
連帯保証人は主債務者と同等の責任を負う特殊な保証人です。一般的な保証人との最も大きな違いは、催告の抗弁権と検索の抗弁権が認められていない点にあります。
催告の抗弁権とは「自分よりも先に主債務者へ請求してほしい」と主張する権利で、一般保証人には認められていますが、連帯保証人にはありません。これにより、債権者は主債務者への請求を行わずに、直接連帯保証人に対して債務履行を求めることができます。
検索の抗弁権は「先に本人の財産を差し押さえてほしい」と主張する権利ですが、連帯保証人にはこの権利も認められていません。つまり、主債務者に十分な資産があったとしても、債権者は連帯保証人の財産を直接差し押さえることが可能です。
さらに、分別の利益も連帯保証人には適用されません。複数の保証人がいる場合、一般保証人であれば債務は人数で分割されますが、連帯保証人の場合は各人が全額について責任を負います。
連帯保証契約の成立には、書面による契約締結が必要です。契約書のタイトルが「保証」や「身元保証」と記載されていても、連帯特約が付されていれば連帯保証契約となります。
2020年の民法改正により、個人根保証契約では極度額の設定が義務化されました。極度額を定めない根保証契約は無効となるため、契約書作成時には必ず極度額を明記する必要があります。
連帯保証契約の内容は、契約当事者間で法律に違反しない限り自由に決定できます。例えば、一定の条件を満たした場合にのみ保証債務が発生する特約や、元本のみを保証する特約、主債務者が一定の条件に違反した場合の保証債務減額・消滅特約なども可能です。
不動産賃貸借契約における連帯保証人の条項では、従来「乙が甲に対して本契約に基づき負担するすべての債務について、○○は連帯して支払う」といった包括的な定めが一般的でした。しかし、改正民法下では極度額の設定により、連帯保証人の責任範囲が明確に限定されています。
連帯保証債務は主債務に従属する性質(付従性)を持つため、主債務が消滅すれば保証債務も消滅します。主債務の消滅時効が完成すれば、連帯保証債務も同時に消滅します。
ただし、連帯保証人が債務の一部を履行した場合、その履行は主債務の承認となり、主債務の消滅時効が中断されます。これは連帯保証人にとって不利な効果をもたらす可能性があります。
連帯保証人について生じた相殺、更改、混同は主債務者に対しても効力を及ぼします。これは連帯債務の規定が準用されるためで、一般保証人とは異なる特徴です。
主債務者が破産や個人再生を行った場合でも、連帯保証人の責任は原則として免除されません。主債務者の債務整理手続きと連帯保証人の責任は別個に扱われるため、連帯保証人は残債務の全額について責任を負い続けます。
2020年4月施行の改正民法により、連帯保証制度は大幅に変更されました。最も重要な変更点は、個人根保証契約における極度額設定の義務化です。
根保証契約とは、一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約で、賃貸借契約や企業間取引でよく利用されます。従来は極度額の設定義務がなかったため、保証人の負担が無制限に拡大するリスクがありました。
改正民法第465条の2では、個人根保証契約の保証人は極度額を限度として履行責任を負うと規定されています。極度額を定めない個人根保証契約は無効となるため、契約書作成時には必ず極度額を明記する必要があります。
事業性融資の個人保証については、公証人による保証意思確認手続きが必要となりました。個人が事業目的の融資の保証人になる場合、契約締結前1か月以内に公正証書で保証意思を表示しなければ、保証契約は無効となります。
情報提供義務も新設されました。主債務者は事業のための負債について個人保証人を依頼する際、財産・収支状況、債務の有無・内容、履行状況などの情報を提供する義務があります。債権者も保証契約締結後、保証人からの請求に応じて主債務の残額や履行状況を通知する義務があります。
不動産業界では、賃貸借契約における連帯保証人の設定が一般的ですが、特有のリスクが存在します。賃借人が長期間賃料を滞納した場合や、賃借物件で自殺などの事故が発生した場合、連帯保証人は多額の損害賠償責任を負う可能性があります。
賃貸借契約の連帯保証人は、賃料債務だけでなく、原状回復費用、損害賠償、違約金なども保証範囲に含まれます。特に、賃借人による重大な契約違反や事故が発生した場合、連帯保証人の負担は極度額の上限まで及ぶ可能性があります。
借主が死亡し、同居の配偶者が住み続ける場合、その後の配偶者の滞納については連帯保証人に責任を問えなくなるケースがあります。このような場合、新たに連帯保証人を立てる必要が生じる可能性があります。
不動産売買における手付金や中間金の保証についても、連帯保証人の責任範囲を明確にする必要があります。特に、売買契約の解除や債務不履行による損害賠償については、予想以上に高額になる可能性があるため、極度額の設定には慎重な検討が必要です。
法人が連帯保証人となる場合、個人保証人に適用される保護規定(極度額設定義務、公証人による意思確認、情報提供義務など)は適用されません。しかし、法人保証人であっても、保証範囲を明確にし、適切な契約書を作成することが重要です。
不動産業者は、連帯保証契約の締結に際して、保証人に対する十分な説明義務を果たす必要があります。特に、連帯保証人の責任の重さや、一般保証人との違いについて、分かりやすく説明することが求められます。
金融機関の監督指針では、経営者以外の第三者の個人連帯保証について、自発的な申し出であることの客観性確保が重要とされています。不動産業界においても、連帯保証人の自発的意思に基づく契約締結であることを確認し、適切な書面を整備することが推奨されます。