
国民主権とは、国の政治のあり方を最終的に決定する権力が国民にあるという原則です 。これは大日本帝国憲法の天皇主権と根本的に異なる点で、民主主義の根幹をなす概念となっています 。
参考)https://www.jica.go.jp/activities/issues/governance/portal/vietnam/__icsFiles/afieldfile/2025/03/04/vnu_09.pdf
日本国憲法の前文には「主権が国民に存することを宣言し」と明記されており、これによって主権者は国民であることが確立されました 。具体的には、国政は国民の厳粛な信託によるもので、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者が行使し、その福利は国民が享受するものとされています 。
主権には三つの意味があります:①統治権(独立して国民や領土を統治する権利)、②最高独立性(他国から支配や干渉を受けず対等である権利)、③最高決定権(国の意思や政治のあり方を最終的に決定する権利)です 。国民主権では特に③の意味が重要で、選挙権の行使を通じて国民が政治に参加する仕組みが構築されています 。
18歳以上のすべての国民が選挙権を持ち、投票を通じて政治に対する意見を示すことができる制度は、国民主権の具体的な現れといえます 。
基本的人権の尊重とは、人間が生まれながらにして持つ権利を尊重することで、日本国憲法の三大原則の一つです 。憲法第11条では、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として国民に与えられると宣言しています 。
参考)https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005310375_00000
基本的人権は、その性質によっていくつかの種類に分けられます 。第一に自由権があり、これには思想・良心の自由(第19条)、信教の自由(第20条)、集会・結社・表現の自由(第21条)、居住・移転・職業選択の自由(第22条)などが含まれます 。
第二に社会権があり、生存権(第25条)、教育を受ける権利(第26条)、勤労の権利(第27条)、勤労者の団結権・団体交渉権・団体行動権(第28条)などが規定されています 。特に第25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められており、これが生存権の根拠となっています 。
第三に参政権(第15条)や受益権(請願権・賠償請求権など)があり、これらを通じて国民が政治に参加したり、国に対して権利を主張することができます 。これらの権利は公共の福祉に反しない限り、最大限に尊重されることが憲法第13条で定められています 。
参考)https://www.city.nikko.lg.jp/material/files/group/40/r3mirai-04.pdf
日本国憲法の平和主義は、第9条によって具体的に規定されており、三つの要素から構成されています 。第一項では「戦争の放棄」、第二項前段では「戦力の不保持」、第二項後段では「交戦権の否認」が定められています 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95%E7%AC%AC9%E6%9D%A1
憲法第9条第1項では「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定されています 。これは国際紛争の解決手段として戦争を永久に放棄することを意味します 。
参考)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/1800531_point.pdf/$File/1800531_point.pdf
第2項では「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定められており、軍隊の不保持と交戦権の否認が明確に示されています 。
この平和主義の背景には、アジア・太平洋戦争での悲惨な体験があります 。多くの尊い命が失われた戦争を二度と繰り返さないという強い決意のもとに、この原則が掲げられました 。憲法学者の中には、第9条を憲法前文と合わせて理解すべきとする見解もあり、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」して安全保障を考える立場もあります 。
参考)https://www.ritsumei.ac.jp/ir/study/issue/story18.html
日本国憲法の制定過程は、1945年8月15日の終戦から1947年5月3日の施行まで、約2年間にわたる複雑な経緯をたどりました 。この過程は大きく二つの段階に分けることができます 。
参考)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/shukenshi090.pdf/$File/shukenshi090.pdf
第一段階は1945年10月から1946年2月13日までで、日本政府が独自に憲法改正案を作成した期間です 。10月11日にマッカーサーGHQ最高司令官が幣原総理大臣に憲法の自由主義化の必要性を示唆し、松本烝治大臣を委員長とする「憲法問題調査委員会」が設置されました 。
参考)https://www3.nhk.or.jp/news/special/minnanokenpou/about/001.html
この間、民間でも「憲法研究会」(高野岩三郎、鈴木安蔵らで構成)が1945年12月26日に「憲法草案要綱」を発表し、国民主権や社会権の規定などを盛り込んだ進歩的な内容でGHQの関心を集めました 。しかし、政府の「松本案」は保守的な内容で、天皇の統治権を維持する「松本四原則」に基づいており、GHQは受け入れがたいと判断しました 。
第二段階は1946年2月13日以降で、GHQが独自に作成した草案(マッカーサー草案)を日本政府に提示し、これに基づく憲法制定が進められました 。マッカーサーは「三原則」(天皇の地位、戦争放棄、封建制度廃止)を示し、GHQ民政局が草案を作成しました 。その後、日本政府との詳細な折衝を経て、1946年11月3日に公布、1947年5月3日に施行されました 。
日本国憲法は三権分立の原則を採用しており、国の権力を立法権・行政権・司法権の三つに分けて、それぞれ国会・内閣・裁判所が担当しています 。これは権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障するための重要な仕組みです 。
立法権を担う国会は、憲法第41条により「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」とされています 。これは主権を持つ国民の代表者の集まりであるため、国家権力の最高機関であり、日本で唯一法律案の審議・作成ができる機関です 。
行政権を担う内閣は、憲法第65条により「行政権は、内閣に属する」と定められており、行政の最高機関として国の仕事を進める役割を担っています 。内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織され、国会が決めた法律や予算に基づいて実際の行政を行います 。
参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/kids/html/shikumi/index.html
司法権を担う裁判所は、憲法第76条第1項により「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と定められています 。法律に基づいて争いごとを解決し、人々の紛争や犯罪を憲法や法律に基づいて裁く権限を持ちます 。
日本の三権分立の特徴は、国会が内閣総理大臣を指名し、国会の信任のもとに内閣が成り立つ議院内閣制を採用していることです 。これにより、国会と内閣の結びつきが深いという特色があります 。
日本国憲法の改正は、憲法第96条に基づく厳格な手続きが必要とされています 。改正手続きは「国会で衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成を経た後、国民投票によって過半数の賛成を必要とする」と定められており、二段階の承認が求められています 。
参考)https://www.city.nanto.toyama.jp/soshiki/senkyo/1/3/1351.html
国民投票制度について、平成22年5月18日から「日本国憲法の改正手続に関する法律(通称「国民投票法」)」が施行されており、憲法改正時の国民投票に関する詳細な手続きが規定されています 。国民投票で投票するためには、年齢満18歳以上の日本国民であり、かつ投票人名簿または在外投票人名簿に登録されていることが必要です 。
改正手続きの流れとして、まず法律で定める一定数(衆議院100人以上、参議院50人以上)の国会議員の賛成により憲法改正原案が発議されます 。その後、衆議院憲法審査会及び参議院憲法審査会で審議され、両院の本会議でそれぞれ3分の2以上の賛成で可決された場合、国会が憲法改正の発議を行います 。
憲法改正箇所が複数ある場合は、内容において関連する事項ごとに提案される仕組みとなっており、国民は個別の改正案について判断することができます 。この厳格な改正手続きは、憲法の安定性を保ちながら、真に国民の意思に基づいた改正を可能にするための制度設計といえます。