とは、債権者が保証人に返済を請求してきた際に「まずは債務者本人に請求してください」と主張できる権利のことです。この権利により、保証人は債権者からの直接的な請求を一時的に回避することができます。
ただし、以下の場合は催告の抗弁権を行使できません。
この権利は保証人の立場を保護する重要な仕組みであり、いきなり全額の支払い責任を負わされることを防ぐ役割を果たしています。不動産取引において、保証人契約を締結する際は、この権利の存在を理解しておくことが重要です。
検索の抗弁権は、主債務者に返済能力や資産がある場合、まずそちらから債務を回収するよう債権者に求める権利です。
この権利により、保証人は以下のような主張ができます。
検索の抗弁権は、保証人が不当に重い負担を負うことを防ぐための重要な制度です。債権者は保証人がこの権利を行使した場合、主債務者の財産に対して強制執行を行った後でなければ、保証人に請求することができません。
不動産業務においては、賃貸借契約や売買契約で保証人を立てる場面がありますが、この権利の存在を知っておくことで、保証人の立場をより理解できるでしょう。
分別の利益とは、保証人が複数いる場合に、それぞれが債務額を人数で割った金額についてのみ責任を負う制度です。
例えば、1,000万円の借金に対して保証人が2人いる場合。
この制度により、保証人一人あたりの負担が軽減され、リスクが分散されます。ただし、他の保証人が支払い能力を失った場合でも、自分の負担分以上の責任を負う必要はありません。
不動産取引では、高額な取引が多いため、複数の保証人を立てるケースもあります。この場合、分別の利益により各保証人の負担が明確に分かれることを理解しておくことが重要です。
連帯保証人は、主債務者と「ほぼ同等の地位」に置かれる非常に重い責任を負います。民法第454条および第465条に基づき、連帯保証人には保証人に認められている3つの権利が一切ありません。
連帯保証人の特徴:
債権者は主債務者に一切請求することなく、連帯保証人に対して直接全額の返済を求めることができます。これは「連帯責任」という概念に基づいており、主債務者が支払い能力を有していても関係ありません。
不動産業界では、賃貸借契約や住宅ローンにおいて連帯保証人を求めるケースが多く、その理由はこの強力な法的効力にあります。貸し手側のリスクを大幅に軽減できるためです。
保証人・連帯保証人契約におけるリスク管理は、不動産業務において極めて重要な要素です。特に以下の観点から慎重な対応が必要です。
契約前の確認事項:
2020年4月施行の民法改正により、事業性保証契約については以下が義務化されました。
実務における注意点:
不動産業者は保証人契約の重要性と違いを顧客に十分説明する責任があります。特に連帯保証人の場合、その重い責任について書面での説明と理解確認が不可欠です。
トラブル回避策:
現代の不動産取引では、個人保証から保証会社への移行が進んでいますが、依然として個人保証が必要な場面も多く、適切な理解と対応が求められています。