放射線障害防止法改正2023年の要点と事業者の対応

放射線障害防止法改正2023年の概要

放射線障害防止法改正の背景と経緯

2016年1月に国際原子力機関（IAEA）の総合規制評価サービス（IRRS）が発表した勧告により、日本の放射線測定における信頼性確保の制度整備が課題として指摘されました 。これを受けて、2020年9月11日に放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則（RI法施行規則）の一部改正が公布され、「記帳」に関する規定は即日施行されました 。しかし、「測定」に係る放射線測定の信頼性確保については準備期間を設け、2023年10月1日に施行されることとなりました 。
参考）https://technohill.co.jp/2023/10/03/ri_info2023/

改正の主要な動機は、これまで事業者や測定サービス会社の自主的な取り組みに委ねられていた放射線測定の信頼性確保について、法的な責任を明確化することでした 。特に国際的な安全基準との整合性を図り、放射線防護の観点から測定精度の向上と品質保証を制度的に担保する必要性が高まっていました 。
参考）https://www.irm.or.jp/kousei_12.html

放射線測定器の点検・校正義務化の詳細

改正RI法施行規則第20条により、放射線測定器の点検及び校正を1年ごとに適切に組み合わせて実施することが義務化されました 。この規定は、放射線障害のおそれのある場所の測定、内部被ばくによる線量測定、放射性同位元素による汚染状況の測定に用いる測定器すべてに適用されます 。
点検については、日常点検レベルと定期点検レベルの2段階で実施することが求められます 。日常点検では、外観点検や自動チェック機能による動作確認、線源測定による指示値確認などを行います。定期点検では、内部開放点検や検出部・計測回路等の専門的な点検を実施します 。校正については、計量法に基づく校正事業者登録制度（JCSS）による校正やJIS規格に基づく校正などが認められており、外部機関への委託も可能ですが、事業者の責任は変わりません 。

放射線取扱主任者制度への影響

改正により、放射線取扱主任者の定期講習制度が強化され、選任後の継続的な能力維持が重視されるようになりました 。放射線取扱主任者は選任された日から1年以内に定期講習を受講し、その後は3年ごと（一部事業者は5年ごと）の受講が義務づけられています 。これにより、放射線防護に関する最新の知識や技術の習得が制度的に保証されます。
参考）https://www.nustec.or.jp/teiki/teiki01.html

また、改正により放射線取扱主任者の責任と罰則の明確化も検討されており、監督業務の重要性がより強調されています 。特に測定の信頼性確保に関して、主任者の技術的監督責任が明確化され、適切な測定器の管理と校正実施の確認も重要な職務となりました 。🔬
参考）https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/004/004/attach/1267240.htm

放射線障害防止法におけるクリアランス制度の運用

改正により、放射性物質の管理においてクリアランス制度の運用が強化されました 。クリアランス制度とは、原子力事業者等が施設で使用した資材について、放射能濃度が基準値以下であることを原子力規制委員会が確認する制度です 。2023年の改正では、この確認プロセスにおける測定の信頼性がより重視されるようになりました。
参考）https://www.nra.go.jp/activity/regulation/nuclearfuel/haiki4.html

クリアランス対象物の放射能濃度測定には、校正された測定器の使用が必須となり、測定・評価方法についても事前に原子力規制委員会の認可を受ける必要があります 。これにより、放射性廃棄物の適切な処理と一般廃棄物への分別がより厳格に管理されることとなり、環境保護と公衆安全の向上が図られています 。💡

放射線障害防止法改正が宅地建物取引業界に与える意外な影響

一般的にはあまり知られていませんが、放射線障害防止法の改正は宅地建物取引業界にも間接的な影響を与えています。特に、原子力施設周辺の不動産や工業用地の取引において、放射線測定の信頼性向上は重要な意味を持ちます 。
不動産の放射線汚染調査や環境アセスメントにおいて、改正により義務化された校正済み測定器による正確な測定データが、取引の透明性と信頼性向上に寄与しています。また、放射性同位元素を使用していた研究施設や医療施設の跡地利用において、クリアランス制度の厳格化により、より安全で信頼性の高い土地利用が可能となりました 。宅地建物取引士として、これらの法改正の背景と影響を理解することは、顧客への適切な情報提供と安全な取引実現のために重要です 。🏢