自己決定権とインフォームドコンセントの関係と医療現場での実践

自己決定権とインフォームドコンセントの関係と医療現場での実践

医療における自己決定権とインフォームドコンセントは、患者の尊厳と権利を保障する重要な概念です。本記事では、これらの定義や法的根拠、実践での要件、未成年者への対応など、医療現場で欠かせない知識について詳しく解説します。あなたは患者としての権利を正しく理解していますか?

自己決定権とインフォームドコンセント

医療における自己決定権とインフォームドコンセント
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自己決定権の基本概念

自分の身体や生命に関わる医療行為について、他人に強制されることなく自由に決定を下す権利

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インフォームドコンセント

医師から十分な説明を受け、理解・納得したうえで治療方針を決めるプロセス

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法的根拠

日本国憲法第13条の幸福追求権に基づく人権として保障される権利

自己決定権の意義と憲法的根拠

自己決定権は、日本国憲法第13条の幸福追求権に基づく基本的人権として位置づけられています。医療においては、「同意能力のある成人は、財産や身体のことについて、他人に危害を及ぼさない限り、たとえそれが本人の利益にならなくても本人が決める」という権利として理解され、患者が治療方針について最終的な決定権を持つことを意味します。
参考)https://www.jaog.or.jp/note/2-%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%88/

 

この自己決定権の根拠は、自分のことを最もよく知るのは自分であり、決定の結果を引き受ける人は自分だからです。医療行為は手術、検査、投薬など患者の身体に侵襲を加える行為であり、実際に痛みや苦しみ、不便を感じるのは患者本人であるため、本人による決定が不可欠となります。
また、自己決定権は人格的生存に必要不可欠な私的事項に関わるものとして、憲法13条により人権の一つとして認める見解が有力になっています。
参考)http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/02/papers/v02part04.pdf

 

インフォームドコンセントの定義と基本原則

インフォームドコンセントは、「治療について、患者本人が必要な情報を説明され、理解した上で、選択・同意・拒否をすること」と定義されます。これは単なる同意書への署名ではなく、患者が納得して治療を決めてもらうためのプロセスとして理解されています。
インフォームドコンセントの成立には以下の要素が必要です。

このプロセスは医療者と患者が対等な立場で話し合い、患者の権利と安全性を確保する意味で欠かすことのできない手続きです。また、日本では1997年の医療法改正により、インフォームドコンセントの努力義務規定が整備されました。
参考)https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/career_skillup/20220207-2146031/

 

同意能力の要件と判断基準

同意能力とは、「自己の病状、当該医療行為の意義・内容、及びそれに伴う危険性の程度につき認識し得る能力」のことです。一般的に、医療行為の侵襲の意味が理解でき、侵襲によってどのような結果が生ずるかを判断する能力があれば十分とされています。
参考)https://www.wakoucai.or.jp/hanna-hp/about/notice/ic/

 

インフォームドコンセントの成立条件として、以下の4つが必須となります。

  1. 患者に意思決定能力があること
  2. 患者へ十分な説明がなされること
  3. 患者がその説明を理解すること
  4. 患者が自発的に同意すること

    参考)https://hospital.city.chiba.jp/kaihin/wp-content/uploads/2020/05/3iryouanzen_ic.pdf

     

同意能力がある場合、医療行為は患者本人の同意のみで実施可能ですが、現実的には家族の協力も重要視され、親権者や家族と相談しながら進めることが一般的です。医療行為の同意権は患者本人に一身専属的に帰属するものであり、同意能力を有する患者に代わって家族が代理として同意することはできません。
参考)https://fukuzaki-law.jp/iryouhoumu/36/

 

未成年者におけるインフォームドコンセントの特例

未成年者の場合、同意能力の有無により対応が異なります。同意能力のある未成年者については、理解力・判断力を十分備えた者に対してはその同意能力を前提としたインフォームドコンセントが行われる必要があります。
具体的な基準として、中学修了または16歳以上の者で判断能力が認められれば、本人と親権者の双方からインフォームド・コンセントを得ることが求められます。一方、判断能力が認められない場合や16歳未満の場合には、親権者からインフォームド・コンセントを得て、本人の理解力に応じた説明をしたうえでインフォームド・アセント(理解と了解)を得ることが必要です。
参考)https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/b03.html

 

研究領域では、侵襲性がない場合に限り、倫理審査委員会の承認を得て、中学修了または16歳以上で判断能力がある場合には本人のインフォームド・コンセントのみで実施できる場合もあります。ただし、親権者には拒否の機会を保証するため、情報公開が必要とされています。

セカンドオピニオンと自己決定権の行使

セカンドオピニオンは、「第二の専門医の意見」を意味し、診断や治療方針について現在の主治医以外の他の医師の意見を聞くことです。これは患者の知る権利であり、治療方法など自らの意思で選択する権利である「自己決定権」を行ううえでの一つの重要な方法として位置づけられています。
参考)https://nkmc.hosp.go.jp/outpatient/second/

 

患者は民間または公的を問わず医師や病院あるいは保健サービス施設を自由に選択し変更する権利を有し、医療のどの段階においても別の医師の意見を求める権利を持ちます。セカンドオピニオンを求めることにより、より安心できる質の高い医療を保障するシステムが確立されています。
参考)https://hakuai.doaikai.jp/outline/rights-obligation/

 

医療現場では、患者が自らの治療に対して最良の方法を選択するために、治療内容や治療方法について他の医師に相談できる体制が整備されており、そのために必要な診療情報の請求も可能です。
参考)https://www.kyokuto.or.jp/visitors/img/keiji/v_03.pdf